生産から消費までを都市部で完結。パリ近郊で葉菜をコンテナ栽培する Agricool の戦略とは。

都市部への人口集中に伴い、作物の生産から消費までを都市で完結させようとするビジネスが出現しています。本記事で紹介する Agricool は、パリ周辺で葉菜などを生産し、パリおよびその近郊へ出荷する企業。再生資材でできた栽培コンテナを使い、作物の生育に適した環境を再現して収量を高めています。

Agricool 基本情報

住所:FR 93120 France La Courneuve 139 rue rateau

CEO:Guillaume Fourdinier

設立:2015年

従業員数:51〜200人

都市部での施設園芸を実現するフランスの企業

Agricool は、パリ周辺の都市部で葉物野菜とイチゴを生産・販売する企業です。栽培環境を整えたコンテナの中で作物を生産することで、狭い面積でも高い収量を実現しています。コンテナ栽培により、農薬や輸入資材を使うことなく、高い品質と安定した収量得ることが可能です。

2021年現在、Agricool は以下の5品目を生産しており、一週間あたり7000パックの作物を約70店舗へ出荷しています。

  • レタス
  • パクチー 
  • バジル 
  • パセリ
  • イチゴ

Agricool が目指すのは持続可能な都市農業

都市部への人口集中

Agricool が都市部で野菜を作る背景には、都市部への人口集中と農村部の人口減少があります。農村部の人口減少に伴い農地も減っており、フランスでは農家が年間200件減少し、1秒間に26㎡の農地が消失しているのが現状です。

Agricool では、都市部に集中する人口に食料を持続的に供給するには、都市での作物生産が必要だと考えています。さらにCOVID-19の流行により、パリでは食のローカル志向の高まりが現実のものとなりました。Agricool はパリ周辺で作物を生産することで、ローカルな旬の作物を志向する消費者の需要に応えようとしています。

資源消費と食品ロスの削減

Agricool のビジネススタイルは、農業における資源消費を抑える意義もあります。作物の生産から消費までを都市で完結させることで、生産・輸送にかかるエネルギーの大幅な削減が可能です。さらに、環境制御した栽培コンテナを使う Agricool の手法であれば、光や水を従来より節約できます。たとえば水の消費量は、従来の露地栽培で同じ量の作物を生産する場合に比べ、90%削減可能です。なお、コンテナ本体は再生資材で作られており、消費する電力も再生可能エネルギーを主体としています。

都市での農業生産は、食品ロスの削減にも貢献します。フランスでは年間13億トンの食料が物流段階で廃棄されていますが、生産から消費まで都市で完結するスタイルであれば、長時間の輸送による傷みや劣化が減り、食品ロスを削減できます。

都市農業を実現する Agricool の技術と販路

コア技術は栽培コンテナの環境制御

Agricool では、環境制御したコンテナの中で作物を栽培します。コンテナ内は光量、気温、灌漑水量、空気の質などを微調整でき、作物にとって生育しやすい環境を再現可能です。

安定した環境で、害虫や雑草の影響を受けずに栽培されるため、面積あたりの生産性は露地栽培を大きく凌ぎます。Agricool の栽培コンテナを使えば、32㎡の面積で、露地栽培4000㎡に匹敵する収量が得られます。

栽培施設は、ラ・クールヌーヴやポルト・ド・オルレアンにあります。いずれもパリ中心部街から15km程度の距離であり、輸送コストを抑えて鮮度の高い作物を消費者へ提供できます。

販路は大手小売店

生産された作物はパック詰めされて小売店に出荷されます。Agricool のメインの販路となっているのは、フランスの大手小売店であるモノプリ。食料品、衣服、化粧品などを扱う企業です。パリおよびその周辺にあるモノプリのスーパ20店舗以上で、Agricool の製品を購入できます。

まとめ

Agricool は環境制御したコンテナの中で葉菜やイチゴを栽培し、都市での農業生産を実現しています。最小限の資材投入で生産でき、小売店まで速やかに供給できるので、環境負荷の低減や食品ロスの削減が期待できるでしょう。

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