企業の農業参入=大規模投資だけではない
「企業の農業参入」と聞くと、農地の取得や法人設立、設備投資に数千万円〜数億円の初期費用がかかるイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
実際、農業への直接参入には大きな資金だけでなく、農業のノウハウや人材確保、地元との関係構築など多くのハードルがあります。農業参入で失敗する企業の共通点でも紹介しているように、準備不足のまま参入して撤退するケースは少なくありません。
しかし、企業が農業に関わる方法は直接参入だけではありません。企業版ふるさと納税を活用すれば、10万円から農業支援に参加でき、しかも寄付額の最大約9割が税額控除される仕組みがあります。
企業版ふるさと納税なら10万円から農業支援ができる
企業版ふるさと納税の仕組み
企業版ふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)は、内閣府が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄付を行った場合に、法人関係税から税額控除を受けられる制度です。
通常のふるさと納税と異なり、返礼品はありません。そのかわり、寄付額の最大約9割が法人関係税から軽減されます。具体的には、損金算入による軽減効果(約3割)に加え、税額控除(最大6割)が適用されます。
例えば1,000万円を寄付した場合、最大約900万円の税負担が軽減され、実質的な企業負担は約100万円です。10万円の寄付であれば、実質負担は約1万円ということになります。
農業分野でどう使われているか
企業版ふるさと納税の対象事業は、自治体が国に申請し認定を受けた地方創生プロジェクトです。農業分野では、以下のような事業が全国各地で展開されています。
- 耕作放棄地の解消と農地の再生
- 有機農業の拡大支援
- スマート農業技術の導入
- 新規就農者の育成・定着支援
- 地域ブランド農産物の開発
- 薬用植物の栽培による地域産業の創出
現在、農林水産業に関連する企業版ふるさと納税の認定事業は全国で289件が登録されています。都道府県や分野で絞り込んで検索できる企業版ふるさと納税 農業関連事業一覧で、自社の関心に合った事業を探すことが可能です。
企業版ふるさと納税による農業支援の実例
実際に企業版ふるさと納税を活用して農業支援が行われている事例を紹介します。いずれも内閣府の地方創生推進事務局が公表している公開事例です。
北海道夕張市:薬用植物の栽培で農業再生
株式会社ツムラが北海道夕張市の「攻めの農林業!〜夕張百年の計〜」プロジェクトに3年間で総額3億円を寄付しました。夕張メロンの生産基盤安定化に加え、薬用植物(キハダ等)の植栽を進め、新たな地域資源としての農業を創出しています。ツムラは子会社「夕張ツムラ」を設立し、道内産の薬用作物の加工・選別も行っています。
大分県杵築市:世界農業遺産の里で薬用植物栽培
株式会社龍角散が大分県杵築市の「『世界農業遺産の里』が育む医薬生産基盤確立プロジェクト」に寄付を行い、廃校の圃場を活用した薬用植物(生薬)の国内栽培化を推進しています。収穫・出荷に必要な設備整備や栽培指導にも資金が使われています。
青森県弘前市:新規就農者の育成
弘前市では、新規就農者の育成・定着を加速するプロジェクトが進められています。研修プログラムの整備や農地取得の支援を通じて、次世代の農業の担い手を育てる取り組みです。
青森県六ヶ所村:スマート農業の導入
六ヶ所村では、GPS自動操舵装置を活用した農作業の効率化や、スマート農業技術の導入による省力化を進めるプロジェクトが認定されています。
この他にも、全国289件の農業関連事業から、自社の事業領域や関心に合った支援先を見つけることができます。
農業への関わり方を比較する
企業が農業に関わる方法は、企業版ふるさと納税以外にも複数あります。それぞれの特徴を比較します。
- 直接参入(農地取得・法人設立):初期費用は数千万〜数億円。農業ノウハウや人材が必要で、リスクが大きい
- 企業版ふるさと納税:10万円から可能。最大約9割が税額控除。CSR・SDGs報告にも活用でき、リスクが小さい
- 農業ベンチャーへの出資・提携:数百万円〜。技術連携や新規事業の種を得られる
- 契約栽培・エリアオーナー:企業が農場の一区画を利用し、自社ブランド農産物の生産や社員の農業体験に活用
農業参入企業43社の一覧では、さまざまな形で農業に参入した企業の事例を紹介しています。
企業版ふるさと納税は、これらの中でも最もハードルが低く、かつ税制メリットが大きい方法です。まず企業版ふるさと納税で自治体の農業プロジェクトを支援し、その後に直接参入や提携へステップアップしていくという段階的なアプローチも有効です。
自社に合った農業支援を見つけるには
企業版ふるさと納税の農業関連事業は、こちらのポータルサイトで都道府県や分野から検索できます。自社の事業拠点に近い自治体や、CSR方針に合ったテーマの事業を探してみてください。