病原や汚染を通さないハイドロゲル膜を使ったフィルム農法「アイメック」を開発した日本の農業ベンチャー、メビオール社について紹介

事業概要

メビオール社は、医療用に開発してきた膜およびハイドロゲル技術を農業に展開し、安全で高栄養価の農作物を生産する継続的農業技術(アイメック)を世界に先駆けて開発した企業です。1995年に、神奈川県を拠点に設立されました。従業員数は2018年時点で9名とされています。

アイメックは、メビオール社の社長である元早稲田大学客員教授の森有一氏が開発した技術で、もともとは人工透析、人工血管、カテーテルなどの医療用製品に用いられる膜、およびハイドロゲル技術を農業分野に展開したものです。

地球温暖化によって世界各地で水不足や土壌汚染・劣化の問題が起こっており、それによる食料供給や安全性、労働者不足の課題に対処するため、医療分野で培ってきた先端高分子技術を農業分野に生かしています。

Youtube動画:https://www.youtube.com/watch?v=S_uMOVCkvB0

ビジネスモデル

メビオール社のビジネスモデルは、「アイメック」システムの販売、フィルムの販売、および海外へのライセンス供与からなっており、2018年時点では国内で約150カ所の農場に導入され、年間約3000トンのトマトが生産されました。

収益の主体は世界70ヵ国以上で登録されたアイメック技術の特許からのロイヤリティー収入となっています。

野菜を栽培したフィルムは年に1度交換する必要があり、導入地域が広がればフィルム交換の需要が拡大につながると期待されています。

テクノロジー

アイメック(フィルム農法)は、世界が直面する食の安全性、水不足、土壌汚染といった問題を解決するために開発された、ハイドロゲル膜を用いた世界初の技術です。ハイドロゲルでできた薄いフィルムには、水と養分だけを通すナノサイズの穴が空いており、フィルムの上で植物が育つ仕組みです。

フィルムに根がはって成長した様子(公式サイトより)

農薬を使用しなくても、バクテリアや細菌、ウイルスによる汚染を防ぐことができ、安全な作物を作ることができます

アイメックフィルムの機能イメージ(公式サイトより)

また、植物はハイドロゲル中の吸いにくい水を吸おうとするため、沢山の糖分とアミノ酸などを作り出し高糖度で栄養価の高い作物が育成できます

アイメックシステムは給液装置と、フィルム、不織布、止水シート、2本の灌水チューブからなる栽培ベッドでできており、地面と完全に隔離されているため、砂漠地帯やコンクリートの上でもどこでも農業が可能です。また水や肥料が外部に漏れないため、従来の農法に比べて水と肥料の使用量が大幅に少なく、環境にも優しい農法となっています。

アイメックによるフィルム製法では、トマトの他、きゅうり、メロン、パプリカ、水菜、ベビーリーフ、ハーブなども栽培可能です。

今後の計画

現在メビオール社は新興国の開拓に取り組んでおり、2014年からアラブ首長国連邦で5000平方メートル規模のグリーンハウスを展開、2015年には上海近郊へ導入しました。2017年にはロシア企業と提携し、現地のトマト工場でのアイメックの採用を勧めています。またブラジルでは日本企業の現地工場に併設する野菜工場でアイメックの採用を決定しており2019年よりフィルム輸出を行っています。

アイメックの商品名は、国連の環境技術データベースに登録されるなど、グローバルな認知度が少しずつ高まってきています。

森氏は、アイメックの大量の水と土地が不要で砂漠でも植物を栽培できる特徴を生かし、水質に不安のある地域や世界の干ばつ地域、土地が痩せたアフリカなど海外にも展開を勧め、農業を定着させると共に、栄養価の高く安全な食品を提供したいと考えています。

コメント

メビオール社の技術は今後海外にさらに進出し、水資源の乏しい地域や農業が未発達で食料が不足している地域での食料供給を可能とするだけでなく、雇用を増やすなど経済的な貢献が期待されます。

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