オーストラリアの垂直農法企業Stacked Farmが、米国での生産拠点づくりを進めています。同社は小規模なパイロット農場から始め、約10年かけて自動化と照明の技術を検証してきました。この記事では、同社が大型施設へ段階的に移行した経緯と、米国進出の計画を紹介します。
会社基本情報
- 社名:Stacked Farm
- 設立:2016年
- 創業者:Daniel Tzvetkoff氏(創業者兼CEO)、Liz Tzvetkoff氏(エグゼクティブディレクター)
- 所在地:オーストラリア・クイーンズランド州ゴールドコースト(アランデル)
- 従業員:オーストラリアと米国で75人以上
- 公式サイト:stackedfarm.com
事業概要
Stacked Farmは、屋内の垂直農場で葉物野菜とハーブを生産しています。主な品目は、ベビースピナッチ、ロケット、ミックスリーフ、コスレタス、バジル、ミント、パセリです。同社は播種から包装までの工程を自動化しており、収穫物は密封パックで出荷されます。
生産では農薬・除草剤・殺菌剤を使っていません。同社によると、使用した水の約90%を再利用しています。パックにはコードが付いており、消費者は栽培場所と収穫日を確認できます。
同社は2016年に、ゴールドコースト近郊のバーレイヘッズでパイロット農場の建設を始めました。当初は手作業で栽培し、2018年に自動化へ切り替えています。2020年に自動化の検証を終え、2021年にアランデルで商業規模の「Gold Coast Farm & Innovation Centre」の建設に着手しました。この施設は2024年1月に初収穫を迎え、卸売業者や外食向けに出荷しています。クイーンズランド州のスーパーDrakesでも同社の葉物野菜を販売しています。
課題と解決策
垂直農法の事業者は、照明の電気代と冷房・除湿の設備費を多く負担します。米国や欧州では、大型施設を早い段階で建てた企業の経営破綻が続いています。
Stacked Farmは照明・自動化設備・栽培方法を自社で開発しています。同社の照明は市販品より発熱が少なく、空調設備を小さくできます。同社は、創業からの約10年の多くをこの照明の改良に充てたと説明しています。植物科学者と技術者は同じ拠点で働き、設備の製造・組立・試運転・建設も自社で行います。
拡大の進め方にも特徴があります。Tzvetkoff氏はAgFunderNewsの取材に「過去10年間、非常にゆっくり進めてきた」と答えています。同氏は、段階的に規模を上げ、すべてが機能することを確認してから大型施設を建てる必要があると述べています。同社はまずコストの高いオーストラリア市場で事業モデルを実証し、その後に海外へ展開する方針を取りました。
ビジネスモデル
Stacked Farmは農場を自社で所有し、自社で運営します。Tzvetkoff氏は「他社のために農場を建てることはしない」と述べており、設備の外販は行っていません。
販売面では、大型施設の稼働前に販売先を確保します。同氏によると、販売契約の成立には時間がかかるため、先に販売先を固めておく必要があります。同社は米国に3年近く営業チームを置いており、カリフォルニア州のGreat West Produce、ネバダ州のLagudi Fresh Food Groupと長期供給契約を結んでいます。小売流通ではMana Foodsとも取引しています。
資金面では、2022年に5,600万豪ドルを調達しました。SeventyTwo Capitalが主導し、米国のMagnetar Capitalなども出資しています。2026年10月には、米国展開とメルボルンの新施設のために4,500万ドルの資金調達を進めていると報じられました。
今後の計画
オーストラリアでは、メルボルン空港の敷地内で大型施設を建設中です。2025年2月の発表によると、施設の面積は10,000平方メートルで、年間340万キログラムの葉物野菜とハーブを生産する計画です。同社は15人の従業員と25台の自社製ロボットで施設を運営するとしています。初収穫は2027年の予定です。
米国では、2026年10月にネバダ州ラスベガスで研究開発と顧客向けの拠点「Las Vegas Innovation Center」を開設しました。同社はオーストラリアと同じく、ここで運営方法を検証してから大型施設に移ります。
大型の生産施設はカリフォルニア州メニフィー(ロサンゼルス都市圏)に建設し、2026年に着工、2028年に開業する予定です。この施設では、オーストラリアの施設の栽培レシピ、運営システム、生産工程、自動化設備をそのまま再現します。同社がカリフォルニアを選んだ理由のひとつは、同州が米国最大のレタスとハーブの産地であることです。その後は米国で年2施設のペースで開設する計画で、ジョージア州、ペンシルベニア州、テキサス州で用地の確保を進めています。
コメント
Stacked Farmは、手作業のパイロット農場から商業施設の稼働まで約8年をかけました。米国でも、先に小規模な拠点を開き、販売先を確保してから大型施設を建てる順序を取っています。同社は照明を自社で開発して発熱を抑え、空調設備のコストを下げています。
植物工場への投資を検討する法人は、同社の進め方を参考にできます。小規模な施設で栽培と設備の運用を確立し、販売先を決めてから増設する手順です。メルボルンとメニフィーの大型施設が計画どおりに稼働するかで、同社の段階的な拡大策の成果がわかります。
参考URL
- Stacked Farm outlines the long game for vertical farming ahead of US expansion(AgFunderNews) リンク
- Our history(Stacked Farm公式) リンク
- Stacked Farm公式サイト リンク
- Australia: Stacked Farm to build world’s largest vertical farm at Melbourne Airport(Vertical Farm Daily) リンク
- Australia: Stacked Farm completes $56M funding round(Vertical Farm Daily) リンク
- Stacked Farm achieves full production milestone(iGrow News) リンク
- Stacked Farm raising $45m to expand its US base as agtech gears up to open giant Melbourne facility(Business News Australia) リンク