会社基本情報
| 会社名 | DeHaat(運営: AgRevolution) |
|---|---|
| 本社所在地 | インド ビハール州パトナ |
| 設立 | 2012年 |
| CEO・共同創業者 | Shashank Kumar |
| その他共同創業者 | Shyam Sundar Singh、Amrendra Singh、Abhishek Dokania |
| 累計資金調達額 | 5億800万ドル以上 |
| 企業評価額 | 7億〜8億ドル(約1,050億〜1,200億円) |
| FY2025売上高 | 3,041クローレ(約3億6,000万ドル) |
| 従業員数 | 非公開 |
| 公式サイト | https://agrevolution.in/ |
事業概要

DeHaatは、インドの小規模農家向けにエンドツーエンドの農業サービスを提供するアグリテックプラットフォームです。種子・肥料・農薬などの農業資材の供給から、作物に関するアドバイザリー、病害虫管理、収穫した農産物の市場連携(販路開拓)、さらには金融アドバイザリーまで、農業のバリューチェーン全体をカバーしています。
現在、インド国内12州で事業を展開しており、180万人以上の農家にサービスを提供しています。全国に11,000か所以上の「DeHaat Center」と呼ばれるフランチャイズ拠点を設置し、503の農業生産者団体(FPO)と連携しています。
2023年には農業アドバイザリー企業AgriCentralを全額現金で買収し、1,200万人以上の農家へのリーチを獲得しました。この買収により、衛星画像やAIを活用した精密な栽培アドバイスの提供能力が大幅に強化されています。
課題と解決策
インドの小規模農家が抱える構造的課題
インドの農業従事者の約86%は、耕作面積2ヘクタール未満の小規模農家です。こうした農家は、以下のような深刻な課題に直面しています。
- 農業資材(種子・肥料・農薬)の調達ルートが限られ、中間業者を介することで価格が高騰する
- 適切な栽培技術や病害虫対策に関する専門的なアドバイスを得る手段がない
- 収穫物の販路が限定的で、適正な価格で販売できない
- 農業融資や保険へのアクセスが困難
特にビハール州をはじめとするインド東部の農村地域では、物流インフラが未整備であり、ラストマイルの配送が大きなボトルネックとなっていました。
DeHaatのアプローチ
DeHaatは、テクノロジーとフランチャイズネットワークを組み合わせることで、これらの課題を包括的に解決しています。
従来のアグリテック企業の多くが都市部を拠点にデジタルファーストのアプローチを取るのに対し、DeHaatは農村部に物理的な拠点「DeHaat Center」を設置するハイブリッドモデルを採用しました。各センターは地元の起業家(マイクロアントレプレナー)によって運営され、農家との信頼関係を構築しながらデジタルサービスへの橋渡しを行います。
また、営農管理アプリとしての機能も備えており、農家はモバイルアプリを通じて資材の注文、栽培アドバイスの受信、市場価格の確認を行うことができます。
ビジネスモデル
DeHaatの収益モデルは、農業バリューチェーンの複数のポイントから収益を得るプラットフォーム型のビジネスモデルです。
農業資材の販売
主要な収益源は、種子・肥料・農薬・農業機械などの農業資材の販売です。メーカーから直接仕入れを行い、DeHaat Centerを通じて農家に販売することで、中間マージンを削減しつつ自社の利益を確保しています。FY2025の売上高3,041クローレ(約3億6,000万ドル)の大部分がこの資材販売から生まれています。
市場連携(マーケットリンケージ)
農家が収穫した農産物の買い取り・販売仲介を行い、取引手数料を得ています。DeHaatのプラットフォームを通じて、農家は従来よりも広い販路を開拓でき、より有利な価格での取引が可能になります。
フランチャイズネットワーク
11,000か所以上のDeHaat Centerは、地元の起業家がフランチャイズとして運営しています。DeHaatは資材の供給とテクノロジープラットフォームを提供し、各センターの運営者は販売マージンを得る仕組みです。この分散型モデルにより、DeHaatは大規模な直営店舗を持つことなく、広大なインド農村部へのラストマイル配送網を構築しています。
付加価値サービス
作物アドバイザリー、病害虫管理、金融アドバイザリーなどの付加価値サービスを提供しています。AgriCentralの買収により、衛星画像やAIを活用した精密なアドバイザリーサービスが強化され、農家のプラットフォームへのエンゲージメント向上と資材購買の促進につなげています。
今後の計画
DeHaatは、FY2025に初めて通期での黒字化を達成し、369クローレ(約44億円)の利益を計上しました。これはインドのアグリテック業界において重要なマイルストーンであり、プラットフォーム型農業ビジネスの持続可能性を実証するものです。
2025年4月には、Trifecta Capitalから200クローレ(約24億円)のベンチャーデットを調達しており、事業拡大のための資金基盤をさらに強化しています。
今後は、現在の12州からインド全土への展開を加速させるとともに、フランチャイズネットワークのさらなる拡充を進める方針です。また、AgriCentralの技術を活用したAIベースの栽培アドバイザリーの精度向上や、農業金融サービスの拡充にも注力していくとみられます。
コメント
DeHaatの最大の強みは、テクノロジーと物理的なフランチャイズネットワークを融合させたハイブリッドモデルにあります。多くのアグリテックスタートアップがデジタルオンリーのアプローチで農村部への浸透に苦戦する中、DeHaatは地元の起業家を巻き込むことでラストマイルの課題を解決しました。
FY2025の売上高約3億6,000万ドル、初の通期黒字化という実績は、インドのアグリテック企業として突出しています。農業資材の販売を収益の柱としつつ、アドバイザリーや市場連携を通じて農家を囲い込むエコシステム戦略は、他の新興国市場でも参考になるモデルです。
一方で、フランチャイズモデルには品質管理の難しさが伴います。11,000か所以上のセンターにおけるサービス品質の均一化や、農家への適切なアドバイス提供の担保が、今後のスケールにおける課題となるでしょう。
インドは世界第2位の農業大国でありながら、農業のデジタル化率は依然として低い状況です。DeHaatの成長は、この巨大市場における変革の可能性を示すとともに、東南アジアやアフリカなど同様の課題を持つ地域への展開も視野に入ってくると考えられます。