農業の受発注管理システム8選比較|産直EC・BtoB・業務効率化ツール【2026年版】

農業の受発注管理が抱える課題

農産物の販売において、受発注管理は経営の根幹に関わる業務です。しかし多くの農家や農業法人では、電話・FAX・LINE・メールなど複数のチャネルで注文を受け、手書きの伝票やExcelで管理しているのが現状です。注文の見落とし、数量の入力ミス、請求漏れといったトラブルが日常的に発生しやすい環境にあります。

また、飲食店やスーパーなどBtoB取引先が増えるにつれ、納品書・請求書の発行や入金管理の工数が膨らみます。2023年10月に開始されたインボイス制度により、適格請求書の発行・保存も新たな負担となっています。

こうした課題を解決する手段として、産直ECプラットフォーム、BtoB受発注システム、販売管理ツールなどさまざまなサービスが登場しています。本記事では8つのサービスを比較し、販売先や経営スタイルに合った選び方を解説します。農産物の販路拡大をお考えの方は、農業の販路開拓の記事もあわせてご参照ください。

農業の受発注管理サービス比較表

サービス名 タイプ 料金体系 特徴
食べチョク BtoC産直EC 販売手数料19.7% 産直EC認知度No.1・消費者直販
ポケットマルシェ BtoC産直EC 販売手数料15% 農家・漁師から消費者への直売
やさいバス BtoB物流+受発注 農家15%・買い手350円/回 冷蔵車巡回型のBtoB直販
産直アウル BtoC産直EC 販売手数料19.5% 産直EC・自治体連携
BtoBプラットフォーム受発注 BtoB電子受発注 要問合せ 飲食業界50,000社以上導入
Agrion販売管理 業務ツール 1,980円/月 農家向け受注一元管理・請求書自動生成
freee販売 業務ツール 2,680円/月~ 見積書・納品書・請求書の統合管理
アラジンEC BtoB ECパッケージ 月額要問合せ BtoB特化EC受発注システム

各サービスの詳細解説

食べチョク(ビビッドガーデン)

食べチョクは、株式会社ビビッドガーデンが運営する産直ECプラットフォームです。消費者に対する認知度が高く、登録生産者数は8,500軒以上に達しています。生産者が価格を自ら設定できる点が特徴で、中間マージンを抑えた直販が可能です。

販売手数料は19.7%で、送料は購入者負担です。独自の「食べチョクコンシェルジュ」サービスにより、消費者の好みに合った生産者をマッチングする仕組みがあり、リピーターの獲得につながりやすい設計になっています。

定期便(サブスクリプション)にも対応しており、安定した売上を確保したい農家にとって有効な販路です。一方、出品数が多いため、商品ページの差別化や写真のクオリティが集客に影響します。

ポケットマルシェ(雨風太陽)

ポケットマルシェは、株式会社雨風太陽が運営する産直ECプラットフォームです。農家や漁師が消費者に直接販売できる仕組みで、生産者のストーリーや栽培のこだわりを発信しやすいSNS的なインターフェースが特徴です。

販売手数料は15%で、食べチョクと比較して手数料率が低めに設定されています。「ごちそうさまメッセージ」など、購入者と生産者のコミュニケーション機能が充実しており、ファンの育成に向いたプラットフォームです。

登録生産者数は約7,000軒で、食べチョクと並ぶ国内産直ECの代表格です。手数料率を重視する場合や、消費者との関係性を重視する農家にとって有力な選択肢です。

やさいバス(エムスクエア・ラボ)

やさいバスは、株式会社エムスクエア・ラボが運営するBtoB向けの農産物流通プラットフォームです。冷蔵車が生産者と飲食店・小売店の拠点を巡回する「共同配送」の仕組みにより、個別配送のコストを大幅に削減しています。

料金は農家側が販売額の15%、買い手側が1回あたり350円という構成です。静岡県を起点に関東圏で展開を広げており、地域密着型のBtoB直販を実現しています。

飲食店やレストランへの直接販売を検討しているが、物流がネックになっている農家にとって、配送インフラを提供してくれるやさいバスは現実的な解決策です。ただし、対応エリアが限定されているため、利用可能な地域の確認が必要です。

産直アウル(レッドホース)

産直アウルは、レッドホースコーポレーション株式会社が運営する産直ECサイトです。ふるさと納税事業で培った自治体との連携ノウハウを活かし、自治体と連携した産地PRが特徴です。

販売手数料は19.5%で、食べチョクとほぼ同水準です。ふるさと納税の返礼品として出品していた生産者が、通常のEC販売にも展開できる導線が用意されています。

他の産直ECと比べて登録生産者数はやや少ないですが、その分商品が埋もれにくいというメリットもあります。ふるさと納税の返礼品提供実績がある農家にとっては、既存の取引関係を活かしやすいプラットフォームです。

BtoBプラットフォーム受発注(インフォマート)

BtoBプラットフォーム受発注は、株式会社インフォマートが提供するBtoB電子受発注システムです。飲食業界を中心に50,000社以上が導入しており、外食チェーンやホテルとの取引で広く利用されています。

料金は個別見積もりですが、受注側・発注側の双方がシステム上で注文・納品・請求のやり取りを完結できます。FAXや電話での受発注をデジタル化し、伝票の転記ミスや確認漏れを削減する効果が見込めます。

大規模な飲食チェーンとの取引がある農業法人や、食品卸を通じた流通を行っている生産者に適しています。取引先が既にインフォマートを利用しているケースも多く、その場合は導入のきっかけとなりやすいです。

Agrion販売管理(Agrion)

Agrion販売管理は、農家の販売業務に特化した管理ツールです。電話やLINEなど複数チャネルから入る注文を一元管理し、納品書・請求書の自動生成、売掛金の管理まで対応しています。

月額1,980円という低価格で、個人農家でも導入しやすい料金設定です。直売所やレストランなど複数の取引先を持つ農家が、受注から請求までの事務作業を効率化するのに適しています。

freee会計との連携機能も備えており、販売データを会計ソフトに自動連携することで、経理業務の二重入力を削減できます。農業に特化した帳票フォーマットが用意されている点も実務的なメリットです。

freee販売(freee)

freee販売は、クラウド会計ソフト大手のfreee株式会社が提供する販売管理サービスです。見積書・納品書・請求書の作成から、売掛金の入金管理まで一連の販売業務をクラウド上で完結できます。

月額2,680円からの料金で、freee会計との連携により、販売データがそのまま会計処理に反映されます。農業に特化したサービスではありませんが、汎用的な販売管理機能は農産物の直販にも十分活用できます。

インボイス制度に対応した適格請求書の発行が可能で、電子帳簿保存法への対応も備えています。既にfreee会計を利用している農家にとっては、シームレスな連携が大きなメリットです。

アラジンEC(アイル)

アラジンECは、株式会社アイルが提供するBtoB特化型のEC受発注システムです。取引先ごとに異なる価格設定、掛け率、決済条件を柔軟に設定できるBtoBならではの機能を備えています。

月額料金は個別見積もりで、導入規模に応じたカスタマイズが可能です。食品業界を含む5,000社以上の導入実績があり、基幹システム(販売管理・在庫管理)との連携にも対応しています。

取引先が多い農業法人や、卸売事業を展開している生産者が、FAX受注からWeb受注への移行を図る際に検討すべきシステムです。ただし、個人農家が導入するにはコストや機能面でオーバースペックになる可能性があります。

販売先別の選び方

消費者に直接販売したい場合

個人消費者への直販を始めたい場合は、食べチョクまたはポケットマルシェが第一候補です。いずれも消費者の集客はプラットフォーム側が担うため、自社でECサイトを構築・運営する手間がかかりません。

手数料率で選ぶならポケットマルシェ(15%)、集客力や認知度で選ぶなら食べチョク(19.7%)が有利です。いずれも併用が可能なので、両方に出品して反応を比較するのも効果的な戦略です。

ふるさと納税の返礼品提供経験がある場合は、産直アウルもスムーズに出品できるでしょう。

飲食店・小売店へBtoB販売したい場合

飲食店やレストランとの直接取引を拡大したい場合は、やさいバスの物流付きプラットフォームが実用的です。配送の手間を省きつつ、地域の飲食店との取引機会を得られます。

大規模な外食チェーンやホテルとの取引がある場合は、BtoBプラットフォーム受発注(インフォマート)の利用を検討してください。取引先側が既に導入済みの場合は、参加を求められることもあります。

取引先が多岐にわたり、独自のECサイトでBtoB受発注を効率化したい場合は、アラジンECのような専用パッケージが選択肢に入ります。

受注・請求業務を効率化したい場合

販路は既に確保されているが、受注管理や請求書発行の事務負担を減らしたい場合は、Agrion販売管理やfreee販売が適しています。

農業特化の帳票が必要な場合はAgrion販売管理、汎用的な販売管理と会計連携を重視する場合はfreee販売がおすすめです。いずれも月額2,000円前後から利用でき、導入コストの負担は小さく抑えられます。

農業の多角的な効率化に取り組みたい方は、農法の比較記事もご参考ください。

まとめ

農業の受発注管理は、販売先の種類と経営規模によって最適なソリューションが大きく異なります。消費者向けの直販であれば産直ECプラットフォーム、飲食店向けのBtoB取引であれば電子受発注システムや物流プラットフォーム、社内の事務効率化であれば販売管理ツールと、課題に応じた選択が重要です。

インボイス制度への対応や電子帳簿保存法の要件を満たすためにも、帳票類のデジタル化は避けて通れない流れです。現在の受発注フローを見直し、最もボトルネックになっている部分から段階的にデジタル化を進めるのが現実的なアプローチです。

複数のプラットフォームやツールを組み合わせることも有効です。たとえば、産直ECで消費者向けの直販チャネルを確保しつつ、Agrion販売管理でBtoB取引の事務処理を効率化するといった使い分けが考えられます。販路拡大の全体戦略については、販路開拓の記事もご覧ください。

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