【大企業】植物工場の成功事例6選!将来性や赤字の理由、メリット・デメリットも解説
「植物工場で成功している企業はある?」
「植物工場に参入している企業はどのような戦略を取っているの?」
このように考えていませんか?植物工場に参入する際に、成功した企業の戦略などを知りたいですよね。
そこで本記事では、農業ビジネスを展開しているトクイテンが植物工場の成功事例を6つ紹介します。
また、成功した企業が取った戦略や植物工場のメリット・デメリットも解説します。
植物工場の成功事例を知り、農業ビジネスの新規参入を成功させましょう。
植物工場とは?将来性や市場規模を解説
植物工場とは、室内で人工的に植物を生産する先進的な農業システムです。温度や湿度などの環境要因を精密にモニタリングし、最適な生育条件を整えられます。それにより、季節や外部の気候に左右されず、年間を通じて安定して農作物の生産が可能です。
植物工場は、自然災害が増え食料の安定供給が求められる近年、注目を集めています。
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2021年度の完全人工光型植物工場の市場規模は約223億円とされています。2026年度には約450億円に達すると予測されており、約2倍の市場規模が見込まれているため、将来性が高いと言えるでしょう。
植物工場について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。植物工場の概要や種類、メリット、導入方法について紹介しています。
【上場・大企業】植物工場の成功事例6選
植物工場の成功事例を6つ紹介します。
1.パナソニック株式会社
パナソニック株式会社は、沖縄に太陽光型植物工場「ITグリーンハウス」を建設しました。パートナー企業と協力して、日本の先進的な農業技術と工業技術を融合させた施設です。
設備は、光や風などの自然の力を最大限に活用できるパッシブ構造を採用しています。それだけでなく、直射日光の熱を軽減し、作物の育成に不要な赤外線を遮断する「熱線吸収カーテン」を備えました。
そのほかにも、センシング技術や通信技術、計測技術などの主要なソリューションが組み合わされています。温室内の温度や湿度だけでなく、CO2濃度や作物に供給する養液の状態などもすべてコンピューターで数値管理し、制御可能です。
また、トマトの光合成の活性度を非破壊・非接触で測定できる水分センサーなども設置されており、最適な環境下での栽培を可能にしています。
2.三菱ケミカルグループ株式会社
三菱ケミカルグループ株式会社は「苗テラス」という人工光・閉鎖型苗生産装置を開発しました。
植物が成長するために必要な条件を自動で調整してくれ、季節や天候に左右されず、誰でも簡単に丈夫な苗を生産できます。
このシステムでは、温度調節や照明、灌水、炭酸ガスの供給を自動で行えます。したがって、特定の期間内に植え付けや鉢植えに適した苗を育てられるのです。
光を透さない断熱壁で囲われた人工環境で、天候や季節の変化に左右されずに、計画通りの育苗が実現できるようになっています。
3.株式会社ローソン
株式会社ローソンは、自社店舗への安定供給やオリジナル商品の原材料として使用するために、植物工場を導入しています。
植物工場のシステムは三菱化学が提供するもので、LED照明や蛍光灯を使用して植物の光合成を促進する完全人工光型です。光や温度、湿度、養分などの育成環境を最適な状態に制御できます。
さらに、積雪の多い秋田県においても、天候の影響を受けず、年間を通じて同じ品質の野菜の栽培を可能にしました。その結果、高品質な野菜を安定して供給しています。
4.株式会社資生堂
株式会社資生堂は、静岡県掛川市に位置する掛川工場内の「実験棟」において、生薬原料として使用される植物の栽培を実現する「植物栽培実験施設」を設置しました。
化粧品製造に必要な原材料を自社で育てて、高品質な原材料の安定した調達を実現しています。
それにより、市場競争力の高い商品開発が可能です。また、栽培環境の細かな管理により、有効成分を豊富に含んだ原材料の確保へとつながっています。
5.西日本電信電話株式会社(NTT西日本グループ)
西日本電信電話株式会社(NTT西日本グループ)は、ICT(情報通信技術)を駆使した閉鎖型植物工場「いちごプラント」を通じていちごの生産を行っています。
以下のような特徴をもつ技術を用いて、イチゴの生産が行われました。
- 灌水システム(いちごが自分のペースで水を飲める)
- LEDシステム(活動と休息を行える)
- 空調システム(快適な機構を再現する)
これらの技術の導入により、年間を通じて旬のイチゴの生産が可能となり、農業の新たな可能性を切り開いています。
収穫されたイチゴを使用したスイーツの販売も予定されており、美味しさをより多くの方々に届けることで、地域経済の活性化にも貢献する見込みです。
6.東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
東日本旅客鉄道株式会社は、省エネルギーを特徴とする完全人工光型の屋内農場システム「PUTFARM」を導入し、グリーンリーフなどの野菜を栽培・販売しています。
PUTFARMは、環境や土地の広さ、形状に左右されずに設置できる点が特徴的です。この利点を活かして、鉄道の高架下などの土地を有効活用するプロジェクトを展開しています。
これにより、無農薬で安全かつ安心な野菜を新鮮な状態で直接消費者に届けられるようになりました。同時に、農産物の物流コストを削減する効果も期待されています。
植物工場の成功戦略
植物工場の参入に成功した企業は、以下のような戦略を取っています。
- 高性能の作物を栽培
- 加工・業務用に適した作物を栽培
まず、競合他社と作物を区別するためには、特別な栄養価をもつ作物など、高性能の作物を栽培することが重要です。例を挙げると、豊富な栄養素を追加し、安眠にも効果がある特別なレタスの栽培が挙げられます。βカロテンが豊富に含まれるマンゴーなどの野菜やフルーツを育てる戦略もあります。
次に、より多くの市場に製品を届けるためには、加工や業務用に適した品種の開発が有効です。具体的には、以下の特性をもつ作物の栽培が含まれます。
- カットする回数が少ない
- 鮮度を長持ちさせやすい
- 廃棄する部分が少ない
こうした特性により、購入する消費者や企業の需要を高められます。
植物工場の2つのメリット
植物工場には、以下2点のメリットがあります。
- 計画的に栽培できる
- 作物に付加価値をつけられる
1.計画的に栽培できる
植物工場では、光の照射量や温度、湿度などを細かく調整して、生育環境の制御が可能なため、作物の生育を計画的に管理できます。
例えば、種まきや収穫のタイミングを調整できるので、必要に応じて作物の生産量やスケジュール調整ができます。これにより、市場に供給する作物の量や品質安定が可能です。
さらに、出荷計画や受注状況に応じて生産計画を立て、栽培をコントロールできます。収量見込みのズレが少なくなり、収支計画も立てやすくなるでしょう。
2.作物に付加価値をつけられる
作物に競合企業と差別化できる付加価値をつけられる点も植物工場のメリットです。
近年、温度や水質、光などを高度に管理することで、食品としての機能性成分の含有量を調整できるようになりました。それにより、通常の品種よりも、抗酸化作用の強い野菜やビタミン、鉄分などを多く含む高機能野菜の生産ができます。
この技術を活用して、栄養価に優れた野菜を生産し、事業化している企業や産地も増えています。企業独自の野菜を栽培すると、他社との差別化を図れるでしょう。
【約半数が赤字?】植物工場の2つのデメリット
植物工場では、赤字経営の企業があります。
実際に、施設園芸協会によると、人工光型植物植物工場の54%が赤字経営に陥っており、収益の確保に苦労していることがわかります。
本項では、植物工場の赤字に関連した2つのデメリットを紹介します。
1.導入・運用コストが高い
植物工場では、土地だけでなく建物や設備も必要となるため、従来の屋外農業に比べてコストが高い点がデメリットです。
人材不足の解消のためにICT技術を導入する費用もかかるため、初期コストは数千万円に及ぶ場合があります。
また、運用コストも無視できません。例えば、水耕栽培の場合、水の費用や空調を保つための電気代がかかります。
このように、初期投資や運用コストは大きいですが、下記のように約半数の施設が6年以内に経営が安定しています。
出典:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
そのため、長期的に見れば、植物工場の初期・運営費用のコストは回収可能と言えるでしょう。
2.栽培できる作物が限られる
植物工場では、栽培できる作物の種類に限りがあります。主に栽培されるのはトマト、レタス、イチゴなどです。
太陽光を利用した植物工場では、トマトが全栽培品目の約70%を占め、ほかの作物はほとんどが10%未満です。併用型の場合、トマトとレタスがそれぞれ約30%、花きが約20%、イチゴが約10%を占めています。人工光型では、レタスが約90%を占めています。
植物工場では栽培できる作物には限りがありますが、加工や販売方法によっては、利益を確保することも可能です。
下記の記事では、植物工場も含めた農業のビジネスチャンスについて解説しているため、参考にしてみてください。
植物工場の成功事例を理解して、農業の新規参入時に役立てよう
本記事では、下記の植物工場の成功事例を紹介しました。
企業名 | 植物工場の戦略 |
パナソニック株式会社 | 自然の力を活かした植物工場を完備 |
三菱ケミカルグループ株式会社 | 温度調節や照明、炭酸ガスの供給を自動で行っている |
株式会社ローソン | LED照明を活用して植物の光合成を促進 |
株式会社資生堂 | 化粧品の原料を植物工場で栽培 |
西日本電信電話株式会社 | LEDシステムや空調システムを用いていちごの栽培 |
東日本旅客鉄道株式会社 | 鉄道の高架下など環境を選ばずに植物工場を整備 |
植物工場の参入においては、加工に適した作物や付加価値の高い作物を栽培する点が重要です。本記事で紹介した植物工場の成功事例を理解して、農業の新規参入に役立てましょう。
農業参入は、植物工場だけでなく、健康志向の増加や環境への配慮により求められる有機農業といった選択肢もあります。
下記の記事では、有機農業参入の概要や成功事例を解説しているので参考にしてみてください。
また、トクイテンのホームページでも、有機農業に関する情報や参入支援サービスについて解説しているので、ぜひご覧ください。
参考サイト
大規模施設園芸・植物工場実態調査・事例調査 | 農林水産省
人工光型植物工場の現状と展望|独立行政法人農畜産物復興機構
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-17.pdf