人の手を介さずにマッシュルームを栽培・収穫する「Meshek76」

https://www.meshek76.com/

今回は、Meshek76社のマッシュルーム栽培ロボットについて紹介します。従来のマッシュルーム栽培は、人の手により、環境制御から収穫まで行いますが、Meshek76社の新技術により、品質の高いマッシュルームを、効率的に栽培ができるようになる可能性があります。

Meshek76社の概要

Meshek76社は、イスラエル・Gorenで2017年に設立された企業で、Tal Hatan氏がCEOを務める、数十名規模の新興企業です。人工知能技術(AI)を利用した、食糧生産の効率化を目指しています(1、2)。

Meshek76社の事業

Meshek76社は、人工知能技術を利用し、自律的に(人間の管理なしに)、マッシュルームの生育から収穫までを行うことのできるロボットの開発を行っています。

日本におけるキノコ類の栽培法は、大きく分けて原木栽培と菌床栽培の2手法があります。なお、菌床栽培については、増産や省力化のため、培地の詰め込みから培養までを別施設で行う、培養センター方式による分業が行われていますが(3)、いまだ人の手は必要です。

また、一般のキノコ類の栽培では、菌床の温度・湿度や二酸化炭素濃度の調節が肝心です。さらに、キノコ類は急激に成長するため、収穫のタイミングが、商品の品質への決め手となります。

Meshek76社の、マッシュルーム栽培ロボットは、人工知能技術により、人の手を介さずに、マッシュルームの成長から収穫まで、自律制御で管理を行います。もし、収穫適期と判断されたマッシュルームがあれば、常時収穫するため、最も品質のよいタイミングで、収穫することができます。また、人の手が入らないことから、常時無菌状態を保つことも容易です。

さらに、マッシュルーム栽培におけるコストのうち、人件費は約40%にも達するといわれています。そのため、人件費の削減も可能になります。このことから、Meshek76社のキノコ栽培ロボットは、質の良いマッシュルームを低コストで生産できる可能性を秘めています。

こちらの公式動画(https://youtu.be/QCTqXOJkedg)で栽培からトラックの積み込みまでが自動でされるイメージがみられるようになっています。

栽培はこのように棚の上で行われます。各種センサーを使ってリアルタイムに環境や作物が分析されています。

収穫をアームが行い、収穫カゴに納めます。

収穫されたマッシュルームはベルトコンベアで移動し

自動で包装する機械に入れられ、さらに運搬ロボットで運ばれます。

トラックに積み込みます。ここまで人の手が入っていません。全て自動です。

現在までに、実験用マッシュルーム栽培施設を設立し、実際にこのロボットを用い、栽培試験を行っています(2019年第4四半期)。また、ユーザーが使用するアプリケーション等の開発を行いました(2020年第1四半期)。今後は、人工知能が収集したデータを蓄積するための、大規模データセンターの設立(2020年第3四半期)、一般市場向けの製品化に向けた、試作機の製作を目指しています(2020年第4四半期)。

コメント

農作物栽培は、いまだ人の手や感覚に頼る側面が多く、このことはキノコも例外ではありません。そのため、栽培過程で人手不足に陥ることがよくあります。日本におけるキノコ栽培大手であるホクトでは、栽培の一部工程において、人工知能を利用したロボットを導入したことで、労働力の削減に成功しました(4)。このようなことから、Meshek76社のロボットを含め、キノコ栽培における、人工知能を利用したロボットの導入は、より一層進むものと考えられます。

さらに、マッシュルームの収量は、栽培者によってかなり差が大きく、1㎡あたり、6~16㎏(5)と、幅が大きいことが知られていますが、今回紹介したような、人工知能を利用した栽培ロボットでは、最大限の収量を得ることができるよう、環境制御を行うことで、食糧の安定供給にも寄与できる可能性を秘めています。

参考URL・文献