水耕栽培は同じ単位面積から年間に何作も収穫できる高密度生産システムですが、その分だけ「養液1リットルが運ぶリスクと利益のレバレッジ」が桁違いに大きい栽培方式でもあります。Pythiumのような水媒介病原が一度入ると循環養液の中で爆発的に増え、逆に良い微生物や成分は同じ循環ループで作物全体に瞬時に行き渡ります。
このレバレッジを味方につけるのが、水耕向けに設計されたバイオスティミュラント(BS)の役割です。本ガイドでは、海外の最新査読論文と主要メーカーの公式情報をベースに、NFT・DWC・固形培地(ロックウール/ココ)といった栽培方式ごとに、どのカテゴリのBSをどう組み合わせれば良いのかを整理します。バイオスティミュラント全体の作用機序や成分比較はバイオスティミュラント完全比較ガイドに、菌根菌の詳細は菌根菌(アーバスキュラー菌根菌)完全ガイドにまとめています。

水耕栽培でバイオスティミュラントが必要になる3つの理由
「養液に必要な肥料成分を全部入れているのだから、BSは要らないのでは?」という疑問は、水耕農家からよく聞かれます。実際には、水耕特有の構造そのものが、BSのニーズを土耕より強くする方向に作用しています。
1. 根圏が「無菌に近い」ため自然な微生物群が存在しない
水耕の養液系、特にロックウールやNFT・DWCのような無機培地・水のみの系は、栽培開始時点では事実上の「無菌状態」に近く、土耕の根圏にいるような有用微生物群が自然発生で住み着くことはありません。Pseudomonas属やBacillus属などのPGPB(Plant Growth-Promoting Bacteria)は本来こうした根圏の常在菌であり、水耕では意図的に投入しない限り、植物は彼らの恩恵(リン可溶化・鉄輸送・IAA生成・全身誘導抵抗性)を受けられない状態が続きます。
裏を返せば、水耕は「狙った微生物だけを高密度で投入して定着させる」のに最も適した栽培方式です。MDPIのレビューでも、水耕システムは培養液量が限られておりPGPBを根圏に導入しやすいと指摘されています。
2. 循環養液の中で水媒介病原が爆発的に増える
NFTやDWCのような閉鎖循環系では、Pythium aphanidermatum・Phytophthora cryptogea・Fusarium oxysporumといった水媒介病原が一度入ると、遊走子が養液全体に拡散して短時間で全株に到達します。実際の試験では、Pseudomonas chlororaphisやBacillus cereusなどのPGPBが、Pythiumの根定着を72〜91%抑制したと報告されています。
水耕の殺菌側の選択肢(UV・オゾン・H₂O₂)はコストや微生物BSとの両立の問題を抱えるため、「良い菌を先に住まわせる占有戦略」を取れる微生物BSの価値が高いわけです。
3. 短サイクル・高密度のため小さな歩留まり改善が大きく効く
葉物水耕は30〜45日サイクル、トマト水耕は1年中収穫が続くため、5%の収量改善や3%のロス削減でも年間粗利インパクトはきわめて大きくなります。塩ストレス下の水耕レタスでは、PGPR・vermicompost・フルボ酸・アミノ酸・キトサンといったBS処理で、無処理対照比 51〜75%の収量増が報告されています(BMC Plant Biology, 2024)。これは塩ストレスという特殊条件ですが、養液EC上昇や夏季の高温など、水耕では類似のストレスが定常的に発生します。
水耕栽培ならではの制約とBS設計の原則
水耕でBSを使う際は、土耕で同じ製品を使うときには気にしなくてもよい制約がいくつも発生します。設計段階で考慮しないと、効果が出ないどころか、根詰まりや沈殿などのトラブルを引き起こします。
養液pH・ECとの相性を最初に確認する
水耕の養液pHは作物によって5.5〜6.5の範囲で運用されるのが一般的です。腐植酸はカルシウムイオン濃度が高い養液ではゲル化・沈殿しやすく、ドリッパーやポンプの詰まりを引き起こします。水耕用途では、より低分子で水溶性の高いフルボ酸(FA)や、Caキレート設計が施された製品を優先するのが原則です。海藻抽出物やタンパク質加水分解物も、製品によってはCa・Mg・微量要素と反応するため、メーカー指定の混用可否を必ず確認します。
溶存酸素(DO)と温度が微生物BSの効果を左右する
Bacillus・Pseudomonas・Trichodermaといった有用微生物の多くは好気性または通性嫌気性であり、DO 6mg/L以上、養液温度20〜25℃で最もよく機能します。シリコンが水耕キュウリのうどんこ病を60〜80%抑制した古典的事例も、フロリダの高温条件下では効果が著しく減衰したと報告されており、水耕では「BSの効力=環境条件×処方」と認識すべきです。
殺菌処理(UV・オゾン・H₂O₂)と微生物BSは原則として両立しない
循環養液をUV殺菌やオゾン処理している施設では、養液本流に微生物BSを直接投入してもUV/オゾンで死滅します。微生物BSを使う場合は、(a)殺菌処理を間欠運用にする、(b)UV/オゾン下流(殺菌処理後)の補水ラインから投入する、(c)根圏に直接ドリップする「スポット施用」に切り替える、のいずれかの設計が必要です。
残留農薬規制が厳しい葉物・ベビーリーフでこそBSが効く
水耕で生産される葉物・ベビーリーフ・ハーブは、化学農薬の登録が限られているうえに、収穫直前散布の制約も厳しい作物です。BSは肥料登録/非農薬扱いで運用できる製品が多く、化学防除の代替ではなく、IPM(総合的病害虫管理)の中で「予防の主力」として位置付けることができます。
水耕で使えるバイオスティミュラント6カテゴリ
軸Aで解説した6カテゴリ(海藻・腐植酸・アミノ酸/PH・トリコデルマ・バチルス・キトサン/珪酸)と、菌根菌(AMF)を加えた7カテゴリのうち、水耕でストレートに使えるのは4〜5カテゴリで、残りは制約付きの使用となります。
タンパク質加水分解物・アミノ酸:養液NUE向上の主役
植物由来のタンパク質加水分解物(PH)は、水耕レタスのドレンチ施用で可販生重 +21%、地上部乾物 +31%の改善が報告されています(MDPI Agronomy, 2022, Cristofano ら)。窒素利用効率(NUE)向上のメカニズムは、オーキシン・サイトカイニン生合成のアップレギュレーションと細胞壁可塑性の変化に関連しています。2026年には、コスレタス水耕でミルク由来PHとプラズマ活性化水(PAW)を組み合わせ、低養分条件でも生体重をほぼ2倍にした研究(MDPI Agrochemicals)が発表されました。
水耕では葉面散布より養液添加の方が均一性が高く、Trainer・Hicure・Megafol(Hello Nature/Valagro)といった水溶性の高い植物由来PHが扱いやすい選択肢です。Siapton(Italpollina)は動物由来でアミノ酸組成が異なり、結球レタスの硬度・糖度向上に向くと現場では使い分けられています。
海藻抽出物:養液添加2〜4 mL/Lで形態・生理改善
Ecklonia maximaの抽出物を養液に2〜4 mL/Lで添加することで、水耕レタスのバイオマス蓄積・葉面積・気孔コンダクタンス・水利用効率・NUEが改善することが報告されています(MDPI Horticulturae, 2021)。2024年にはSargassum sppとAscophyllum nodosumの抽出物が水耕レタスの生育を改善するとともに、根圏のバクテリア群集ダイナミクスを変化させることがJournal of Applied Phycologyで報告され、海藻BSが微生物BSのパフォーマンスを下支えする「プレバイオティクス的働き」を持つ可能性が示唆されています。
水耕向けには、完全水溶性のAcadian Soluble Extract Powder(Ascophyllum nodosum、0.5-0-17、北大西洋ノバスコシア産)や、液剤のStella Maris/Maxicrop/Kelpakが主流です。500 g/ha〜の灌注施用が公式の標準レートです。
腐植酸・フルボ酸:水耕ではフルボ酸を優先する
水耕向けには、低分子で水溶性が高くカルシウムと沈殿しにくいフルボ酸(FA)が優先されます。塩ストレス下の水耕レタス研究では、フルボ酸 40 mg/Lで気孔コンダクタンス 58〜189%・葉緑素 4〜10%・栄養素吸収 15〜109%の改善が記録されています(BMC Plant Biology, 2024)。フルボ酸はFe・Mn・Cu・Znといった微量要素のキレートとしても機能し、NFTで起こりがちな鉄欠乏(Fe吸収効率は他要素より低い2〜4%)の補正に有効です。
商用ではDiamond Grow Fulvic(Live Earth Products)、OG Organics Grandma Enggy’s F-1(Advanced Nutrients)、Pre-Empt(Hort Americas、OMRIリスト水耕用有機肥料)が代表的です。Pre-Emptはマクロ・ミクロ要素+アミノ酸+フルボ酸+ビタミン群を1液に統合した、NFT・葉物水耕に最適化された製品です。
微生物BS:水耕で最大の効果を発揮するカテゴリ
水耕の閉鎖循環系こそ、微生物BSが土耕より高いROIを出せる場面です。Bacillus subtilis・B. amyloliquefaciens・Pseudomonas chlororaphisといったPGPB株は、Pythium・Phytophthora・Fusariumなど水媒介病原を根表面で物理占有・抗菌物質産生・誘導抵抗性の3経路で抑え込みます。Pseudomonas chlororaphisとBacillus cereusでPythium根定着 72〜91%抑制(Plants MDPI, 2022)、植物成長促進と病害抑制の二重効果が確認されています。
Trichoderma asperellumは水耕イチゴ・ホウレンソウで特に強く、CMT10株はイチゴ根腐れ(Neopestalotiopsis clavispora)に対して63%のバイオコントロール効果と、植物高 +20.1%・全フレッシュ重 +87.1%の生育促進を示しました(MDPI Horticulturae, 2024)。MDPI Life 2025の研究では、T. asperellumの水耕ホウレンソウへの接種で生体重 +23.5%・根長 +39.6%・葉数 +18%・葉面積 +22%が報告されています。
水耕で使える主要製品は、Bayer Serenade ASO(B. subtilis QST 713)、Syngenta Taegro 2(B. amyloliquefaciens FZB24)、BioWorks RootShield WP/PLUS+(T. harzianum T-22・T. virens G-41)、Koppert Trianum-P(T. harzianum T-22)、Belchim ボトキラー水和剤(B. subtilis HAI-0404)、出光アグリ エコホープDJ(T. atroviride SKT-1)です。多くは灌注/養液混入で適用可能ですが、UV・オゾン併用時は投入位置の設計が必須です。
菌根菌(AMF):水耕では制約が大きいが固形培地では実用可能
純粋なNFTやDWCのような水耕水のみのシステムでは、菌根菌(AMF)の根への共生は事実上成立しません。AMFは胞子発芽から根への侵入・arbuscule形成までに固形物理基質と接触する必要があるためです。一方、ロックウールやココピート、特にココピート80%+クレイ10%+ピート10%+石灰3 kg/m³といった混合培地では、リン施用を80%まで減らす条件でAMF感染率30%が達成され、収量を損なわずに果実の遊離アミノ酸・Brix値が向上する結果が得られています(Sustainability MDPI, 2024 メタアナリシス)。
水耕でAMFを使う場合の必須条件は、(a)培地に少なくとも一部の有機物・粘土を含めること、(b)N:P比を最低10以上、できれば15に保つこと、(c)AMF胞子は定植時に苗の根に直接接種すること、の3点です。製品はMycoApply Endo(Mycorrhizal Applications)、Hello Nature Mycoshell®、ROOTGROW(PlantWorks)が代表的です。純粋NFT・DWCでは諦め、PH・海藻・微生物BSで代替するのが現実的な判断です。
ケイ酸(モノシリシック酸):温度条件付きの強力なIPMツール
養液にモノシリシック酸を100〜200 mg Si/Lで添加することで、キュウリのうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)が60〜80%抑制された事例がカナダで広く再現されています。一方、フロリダの高温条件下では効果が減衰したという報告もあり、効果発現には養液温度20〜25℃を維持することが重要です。水耕トマトでは収量 +30%の事例も報告されており、高温・乾燥ストレス対策としても機能します。
商用ではImpello Biosciences Dune(安定化モノシリシック酸)、Plant Vitales Ortho Silicic Acid(韓国製・葉面/養液)が代表的です。ケイ酸ナトリウム・ケイ酸カリウムは植物が利用できる形に変換されにくいので、水耕では安定化モノシリシック酸を選びます。
栽培方式別の処方戦略
水耕といっても、NFT葉物・DWC葉物・固形培地トマト・養液栽培イチゴでは、リスクと収益構造が大きく異なります。それぞれの代表的な処方を整理します。
NFT葉物・ベビーリーフ(30〜45日サイクル)
養液本流:フルボ酸 40 mg/L(鉄欠乏予防・常時)、Ecklonia maxima海藻液 2〜4 mL/L(週1回)。育苗段階:植物由来PH 0.5〜1.0 mL/L(Trainer・Hicure)でNUEと初期成長を底上げ。生育中盤:UV・オゾン併用なしの施設では、Bacillus subtilis(Serenade ASO・ボトキラー)を週1〜2回、灌注で投入してPythium予防。生育後期:海藻+FAで品質仕上げ。Ca動員型ケイ酸製品をチップバーン予防として葉面散布する選択肢もあります。
DWC葉物・ハーブ・薬草(高付加価値ニッチ)
バジル・ミント・大葉などの高付加価値ハーブは、香気成分(精油)の質と量で価格が決まるため、二次代謝産物を高める方向のBS設計が効きます。植物由来PH(葉面・養液とも)でアミノ酸プールを補強し、海藻抽出物で気孔・水利用効率を改善、Bacillus・Pseudomonasで根圏を健全化する3本柱が基本です。AMFは固形培地・コココードン併用なら追加可能です。
固形培地トマト(ロックウール・ココピート・ココスラブ)
育苗:MycoApplyやMycoshell®のAMFを苗根に接種+Trichoderma harzianum T-22(Trianum-P・RootShield)で初期根圏を構築。N:P比は15程度に保ち、リン過剰でAMFが阻害されないよう留意。生育期:Megafol/Trainerなどの植物由来PHを養液添加(500 mL/ha〜1 L/ha)、海藻Stella Maris/Acadian Solubleを週1で灌注。着果〜肥大期:Bacillus subtilis(Serenade ASO)でうどんこ病・灰色かび病を予防、モノシリシック酸(Dune・Plant Vitales)で果実硬度と収量を底上げ。長期収穫の温室トマトでは、施肥プログラムのライフサイクル全体に5〜6種類のBSを設計し直すケースが増えています。
養液栽培イチゴ(高設栽培・株冷育苗)
育苗・親株:AMF(MycoApply・ROOTGROW)+Trichoderma asperellum(エコホープDJ)で根腐れ・萎黄病予防。定植直後:Bacillus subtilis(Serenade ASO・ボトキラー)灌注でうどんこ病・灰色かび病の予防。開花〜着果:Acadian Stella Maris/Soluble Extract Powderを養液混入で隔週、果実品質改善。収穫期:植物由来PH+モノシリシック酸の併用で硬度・果実径・糖度を底上げ。詳細処方はイチゴ向けバイオスティミュラント完全ガイドに整理しています。
水耕で使える主要バイオスティミュラント製品
水耕での運用が公式に推奨されているか、論文・現場事例で水耕適用が確認できる製品を、カテゴリ別に整理します。
- タンパク質加水分解物(植物由来):Trainer・Stimtide・Atriva 500(Hello Nature)、Hicure・Megafol(Valagro/Syngenta Biologicals)、Siapton(Italpollina系・動物由来)
- 海藻抽出物:Stella Maris・Acadian Soluble Extract Powder(Acadian Plant Health/Ascophyllum nodosum)、Kelpak(Kelp Products/Ecklonia maxima)、Maxicrop(Maxicrop USA)、Sargassum系製品
- 腐植酸・フルボ酸:Diamond Grow Fulvic(Live Earth Products)、OG Organics Grandma Enggy’s F-1(Advanced Nutrients)、Pre-Empt(Hort Americas・OMRIリスト水耕用統合液肥)、PowHumus(Humintech)
- バチルス系:Serenade ASO(Bayer/QST 713)、Taegro 2(Syngenta/FZB24)、Subtilex NG(BioWorks/MBI 600)、ボトキラー水和剤(クミアイ化学・出光/HAI-0404)、インプレッション水和剤(クミアイ化学/IK-1080)
- トリコデルマ系:RootShield WP/PLUS+(BioWorks/T-22・G-41)、Trianum-P(Koppert/T-22)、エコホープDJ(出光アグリ/SKT-1)
- 菌根菌(固形培地のみ):MycoApply Endo(Mycorrhizal Applications)、Mycoshell®(Hello Nature)、ROOTGROW(PlantWorks)、セラビッグα(住友化学園芸)
- ケイ酸(モノシリシック酸):Dune(Impello Biosciences・安定化モノシリシック酸)、Plant Vitales Ortho Silicic Acid(韓国製)
- その他:Pseudomonas chlororaphis系PGPR製剤、キトサン製剤(EZ-Gro Chitosan・スーパーグリーン)
水耕でBSを使うときの注意点
水耕BSの効果を引き出すには、土耕と異なる運用ノウハウが必要です。最初の数作で必ず確認しておきたいポイントを整理します。
- 肥料設計の代替ではない:BSはあくまで「肥料+環境+遺伝子発現の効率化装置」であり、養液EC・pH・温度・DOといった基礎条件が崩れていれば効きません。まず標準肥料設計を完成させてからBSを上乗せします。
- 製品ごとの混用可否を必ず事前テスト:1リットルポットでの少量混合テストを行い、24時間後の沈殿・凝集・色変化を観察します。特に腐植酸×Ca、海藻×P、PH×銅キレートの組み合わせで沈殿が起きやすい傾向があります。
- UV・オゾン併用時の投入位置設計:殺菌処理ループの下流側、または根圏スポット施用に切り替えます。微生物BSと殺菌処理の併用は基本的にトレードオフです。
- 養液温度20〜25℃を維持:微生物BS・ケイ酸の両方で、温度が効果の最大律速要因です。夏季の養液冷却装置は、BS投資のROIを直接決めます。
- 葉物・ベビーリーフでの硝酸蓄積:海藻抽出物・PHは窒素吸収を促進するため、収穫直前の連用は硝酸蓄積を招く場合があります。EU硝酸基準(レタス2,000〜5,000 mg/kg)を意識し、収穫前7〜10日のBS投与は控えめにします(葉物特有の課題は葉物野菜向けバイオスティミュラント完全ガイドを参照)。
- 国内農薬登録の確認:日本の水耕で殺菌登録のあるバチルス・トリコデルマ製剤は限定的です。ボトキラー水和剤・インプレッション水和剤・エコホープDJなど、現場運用前に登録範囲を必ず確認します。
- 記録と再現性:水耕は変数が多く、効果の判断には作毎の連用比較が必要です。投入時期・濃度・養液pH・EC・温度・収量・歩留まり・病害発生率を作毎に記録し、3作以上連続して効果が見えるかで採用判断します。
まとめ:水耕は「無菌×循環」というバイオスティミュラントの最強の舞台
水耕栽培は、自然界の根圏微生物群と切り離されている代わりに、狙った微生物・成分を高密度で投入し、循環養液で全株に届けられる「BSの設計者から見ると最強の舞台」です。NFT葉物ならフルボ酸+海藻+バチルスの3点セット、固形培地トマトならAMF+トリコデルマ+PH+海藻+ケイ酸の5層構造というように、栽培方式と作物特性で処方を組み替えるのが基本になります。
本ガイドで紹介した製品・処方は、いずれも海外査読論文と主要メーカー公式情報をベースにしていますが、最終的な投入量・タイミング・併用可否は、自分の施設の養液設計と作物・品種・季節に合わせて調整してください。最初の1作は対照区と比較区を必ず設け、収量・品質・歩留まりの数値で判断することをおすすめします。
参考URL
- The use of biostimulants as a key to sustainable hydroponic lettuce farming under saline water stress(BMC Plant Biology, 2024) https://bmcplantbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12870-024-05520-8
- Effects of Plant-Derived Protein Hydrolysates on Yield, Quality, and Nitrogen Use Efficiency of Greenhouse Grown Lettuce and Tomato(MDPI Agronomy, 2022) https://www.mdpi.com/2073-4395/12/5/1018
- Integrating Milk Protein Hydrolysate and Plasma-Activated Water as Alternative Nitrogen Inputs for Growth, Nutrition, and Postharvest Quality of Hydroponic Cos Lettuce(MDPI Agrochemicals, 2026) https://www.mdpi.com/2504-3129/7/1/18
- Sargassum spp. and Ascophyllum nodosum seaweed extract formulations improve plant growth and alter the bacterial dynamics in hydroponically cultivated lettuce(Journal of Applied Phycology, 2024) https://link.springer.com/article/10.1007/s10811-024-03361-4
- Influence of Ecklonia maxima Extracts on Growth, Yield, and Postharvest Quality of Hydroponic Leaf Lettuce(MDPI Horticulturae, 2021) https://www.mdpi.com/2311-7524/7/11/440
- Can Arbuscular Mycorrhizal Fungi Enhance Crop Productivity and Quality in Hydroponics? A Meta-Analysis(Sustainability MDPI, 2024) https://www.mdpi.com/2071-1050/16/9/3662
- The Use of PGPB to Promote Plant Hydroponic Growth(Plants MDPI, 2022) https://www.mdpi.com/2223-7747/11/20/2783
- Biocontrol Potential of Trichoderma asperellum CMT10 against Strawberry Root Rot Disease(MDPI Horticulturae, 2024) https://www.mdpi.com/2311-7524/10/3/246
- Suppression of Powdery Mildew on Greenhouse-Grown Cucumber by Addition of Silicon to Hydroponic Nutrient Solution Is Inhibited at High Temperature(Plant Disease, 2003) https://apsjournals.apsnet.org/doi/10.1094/PDIS.2003.87.2.177
- Acadian Plant Health Stella Maris 製品ページ https://acadianplanthealth-na.com/products/stella-maris/
- Hort Americas Pre-Empt OMRI-listed Organic Hydroponic Nutrients https://hortamericas.com/blog/pre-empt-an-organic-hydroponic-fertilizer/
- Evaluating Organic Fertilizers and Microbial Inoculation for Soilless and Hydroponic Crop Production(HortScience, 2024) https://journals.ashs.org/view/journals/hortsci/59/4/article-p552.xml