巨大イモムシの食害からヤシの木を守る。Agrintのワイヤレス害虫センサーIoTree

大切な果樹に害虫が侵入したとき、早い段階で知らせてくれるセンサーが登場しました。Agrint によって開発された IoTree です。現段階ではまだ用途が限られていますが、熱帯地域でヤシの木を食害するヤシオオオサゾウムシの幼虫の発見に役立っています。本記事ではその特長と使い方をご紹介します。

Agrint 基本情報

住所:11810 Grand Park Ave., Rockville, Maryland, 20852, US
CEO:Yehonatan Ben-Hamozeg
設立年:2016年
従業員数:11〜50人

ヤシオオオサゾウムシの被害

ヤシオオオサゾウムシ(https://vimeo.com/225064686)

東南アジアやオセアニアのヤシの木プランテーションでは、ヤシオオオサゾウムシというゾウムシの仲間が深刻な食害をもたらしています。ヤシオオオサゾウムシの幼虫は全長5cmくらいの大型のイモムシで、ヤシの木の成長点を食い荒らし、木を枯死させてしまいます。

その被害は世界中に広がっています

ヤシの木の材に潜り込むため外からは見つけにくく、病徴が出た時にはもう手遅れに。FAOによると、ヤシオオオサゾウムシの食害による損失は、世界の年間ヤシ生産量(食用、燃料用などを合わせた量)の約30%に相当するそうです。

IoTreeで早期発見・ピンポイント対策

Agrint はヤシオオオサゾウムシ被害への対策として、ヤシの樹皮に取り付けるセンサーIoTreeを発表しました。

IoTree の長所として、以下の点が挙げられます。

  • 早期発見:木材の中にいる幼虫のわずかな動きもセンサーが感知できるため、成長点が食い荒らされる前に早期発見できます。
  • ピンポイント対策:ヤシオオオサゾウムシの食害は外から分かりにくいので、従来はプランテーション全体に殺虫剤を散布していました。しかしIoTree を1本1本の木に取り付ければ、食害が発生した木だけピンポイントに対応できるので、防除効率が上がり農薬使用量も減らせます。

IoTree の使い方

センサーはヤシの木に刺すだけ

IoTree は拳サイズのセンサーを木の幹に突き刺して使います。1本の木につき1台取り付けたら、専用のアプリケーションと連動させます(そのため、別途通信設備が必要です)。樹木内部の幼虫を検知するとセンサーからアプリケーションに通知が届いて教えてくれます。

他の樹木での利用

IoTree はヤシオオオサゾウムシ防除に特化した製品なので、残念ながら現在はヤシ以外の樹木に対応していません。しかし日本にもヤシの木は輸入され、温暖な地域で街路樹に利用されています。そのためヤシの木と共にヤシオオオサゾウムシも日本に侵入しており、沖縄、九州、中国、紀伊半島などで確認されています。よって日本の事業者も、今後ヤシオオオサゾウムシの対策に関わる可能性はあるのではないでしょうか。

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