営農管理ソフト8選比較|無料から使える圃場管理・作業記録・労務管理ツール【2026年版】

営農管理ソフトウェアとは?導入が求められる背景

農業経営の高度化が進む中、圃場ごとの作業記録、収穫量の把握、農薬使用の管理など、膨大なデータを紙やExcelで管理し続けることには限界があります。特にGAP認証の取得や、取引先への生産履歴の提出が求められる場面では、デジタル化された営農管理システムの導入が不可欠です。

農林水産省が推進する「スマート農業実証プロジェクト」でも、営農管理ソフトの活用は生産性向上の基盤として位置づけられています。圃場の位置情報と紐づけた作業記録、農薬・肥料の使用履歴の自動集計、スタッフ間での情報共有を効率化することで、属人的な管理から脱却できます。

さらに近年では、衛星画像やAIを活用した生育診断機能を備えた製品も登場しており、データに基づく精密農業の実践を後押ししています。本記事では、国内外の主要な営農管理ソフトウェア8製品を比較し、規模や目的に応じた選び方を解説します。農業の効率化に取り組みたい方は、さまざまな農法を比較した記事もあわせてご覧ください。

営農管理ソフトウェア比較表

製品名 提供元 料金 主な機能 無料プラン
アグリノート ウォーターセル 無料~33,000円/年 圃場管理・作業記録・GAP対応 あり
KSAS クボタ 100圃場まで無料 GoogleMap圃場管理・農機連携・AI診断 あり(100圃場まで)
Z-GIS JA全農 月額220円/100圃場 地図ベース圃場管理・Excel連携 なし
Agrihub Agrihub 個人無料・法人9,800円/年 AI農薬管理・作業日誌・販売管理 あり(個人利用)
xarvio BASF 年額13,200円~ 衛星画像AI解析・可変施肥マップ なし
Cropwise Operations Syngenta $50/月~ 衛星監視・気象予報・収穫予測 なし
Bushel Farm Bushel(米国) $19.99~59.99/月 作業管理・損益計算・John Deere連携 なし
Cropin Cropin(インド) 要問合せ AIクラウド農業プラットフォーム なし

各製品の詳細解説

アグリノート(ウォーターセル)

アグリノートは、新潟県に本社を置くウォーターセル株式会社が提供する国産の営農管理ソフトウェアです。航空写真を背景に圃場を地図上で管理でき、作業記録や農薬・肥料の使用履歴をスマートフォンから簡単に入力できます。

GAP認証に必要な帳票の出力機能を備えており、JGAP・ASIAGAPの認証取得を目指す農家にとって実用的なツールです。無料プランでも基本的な圃場管理・作業記録が利用可能で、有料プラン(年間33,000円まで)ではグループ管理やデータ分析機能が追加されます。

操作画面がシンプルで、ITに不慣れな方でも扱いやすい設計です。国内では水稲農家を中心に幅広く導入されています。

KSAS(クボタ)

KSASは、農業機械メーカーのクボタが提供する営農支援システムです。Google Mapを活用した圃場管理が可能で、クボタ製の農業機械と連携することで、作業データの自動取得や稼働状況の把握ができます。

100圃場までは無料で利用でき、中小規模の農家でも導入しやすい価格設定です。AI食味診断や収量コンバインとの連動により、収穫と同時にデータを蓄積できる仕組みは、ハードウェアメーカーならではの強みといえます。

クボタ製農機との連携を前提とした機能が多いため、クボタ製品を既に導入している農家にとって特にメリットが大きい選択肢です。一方、他メーカーの農機を使用している場合は連携機能の恩恵が限定される点に留意が必要です。

Z-GIS(JA全農)

Z-GISは、JA全農が開発した地図連動型の圃場管理システムです。地図上に圃場を登録し、Excelで管理していた各種データを圃場と紐づけて可視化できます。既存のExcelデータをそのまま取り込めるため、移行の手間が少ない点が特徴です。

月額220円/100圃場という低価格で利用でき、数百から数千圃場を管理する大規模経営体でもコストを抑えられます。JAグループとの親和性が高く、営農指導員との情報共有にも適しています。

シンプルな構成のため、高度な分析機能はありませんが、圃場の一覧管理と情報の見える化を低コストで実現したい場合に適したツールです。

Agrihub(Agrihub社)

Agrihubは、農薬のAI検索機能を核とした営農管理プラットフォームです。作物名を入力するだけで使用可能な農薬を自動で絞り込み、使用回数の上限管理まで行えます。農薬取締法に基づく適正使用の確認を効率化できる点が大きな特徴です。

個人農家は無料で利用でき、作業日誌、販売管理、出荷管理までカバーしています。法人プラン(年間9,800円)ではスタッフの作業管理や複数拠点の一元管理に対応します。

残留農薬基準の遵守や、取引先への安全性証明に課題を感じている農家にとって、農薬管理の自動化は実務上の大きなメリットです。

xarvio(BASF)

xarvioは、ドイツの化学メーカーBASFが提供するデジタル農業プラットフォームです。Sentinel-2などの衛星画像とAIを組み合わせた圃場モニタリングが特徴で、作物の生育状況のばらつきを可視化し、可変施肥マップを自動生成します。

年額13,200円から利用でき、精密農業への入口として手頃な価格帯です。ヨーロッパを中心にグローバルで広く普及しており、膨大な農業データの蓄積に基づくAIモデルが強みとなっています。

日本市場向けのローカライズが進められており、水稲・畑作の両方に対応しています。リモートセンシングを活用したモニタリング技術に関心がある方には、植物工場の成功事例で紹介している先進的なセンシング技術も参考になるでしょう。

Cropwise Operations(Syngenta)

Cropwise Operationsは、スイスの農業化学企業Syngentaが展開する統合農業管理プラットフォームです。衛星画像による圃場モニタリング、局地気象データに基づく予報、作物の収穫量予測など、データドリブンな農業経営を支援する高度な機能を備えています。

月額$50からの料金設定で、大規模農業法人やグローバル展開する農業企業を主なターゲットとしています。40カ国以上で展開されており、多言語・多通貨に対応しているため、海外の農場を含めた一元管理にも適しています。

日本国内での個人農家向けの利用にはオーバースペックな面がありますが、法人として海外との連携や高度なデータ分析を必要とする場合には有力な選択肢です。

Bushel Farm(Bushel・米国)

Bushel Farmは、米国Bushel社が提供する農場経営管理ソフトウェアです。圃場ごとの作業記録や資材投入量の管理に加え、損益計算機能を備えている点が特徴で、圃場単位での収益性分析が可能です。

月額$19.99のBasicプランから$59.99のPremiumプランまで3段階の料金体系があり、John Deere Operations Centerとのデータ連携に対応しています。米国の穀物農家を中心に利用されており、グレインエレベーターへの出荷データとの連動も可能です。

日本語には対応していないため、英語での操作が前提となります。米国流の農場経営管理手法を参考にしたい方や、海外農場を管理する必要がある方に適しています。

Cropin(Cropin・インド)

Cropinは、インドのバンガロールに本社を置くアグリテック企業が開発したAI農業クラウドプラットフォームです。92カ国以上で利用されており、衛星リモートセンシングによる圃場モニタリング、AIベースの生育予測、サプライチェーン全体の可視化まで包括的にカバーしています。

料金は個別見積もりで、大規模農業法人、食品メーカー、金融機関(農業融資の審査向け)などエンタープライズ層を主な対象としています。APIを通じた他システムとの連携も柔軟に対応可能です。

2021年にはGoogle Cloud for Startupsの支援を受けるなど技術力への評価が高く、特にアジア・アフリカ圏での導入実績が豊富です。日本での本格展開はこれからですが、グローバル規模のバリューチェーン管理を必要とする企業にとって注目のプラットフォームです。

営農管理ソフトの選び方

経営規模で選ぶ

個人農家や小規模経営(数ha程度)であれば、無料プランが充実しているアグリノート、KSAS、Agrihubが導入のハードルが低い選択肢です。特にAgrihubは個人利用が完全無料で、農薬管理という実務的な価値をすぐに体感できます。

中規模の農業法人(数十ha~数百ha)では、Z-GISの圧倒的なコストパフォーマンスが魅力です。100圃場あたり月額220円で大量の圃場データを地図上で管理でき、Excelベースの業務からの段階的な移行も容易です。クボタ製農機を使用している場合はKSASとの連携によるデータ自動取得も効果的です。

大規模法人やグローバル展開する企業には、Cropwise Operations、Cropin、Bushel Farmといった海外プラットフォームが適しています。多拠点管理、高度な分析機能、ERP等の基幹システムとの連携が求められる場面でその真価を発揮します。

導入目的で選ぶ

GAP認証の取得を目指す場合は、帳票出力機能を備えたアグリノートが第一候補です。認証に必要な記録項目が網羅されており、審査時の書類準備を大幅に効率化できます。

農薬の適正使用管理を重視するなら、Agrihubが最も特化した機能を提供しています。AI検索による農薬の絞り込みと使用回数の自動カウントは、複数品目を栽培する農家にとって実用的です。

精密農業や可変施肥に取り組みたい場合は、衛星画像解析機能を持つxarvioやCropwise Operationsが有力です。圃場内のばらつきを把握し、ピンポイントで施肥量を最適化することで、コスト削減と環境負荷の低減を両立できます。

農機データとの連携を重視するなら、KSAS(クボタ製農機)やBushel Farm(John Deere)など、特定メーカーとの統合が進んだ製品を検討しましょう。農業経営全体の効率化や販路の拡大については、農業の販路開拓の記事も参考にしてください。

まとめ

営農管理ソフトウェアは、農業経営の規模・目的・既存の設備環境によって最適な選択肢が大きく異なります。国内製品はサポート体制の手厚さと日本の農業制度への対応が強みであり、海外製品は衛星画像解析やAIによる高度な分析機能を備えています。

導入にあたっては、まず無料プランやトライアル期間を活用して自社の業務フローとの適合性を確認することが重要です。高機能な製品を選んでも、現場で使われなければ意味がありません。操作性や、日常的に入力する手間とのバランスも検討してください。

デジタル化された営農管理は、作業効率化にとどまらず、収量と投入コストの関係を数値で把握し、データに基づく経営判断を行うための基盤となります。まずは一つのツールを導入し、記録を蓄積する習慣を定着させることが第一歩です。

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