ベルギーのSoil Capitalは、再生農業に取り組む農家へ環境成果に応じた報酬を支払うプログラムを運営しています。2026年10月、ペットフード大手のRoyal Caninと原料メーカーのRoquetteが、Soil Capitalを介してフランスの小麦調達先の農場に共同出資する仕組みを発表しました。
会社基本情報
- 社名: Soil Capital
- 本拠地: ベルギー
- 設立: 2013年
- CEO兼共同創業者: Chuck de Liedekerke氏
- 認証: B Corp認証取得
- 資金調達: 2024年9月にシリーズBで1,500万ユーロを調達。リード投資家はTrill Impact Venturesで、Ring Capital、Sandwater、ベルギー連邦投資公社SFPIM、Santander Alternative Investmentsなどが参加しました
事業概要
Soil Capitalは農学コンサルティング会社として事業を始め、10年以上にわたり農家と一緒に土壌の改善に取り組んできました。2019年には、再生農業へ転換した農家に報酬を支払うカーボン証書プログラムを立ち上げています。
公式サイトによると、プログラムには1,600戸を超える農家が参加しています。対象国はフランス、ベルギー、英国、アイルランドの4か国です。主な対象作物は小麦、大麦、ばれいしょ、なたねです。
国別に見ると、フランスでは1,278戸の農家が289,751haを登録しています。英国は261戸で67,122ha、ベルギーは186戸で23,073haです。
課題と解決策
再生農業へ転換する農家は、新しい機械の導入、カバークロップの播種、輪作体系の組み直しに費用をかけます。これまで農家はこの費用を自分で負担するか、食品企業のインセッティングプログラムに参加して支援を受けてきました。AgFunderNewsによると、プログラムごとに支援の金額や条件にばらつきがありました。
今回の提携では、Royal CaninとRoquetteが同じ小麦産地の農場に共同で出資します。Royal Caninはペットフードの原料としてRoquetteから小麦由来の原料を購入しています。両社は自社の調達先にあたる60以上の農場、合計4,700ha超の小麦産地を対象に、転換費用をサプライチェーン全体で分担します。
Soil Capitalは農場での測定、データ収集、検証を担当し、農家に農学面の助言も行います。農場データはTÜV RheinlandがISO 14064-2に基づいて検証し、毎年独立監査を受けます。
Royal Caninは経済的配分法、Roquetteはでん粉業界で一般的なマスバランス配分法と、両社は異なる方法で炭素を計上しています。両社は同じ農家データを共有し、それぞれの方法で計上しながら二重計上を避けます。
ビジネスモデル
Soil Capitalは毎年、参加農場の環境指標と再生農業の実践状況を評価します。評価では炭素の測定を中心に改善量を数値化し、CO2換算1トンの削減または除去を1単位として証書を発行します。食品企業はこの証書を購入し、自社のスコープ3排出量の削減に計上します。農家は証書の価値の70%を直接受け取ります。
公式サイトに掲載された農家への支払額は、フランスで約1,075万ユーロ、英国で約553万ユーロ、ベルギーで約402万ユーロです。
取引先にはRoyal Canin、Roquetteのほか、Kellogg’s、Heineken UK、Nestlé、PepsiCo、Cargill、Boortmalt、Cefetraなどが名を連ねます。Kellogg’sとは英国の小麦約4,000haを対象に5年間の提携を結んでいます。
今後の計画
Royal CaninとRoquetteは、同じ共同出資モデルを他の企業とも組めるかどうか検討しています。両社はこの提携を、EUの炭素除去・カーボンファーミング認証枠組み(CRCF)や企業サステナビリティ報告指令(CSRD)への対応準備にも位置付けています。
Soil Capitalは2024年の資金調達時に、欧州内外への展開を進める方針を示しました。温室効果ガスに加え、土壌の健全性、水質、生物多様性、農場経営の社会経済面も追跡する計画です。
コメント
RoquetteのサステナビリティマネージャーであるMagali Amouroux氏は「共同投資モデルは、再生農業を大規模に普及させるうえで最も効果的な方法だ」と述べています。Royal Caninで持続可能な調達を統括するLuc Beerens氏は、外部の指針に沿った堅牢なMRVの仕組みを持つ第三者が必要だと話しています。
日本でも、食品メーカーや実需者と契約栽培を結ぶ農業法人は多くあります。取引先の複数企業が同じ産地の転換費用を分け合う方式は、環境配慮型の栽培へ切り替える際の資金確保を実需者と交渉する材料になります。