デジタル・ゲノム・エンジニアリングのためプラットフォームを開発するInscripta社について解説

事業概要

Inscripta社は、デジタル・ゲノム・エンジニアリングのためプラットフォームを開発する農業エンジニアリング企業です。2015年に、アメリカのコロラド州ボルダーを拠点に設立されました。社員数は101〜250人程度と推定されます。

Inscripta社が開発したCRISPRベースのプラットフォームは、装置、消耗品、ソフトウェア、アッセイから構成されています。完全に自動化されたワークフローにより、単一細胞の超並列かつ追跡可能な遺伝子編集をかつてない規模で実現することが可能です。

同社のポートフォリオの中核となるのは、ベンチトップサイズのデジタル微生物ゲノムエンジニアリングシステムであるOnyxプラットフォームです。自動化されたワークフローにより、研究者は新しいゲノムパスウェイや関係性を特定して膨大なライブラリにまとめ、CRISPRを用いてそれらの知見を広範囲に編集し効果を分析することが、すべて同じプラットフォーム上で可能になります。

Inscripta社の目標は、現在の技術やライセンスの制限によって遺伝子編集の研究が妨げられている科学者を支援することです。このプラットフォームを提供し、研究開発目的でMAD7™ CRISPRヌクアーゼを利用無料にするなど、協力的なビジネス活動を行うことで、科学者による新たな生物学的発見を支援しています。

Youtube動画:https://www.youtube.com/watch?v=zKwC2e-CyCk

ビジネスモデル

2021年4月には、Inscripta社初の商用顧客となるリバプール大学のGeneMill社に、同社のプラットフォームが出荷されました。GeneMill社は、ライフサイエンス、製薬などの分野で合成生物学のサービスを提供しています。

Inscripta社のデータと独自のMAD7 CRISPRヌクレアーゼは、以前から研究者に提供されており、MAD7 CRISPRヌクレアーゼは関心のある科学者であれば誰でも無料で利用できます。

さらに、2020年秋に設立されたバイオテック企業Sestina Bio社をはじめ、共同研究者がOnyxシステムへの早期アクセスを受け、すでにOnyxをゲノム探索とエンジニアリングに活用しています。

テクノロジー

Inscripta社のOnyxプラットフォームは、CRISPR遺伝子編集技術を用いて完全に自動化されたゲノムエンジニアリングを実現します。スケーラブルなデジタルゲノムエンジニアリングのための世界初のベンチトップシステムであり、ベンチトップ機器、消耗品、ソフトウェア、アッセイから構成されています。

完全に自動化されたCRISPRベースのワークフローにより、Onyxプラットフォームは、単一細胞の超並列かつ追跡可能な編集をかつてない規模で実現します。合成生物学の4つのステップを大幅に改善し、エンジニアリングとゲノム発見を加速させることができます。

InscriptaDesignerソフトウェアを使用すると、数回のクリックでゲノム規模のライブラリを設計することができます。Onyx ゲノムエンジニアリングキットを使用して、Onyx 装置上で数百万個の正確に編集された細胞をボタン一つで簡単に作成します。

ジェノタイピングアッセイを用いて、Onyxセルライブラリ内の数千の編集をテストし、その特性を明らかにした後、プールまたは単離されたフェノタイピングを行います。同じジェノタイピングアッセイとInscriptaResolverソフトウェアを使用して、個々の編集の影響を知ることができます。

Onyxプラットフォームを使用することで、ユーザーはより少ないリソースで、これまでにない速さでゲノムエンジニアリングサイクルを繰り返すことができます。

今後の計画

Inscripta社は2021年4月に、1億5000万ドルのVCラウンド終了と、CRISPR遺伝子編集プラットフォームの最初の商業的買い手を獲得を発表しました。調達した資金は、Onyxベンチトッププラットフォームの組織の拡大と技術に活用される予定です。

コメント

現在では、技術やライセンスの制限によって遺伝子編集の研究が妨げられているという課題があります。Inscripta社の提供するプラットフォームによって、今後研究者がバイオエコノミーの可能性を最大限に発揮できるような環境整備が進んでいくことが期待されます。

参考URL