独自のエンドエフェクタを使ったカラーピーマンの自動収穫ロボットの研究

今回は、カラーピーマンの自動収穫ロボットについて紹介します。果菜類の栽培は一般に、収穫期が長いことから、総作業時間に対する収穫・調整の時間の割合が大きいことが問題となっています。今回紹介する、カラーピーマンの自動収穫ロボットは、収穫・調整の軽労化が達成できる可能性を秘めています。 

カラーピーマン収穫の現状

果菜類における収穫・調整に要する時間は、一般に長く、品目別経営統計(ピーマン)によれば、10a当たりの総労働時間は1162.34時間であるのに対し、収穫作業に495.01時間、調製作業に75.86時間と、総作業時間の49%に達します(1)。このことから、収穫・調整に要する時間を短縮できれば、農家1人当たりの耕作面積の拡大を望める可能性があります。

そこで今回は、カラーピーマンの自動収穫ロボット開発の最前線と、残される課題について紹介します。 

カラーピーマンに着目した、新たな収穫ロボット

今回は、スウェーデン・ウメオ大学の研究チームが中心となり開発した、カラーピーマンの新たな収穫ロボットを紹介します。 

この収穫ロボットのエンドエフェクタ部は様々な工夫がなされています。

まず、茎を切断するナイフ部は、茎を切断する際、初めて接触する仕組みとなっており、果実を傷つけないような工夫がなされています。

また、切断された果実は、表面を軟質プラスチックで被覆された、果実捕捉システムによりキャッチされることで、収穫が完了します。

このことから、動作中にナイフが果実を損傷させることや、エンドエフェクタ部が果実に力を加えることがないため、果実への損傷が最小限に抑えられているのが特徴です。

一方、カラーピーマンの収穫において、最大の問題となるのは

“果実が葉などに遮蔽されてしまうこと”です。

このことに対し、実際の収穫実験では

  • 3本仕立てと、主枝1本仕立て
  • 摘葉を行わない(通常)と、果実認識向上のため摘葉した区(次の図)
  • 品種間の違い(CV. SardineroとCV. Gialte)

の大きく3つの条件について検討されています。

摘葉を行って(右)収穫成功率を高める

その結果、1果実あたりの収穫所要時間は24秒、果実を切断できた割合(()内は、果実を切断後キャッチできた割合)は、慣行の3本仕立てでは24%(19%)であったのに対し、主枝1本仕立てでは、38%(30%)と向上しました。さらに、適宜摘葉を行うことにより、70%(61%)まで成功率を向上させることができました。

また、品種間でも収穫成功率に違いはあり、1本仕立てで、適宜摘葉を行った条件では、CV. Gialteでは91%(81%)であったのに対し、CV. Sardineroでは51%(43%)でした。

一方、問題点もあり、果実が側枝や葉にからまってしまったり、捕捉装置部で跳ねてしまうことことで、果実の回収に至らなかった例があったため、今後の改良すべき点であると結論づけられていました。 

コメント

本研究で、著者らは、仕立て方の変更や適宜摘葉することにより、実用可能な程度まで、収穫成功率を向上させることを試みました。一部、エンドエフェクタ部の改良は必要ですが、仕立て方や品種により8~9割程度の果実を収穫できていることから、十分に実用化可能な段階まで改良されているように考えられました。

一方、気になる点もあり、

  • 品種の違いが収穫成功率に及ぼす影響については、明確な結論が出ていないことに加え、多様な色が存在するカラーピーマンにどのように対応していくか?
  • 適宜摘葉を、どの程度行えばよいのか、そしてその作業の負担はどの程度なのか?(また、摘葉の問題点として、カラーピーマンの栽培では日焼け果が発生しやすいことも知られており(2)、過度な摘葉は避ける必要があるかもしれない)

があげられる。

今後の実用化に向け、自動収穫に適した品種の選定や、新たな栽培管理法(整枝・摘葉を中心に)の開発を行うことで、実際の栽培に導入されることを期待したい技術です。

今回紹介した論文

Boaz Arad, Jos Balendonck, Ruud Barth, Ohad Ben-Shahar, Yael Edan, Thomas Hellström, Jochen Hemming, Polina Kurtser, Ola Ringdahl, Toon Tielen and Bart van Tuijl. Development of sweet pepper harvesting robot. Journal of Field Robotics 37: 1027-1039. 2020. CC-BY 4.0.

(今回記事内の“カラーピーマンに着目した、新たな収穫ロボット”およびその他紹介した図表は、上記論文のデータ等を一部抜粋・改変したものを記載しています。)

論文オープンアクセスURL: https://doi.org/10.1002/rob.21937

同研究が紹介されているニュース

Sweeper robot shows promising results – Hortidaily

https://www.hortidaily.com/article/9185196/sweeper-robot-shows-promising-results/

その他参考文献等