InsectBiotech:オリーブ廃棄物をアメリカミズアブで高付加価値タンパク質に変換するスペイン発スタートアップ

会社基本情報

  • 会社名:InsectBiotech
  • 所在地:スペイン・アンダルシア州
  • 設立:2022年
  • 創業者:Tobias Webb(CSO)、Ignacio Gavilan(CEO)、Ben Brown(COO)
  • 累計調達額:450万ドル(追加600万ドルを調達中)
  • 公式サイトhttps://insectbiotech.eu/

CEOのIgnacio Gavilan氏は製造業、FMCG、農業で25年の経験を持つベテランです。共同創業者のBen Brown氏がアンダルシアをドライブ中にオリーブ搾りかすの膨大な量と豊富な太陽光エネルギーに着目し、起業のアイデアが生まれました。2024年にはMálaga AgriTech Awardの最優秀スタートアップ賞を受賞しています。

事業概要

InsectBiotechは、アメリカミズアブ(Black Soldier Fly:BSF)の幼虫を使って、オリーブオイル産業の廃棄物を高付加価値の製品に変換する昆虫バイオテクノロジー企業です。

同社の製品は以下の3つです。

  • 昆虫タンパク質:ペットフード、家畜飼料、水産養殖向けの高品質タンパク源
  • 昆虫オイル:飼料・工業用途向け
  • フラス(虫糞):土壌改良材・有機肥料

どういう課題をどう解決しているか

農業廃棄物とタンパク質不足の課題

世界の動物飼料向けタンパク質需要は増加の一途ですが、魚粉や大豆タンパクの生産は環境負荷が大きく、持続可能な代替タンパク源が求められています。同時に、オリーブオイル産業は搾りかす(ポマス)の処理に課題を抱えています。

InsectBiotechのアプローチ

InsectBiotechは、アンダルシア地方が世界最大のオリーブポマス産出地(年間480万トン)であることに着目しました。同社はグリーンケミストリー技術を開発し、通常はBSF幼虫が消化できないオリーブポマスを幼虫の餌として利用可能にすることに成功しました。

BSF幼虫は「自然界最高のバイオコンバーター」と呼ばれ、有機廃棄物を効率的にタンパク質、脂質、肥料に変換します。このプロセスは水・電力・土地の使用量が少なく、温室効果ガスの排出も大幅に削減されます。

現在、グラナダ大学とアンダルシアのオリーブ搾油所「Casa Grande」の2カ所の小規模施設でテスト生産を行っています。

ビジネスモデル

InsectBiotechは昆虫タンパク質、オイル、フラスの製造・販売を収益源としています。2031年までに年間15万トンの幼虫生産(乾燥昆虫ミール3.9万トン相当)を目標としており、売上高は1億5,000万ユーロを見込んでいます。

現在450万ドルを調達済みで、最初の大規模製造施設の建設に向けて追加600万ドルの調達を進めています。施設はスペインを起点に、複数拠点に展開する計画です。

今後の計画

  • アンダルシアでの最初の商業規模製造施設の建設
  • 2031年までに年間15万トンの生産能力確保
  • スペイン以外の地域への製造拠点展開
  • 昆虫フラスを活用したリジェネラティブ農業(環境再生型農業)の推進

コメント

昆虫タンパク質市場は近年急速に成長しており、フランスのŸnsect、オランダのProtix、シンガポールのInsectaなど多くのプレーヤーが参入しています。InsectBiotechがユニークなのは、原料調達の地理的優位性にあります。世界最大のオリーブポマス産出地であるアンダルシアに拠点を置くことで、低コストかつ安定的な原料供給を実現しています。

昆虫産業は原料コストが収益性を大きく左右するため、480万トンという膨大なオリーブ廃棄物へのアクセスは構造的な競争優位性です。さらに、アンダルシアの豊富な太陽光エネルギーにより、エネルギーコストも低く抑えられます。

一方で、昆虫タンパク質産業全体がスケールアップの壁に直面しており、ŸnsectやAgronutrisなど先行企業の苦戦も報じられています。InsectBiotechの「地域資源に密着した分散型生産」というアプローチが、中央集権型の大規模工場モデルに対する有力な代替となるか、今後の商業化の進展が注目されます。

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