【ロボット受粉機】温室栽培を効率化する自律型ロボットを開発するArugga社について解説

Aruggaの事業概要:温室野菜の栽培を効率化する自律型ロボットの開発

Arugga社は、温室内の植物を監視し扱うことのできる自律型ロボットを提供しています。温室野菜の栽培をデータドリブンかつ自動化された効率的な分野への変えていくことを目標としている農業スタートアップ企業です。2017年にイスラエルを拠点として設立され、従業員数は10名以下と推定されます。

世界中で果物や野菜の生産者が労働力不足に悩む現在、Arugga社のロボットソリューションによって労働力不足の緩和と生産者の競争力を高めることをミッションとしています。また、最終的には化学物質の使用と農作物の病気の蔓延を減らし、より健康で安全な地球環境の実現に貢献したいとArugga社は考えています。

ロボット受粉機「TRATA」

Arugga社では、温室栽培トマトの大規模出荷に対応するためのロボット受粉機「TRATA」を発表しています。受粉作業は人の手によって行われているものの、世界各国で労働力不足の問題に直面しており、その課題を解決するのがロボット受粉機です。

現在人の手に代わる受粉方法として最も広く利用されているのはマルハナバチによる受粉ですが、マルハナバチによる受粉を成功させるためには特定の環境条件が必要です。TRATAはマルハナバチの利用に必要な環境条件や農薬の影響の課題も解決し、ウイルスの蔓延を防ぐこともできます。

テクノロジー:マルハナバチの受粉を再現したAIベースのロボット

TRATAの受粉テクノロジーはマルハナバチの受粉を再現しています。イスラエルの商業用温室でテストされ、結果としてミツバチと同等またはそれ以上の確率で受粉に成功しました。

カメラとAIベースのコンピュータビジョンを備えており、受粉できる状態の花を認識します。次にその花との距離を測定し、気圧メカニズムが採用された空気パルスによって花粉を吹きかけます。受粉の様子が次の動画で紹介されています。

ロボット受粉機の映像(vimeo):https://vimeo.com/436373735

まず栽培施設内のレールの上をロボットが移動します

ロボットの側面には複数のカメラと受粉させるためのエアノズルがついています。トマトの受粉は花房を揺らすだけで十分なので、空気を吹きかけて花房を揺らすことで受粉をさせます。

移動しながらロボットの側面のカメラが作物の映像を取得します

カメラから得られた画像を使って、トマトの花を検出し、空気を吹きかけて受粉をさせます。現在は全体の97%の花を見つけることができます。

今後の計画:害虫・病気の検出、非接触剪定、収穫量予測の機能を開発

現在Arugga社はオーストラリア、ベルギー、カナダの生産者とチームを組み、ロボット受粉機の商用化に向けて取り組んでいます。2020年末までに発売予定です。

また、今後は

  • 植物のモニタリングによる害虫や作物の病気の検出と治療、
  • 現在でも人の手によって行われる剪定に対する非接触剪定技術(特許出願中)、
  • 温室の作物数と重量監視システムによる収穫量の予測、

などのテクノロジー開発を予定しています。

コメント

人やマルハナバチによって行われてきた受粉作業、そして非接触剪定といった、現在まで人の手で行われてきた作業を機械化することで、労働力不足やハチによる受粉環境管理の問題を解決するだけでなく、ウイルスの蔓延を防ぐなどプラスのメリットがあります。Arugga社が提供するような温室栽培技術の発展により、より効率的な栽培が実現され、季節や気候条件に左右されにくい安定的な作物供給が実現されることを期待します。

参考サイト