水耕栽培自体は以前からある技術ですが、栽培から収穫までを一貫して機械がおこなうのは極めて困難でした。しかしアメリカのベンチャー企業 Iron Ox によって、ついに水耕栽培の完全自動化が実用化段階まで到達しました。本記事では自動水耕栽培の現状と今後の課題をご紹介します。
Iron Ox 基本情報
住所:San Francisco Bay Area, Silicon Valley, West Coast
CEO:Brandon Alexander
設立年:2015年
従業員数:11〜50人
CEOはロボット工学のスペシャリスト
Iron Ox の CEO を務める Brandon Alexander 氏は、産業ロボットを実地配備するための基盤構築に関わってきた人物。過去にはGoogleに勤務していたこともあり、ドローン宅配プロジェクトのための飛行制御ソフトウェアの開発に携わっていました。
そのため Iron Ox のコア技術は、産業ロボットの自動制御技術にあると言って良いでしょう。自動水耕栽培では、その技術が遺憾無く発揮されています。
近未来的な栽培風景
Iron Ox のホームページから、実際の栽培風景が見られます。水耕栽培設備が並んだ衛生的な工場内を、運搬装置やロボットアームが行き交う近未来的な栽培の様子を、ぜひご確認ください。運搬・収穫は全てロボットがおこなうため、人による作業はほとんどありません。
完全自動化のメリット
水耕栽培自体は昔からある技術ですが、それを完全自動化することで以下のメリットが考えられます。
品質の再現性・均一性が上がる
光量や施肥量を自動調整するため、栽培条件のばらつきを抑えられます。その結果、作物の成長度合いや栄養状態が均一になり、再現性よく生産できます。サイズや色などの規格が決められた品目を作る場合に有利となるでしょう。
衛生的
植物工場でも人に由来するカビや細菌による汚染が問題となります。しかし Iron Ox の自動水耕栽培は作業者の出入りによって野菜が汚染されるリスクを極限まで減らせるため、衛生的な野菜が生産できます。
農薬不使用
病気や害虫の影響を受けないので、農薬を用いずに栽培できます。無農薬栽培として差別化をはかったり、残留農薬基準の厳しい地域へ出荷したりできるでしょう。
自動水耕栽培の現状と課題
すでに葉物野菜を市場へ供給している
Iron Ox の自動水耕栽培を備えた屋内農場が、2018年10月にカリフォルニア州で稼働し始めました。バジル 、ベビーレタス、ソレルを生産しており、すでに近隣のスーパーに出荷されています。
コストが高いため、高付加価値化が課題
露地栽培のものに比べまだ価格はひとまわり高いため、今後は栽培品目の高付加価値化が課題です。完全無農薬栽培や希少品目の生産、レストラン向け品目などに着手すれば、自動水耕栽培の強みである農薬不使用・均一性の向上を大いに生かせると思われます。
URL
- Iron Ox https://ironox.com/
- CrunchBase | Iron Ox https://www.crunchbase.com/organization/iron-ox
- New autonomous farm wants to produce food without human workers | MIT Technology View https://www.technologyreview.com/2018/10/03/139937/new-autonomous-farm-wants-to-produce-food-without-human-workers/
- ロボットが栽培・収穫した野菜が店頭に!米 Iron Ox が出荷を開始 https://techable.jp/archives/98845