4AG Robotics:キノコ収穫を完全自動化するカナダ発ロボティクス企業

会社基本情報

  • 会社名:4AG Robotics Inc.(旧TechBrew Robotics)
  • 所在地:カナダ・ブリティッシュコロンビア州サーモンアーム
  • 設立:1999年(2023年に4AG Roboticsへリブランド)
  • CEO:Sean O’Connor
  • 従業員数:78名(うちフルタイム66名)
  • 累計調達額:6,000万CAD以上
  • 公式サイトhttps://4ag.ai/

元々は1999年設立のTechBrew Roboticsという受託ロボティクス企業でした。食品、医療、輸送など幅広い分野でカスタムロボットを開発していましたが、約6年前にキノコ収穫に特化する方針へ転換。2023年に4AG Roboticsにリブランドし、同年後半にベンチャーキャピタル出身のSean O’Connor氏をCEOに迎えました。

事業概要

4AG Roboticsは、キノコ(主にアガリクス属のホワイトマッシュルーム)を自律的に収穫・トリミング・パッキングするロボットを開発・製造しています。主力製品はForager HX800です。

このロボットはAI搭載のコンピュータビジョン、精密吸着グリッパー、高度なモーションコントロールを組み合わせ、24時間365日、人手なしでキノコの収穫作業を行います。既存の農場の棚にそのまま取り付けられるため、農場側のインフラ変更は不要です。また、栽培室間の移動も可能です。

4AG RoboticsのSeries B資金調達を示す画像。ロボットの吸着グリッパー部分が確認できる
出典:4AG Robotics

どういう課題をどう解決しているか

キノコ農業が抱える課題

キノコ栽培は農業の中でも特に労働力不足が深刻な分野です。2022年にはカナダのキノコ農場の60%が収穫要員を確保できなかったという調査結果があります。キノコは1時間に4%のペースで成長するため、収穫が数時間遅れるだけで品質と収量に大きな影響が出ます。さらに、年間を通じて収穫が必要なため、季節労働者の確保が特に困難です。

アメリカ・マッシュルーム協会のLaura Phelps氏も「今日私たちが直面している最大の問題は労働力の確保です」と述べています。

4AG Roboticsのアプローチ

4AG Roboticsはキノコ収穫の全工程を自動化するロボットを提供しています。ロボットはキノコのベッドをスキャンし、各キノコの最適な収穫タイミングをAIで判断します。その後、吸着グリッパーでキノコを収穫し、茎をトリミングし、パネット(小売用容器)やバルクボックスに詰めるところまで一貫して行います。

同社によると、ロボットは人間の収穫作業者と比較して15〜25%多い収量を実現できるとのことです。これはAIによる最適な収穫タイミングの判断と、24時間稼働による収穫遅延の解消が主な要因です。

CEOのSean O’Connor氏は4AG Roboticsを「ハードウェアを構築しなければならなかったAI企業」と表現しており、ソフトウェアとAIに強みを持つ企業であることを示しています。収穫時に収集したデータはAIによる作物収量管理や病害検出にも活用されています。

ビジネスモデル

4AG Roboticsはロボットの販売を主要な収益源としています。現在までに53台のロボットを販売しており、2026年2月まで受注分は完売済みです。

  • 2024年売上:250万CAD
  • 2025年売上見込:700万CAD
  • 展開国:カナダ、アイルランド、オーストラリア(米国・オランダへの展開準備中)

資金調達の経緯は以下の通りです。

  • 2023年後半:Series A 1,750万CAD
  • 2025年7月:Series B 4,000万CAD(Astanor、Cibus Capital共同リード)

Series Bには新規投資家のVoyager Capitalに加え、InBC、Emmertech、BDC Capital、James Richardson & Sons、Stray Dog Capitalが参加しました。さらに1,000万CADのデットファイナンスも予定しています。このラウンドはオーバーサブスクライブとなり、希薄化条件を有利に維持するために一部の投資家を断ったほどです。

今後の計画

Series Bの資金を活用し、以下の展開を計画しています。

  • フィールドサービスとカスタマーサクセスに30名を新規採用
  • 米国とオランダへの新規展開
  • 製造能力の拡大
  • パネット(小売パック)対応ロボットの製品化(現在は「coming soon」段階)

O’Connor氏は「完全に最適化された、完全に自動化された農場に向けたフリート拡大が進んでいるのが本当にエキサイティング」と語っています。ただし、同氏は「何にノーと言うかで成功が決まる。今はキノコだけに集中する」とも述べており、当面は他の作物への展開は行わない方針です。

コメント

キノコ収穫の自動化は、果実や野菜の収穫ロボット(Abundant RoboticsやAppHarvestなど)と比べてニッチな領域ですが、その分競合が少なく、4AG Roboticsは明確なマーケットリーダーとしての地位を確立しつつあります。

注目すべきは、元受託開発企業がキノコ一本に絞って成功している点です。O’Connor氏が強調する「キノコだけに集中する」という姿勢は、農業ロボティクスで多品目展開を目指して失敗するスタートアップが多い中で、堅実な戦略と言えます。

53台のロボット販売、5カ国での展開、2026年2月まで完売というトラクションは、技術が実用段階にあることを示しています。世界のキノコ市場が2030年までに600億ドル規模に成長すると予測される中、労働力不足という構造的課題を解決するポジションは非常に有利です。Series Bがオーバーサブスクライブとなった事実も、投資家からの高い評価を裏付けています。

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