IoTや3Dセンサ技術を駆使した小型農業用ロボットにより、先進国の農業での人手不足を解決するOctinion社について、主力製品であるイチゴ収穫ロボットとビジネスモデル、そして今後の計画について解説します。
Octinion社の基本情報
Octinionは、IoTや3Dセンサ技術を用いて高性能・高機能な農業用ロボットの開発を行うベルギーのスタートアップです。2009年にTom Coen氏によって設立されました。従業員数は約50名です。
主力はイチゴ収穫ロボット「RUBION」で、2014年から開発が進められ、2019年に商業用製品がほぼ完成しました。現在は支社のある英国とオランダの他、米国のイチゴ生産量約8割を占めるカリフォルニア州の各農場で実証実験を重ねています。2019年2月1日に販売を開始しています。
ビニールハウスの中でRUBIONが活動しています
1本のアームでいちごを収穫しています。1つあたり5〜10秒で収穫しており高速です。夜間の収穫もできるそうです。
施設としては吊り下げ式高設栽培でやっているようです。
RUBIONに加えて現在開発している製品は
- 温室内の自律走行ロボット「DRIBBLE」、
- 収穫期を測定するイチゴのモニタリングロボット「CURION」、
- 補光ロボット「LUMION」、
- 多用途なインドア用走行ロボット「XENION」、
- アウトドア用走行ロボット「TITANION」、
- 収穫物搬送ロボット「FLUXION」
の6つがあります。
先進国の労働力不足を農業ロボットで解決
Octinion社は、米国や日本をはじめ先進国で問題となっている労働力不足と最低賃金の引き上げ伴うコスト増の問題を、熟練した農家と同程度の精度で選別から収穫までを行う収穫ロボットの開発によって解決します。
ビジネスモデル:販売からアフターサービスまで
Octinion社の支社のある英国、オランダ、米国では販売からアフターサービスを一貫して行います。支社のないそれ以外の国では、現地パートナーとの連携を計画しています。基本的に製品の売り切りで、その他にリースなどのサービスも検討しています。
イチゴ収穫ロボット「RUBION」のテクノロジー
イチゴ収穫ロボット「RUBION」は、自律走行に必要なIoT/ビーコン技術、イチゴを検知する3D画像センサ技術、3Dプリント/ロボットアーム技術を根幹技術としています。
また人の手の動きを再現した果実を包みながらの摘み取りを実現するため、ロボットアームの先端には3Dプリント製のソフトタッチグリッパーが付けられています。
今後の計画
支社のある英国、オランダ、米国では販売からアフターサービスまでを一貫して提供し、日本を含むその他の地域では現地パートナー次第で事業展開を検討する予定です。
当社製品の販売の他にも、ロボット製品を他社にOEM提供する予定です。また当ロボットに使われている3DやIoT技術などを転用することでトマトやキュウリなど他の温室飼育野菜の収穫ロボットへの展開の他、他産業のソリューションサービスの提供も計画しています。
まとめ:小型で使いやすく、市場に出る初めてのイチゴ収穫ロボット
イチゴ収穫ロボットを開発するスタートアップ企業は欧米で増加しているものの、Octinion社のように発売できる段階に入っている製品はなく、大きな先行メリットを期待できます。
また、同業他社のイチゴ収穫ロボットは大型サイズが多いため、温室の改造を伴う製品が大半ですが、当社のRUBIONは小型で、温室の改造が不要な点も大きな強みだと言えます。
強みのある製品とともに、当社の今後の事業展開に期待されています。
参考サイト/参考文献
- Octinion http://octinion.com/
- プレスリリース:Octinionが世界初のイチゴ狩りロボットを発表| オクチニオン http://octinion.com/news/press-release-octinion-presents-world%E2%80%99s-first-strawberry-picking-robot
- 野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社「2030年のフード&アグリテック」