Provivi:フェロモンで害虫の交尾を撹乱する次世代農薬|ゲイツ財団・Syngentaが支援

会社基本情報

会社名 Provivi, Inc.
所在地 アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンタモニカ
設立 2013年
事業内容 フェロモンベースの害虫防除技術の開発・販売
資金調達額 累計2億3,000万ドル以上(シリーズCで8,500万ドル、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から1,000万ドルを含む)
公式サイト https://www.provivi.com/

事業概要

Provivi フェロモン害虫防除
出典:Provivi

Provivi(プロヴィヴィ)は、合成フェロモンを活用した交信撹乱(Mating Disruption)技術により、化学農薬に依存しない害虫防除ソリューションを提供するアメリカのアグリテック企業です。同社の技術は、害虫の雌が放出する性フェロモンを人工的に合成・散布し、雄の害虫が雌を見つけられないようにすることで交尾を妨害し、次世代の害虫個体数を抑制します。

フェロモンによる交信撹乱技術自体は以前から存在していましたが、従来はフェロモンの合成コストが極めて高く、ブドウやリンゴなど高価値作物にしか経済的に導入できませんでした。Proviviは独自の生合成プロセスにより、フェロモンの製造コストを大幅に引き下げ、トウモロコシや水稲といった大面積の畑作物にも適用可能にした点が画期的です。

現在までに7か国で21件の政府登録を取得しており、グローバルに事業を展開しています。

課題と解決策

課題:化学農薬への過度な依存

世界的に害虫による作物被害は深刻であり、特にツマジロクサヨトウ(Fall Armyworm)はアフリカ、アジア、南米の主食作物に甚大な被害をもたらしています。従来の化学農薬による防除は、害虫の薬剤耐性の発達、環境や生態系への悪影響、農家の健康リスクといった課題を抱えています。

解決策:低コストフェロモン合成による交信撹乱

Proviviは、微生物を活用した独自の生合成技術により、高品質なフェロモン化合物を従来比で大幅に低いコストで製造することに成功しました。この技術により、これまでフェロモン防除が経済的に成り立たなかった大規模畑作物への適用が可能となりました。

従来の化学農薬との大きな違いは、フェロモンが標的害虫にのみ作用し、益虫や他の生物に影響を与えない点です。また、害虫を殺すのではなく繁殖を妨げるため、薬剤耐性が発生しにくいという利点もあります。既存の農薬散布機で適用可能なため、農家は新たな設備投資を必要としません。

ビジネスモデル

Proviviは、フェロモン製剤の研究開発・製造を自社で行い、販売は各地域の大手農薬・農業資材企業とのパートナーシップを通じて展開するモデルを採用しています。

最も大きな提携は、世界的農薬メーカーであるSyngenta(シンジェンタ)との独占契約です。ブラジルにおけるツマジロクサヨトウ向けフェロモン製剤の独占販売権をSyngentaに付与しています。ブラジルはトウモロコシや大豆の一大生産国であり、ツマジロクサヨトウの被害が深刻な市場です。

2025年時点の主なパートナーは以下の通りです。

  • UPL(メキシコ)
  • AgNova Technologies(オーストラリア)
  • Koppert do Brasil(ブラジル)
  • Andermatt Group(東アフリカ)
  • Susbin(アルゼンチン)

このように、自社で直接販売網を構築するのではなく、各地域に精通したパートナー企業を通じてスケーラブルな流通を実現しています。

今後の計画

Proviviは、対象害虫種と適用地域の拡大を進めています。ツマジロクサヨトウに加え、他の主要害虫への適用範囲拡大が見込まれます。また、既存パートナーネットワークを通じて、南米、アフリカ、アジア太平洋地域でのさらなる市場浸透が予想されます。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの資金提供は、発展途上国の小規模農家へのアクセス拡大を目指したものであり、低所得国における食料安全保障への貢献も同社の重要な事業方針です。

コメント

Proviviの交信撹乱技術は、農業における害虫防除のアプローチを根本から変える可能性を持っています。化学農薬の使用削減は世界的なトレンドであり、生物学的防除へのニーズは今後ますます高まるでしょう。

従来のさまざまな農法において、化学的防除と生物的防除のバランスは常に議題となってきましたが、Proviviのようなコスト競争力のあるバイオソリューションの登場により、その選択肢が大きく広がっています。

また、農業用ドローンとの組み合わせによるフェロモン散布の効率化も、今後の興味深い展開として注目されます。

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