農林水産省「飼料をめぐる情勢」によると、令和6年度(概算)の純国内産飼料自給率は26%で、前年度比1ポイントの低下となりました。食料自給率の議論は米や野菜に注目が集まりがちですが、畜産物を支える飼料こそ最も輸入依存が深い領域です。牛肉・豚肉・鶏卵・牛乳が国内で生産されていても、その「飼料」の大半は海を渡ってきている——この構造を数字で押さえることが、これからの畜産経営のリスク管理に直結します。
飼料自給率は昭和40年度の55%から半減した
純国内産飼料自給率は、昭和40年度に55%あったものが、令和6年度には26%まで低下しました。約60年で半分以下になった計算です。この長期トレンドは、日本の畜産が拡大する一方で、その飼料基盤が国内ではなく輸入に置き換わってきた過程をそのまま映しています。

畜産の規模拡大・効率化が進むほど、安定的・大量に供給できる輸入濃厚飼料への依存が強まりました。国産の粗飼料だけで現在の畜産規模を支えることは現実的に難しく、自給率の低下は個々の経営判断の積み重ねというより、産業構造そのものの帰結といえます。同じく長期低下が続く食料自給率の議論を、飼料という土台から捉え直す視点が求められています。
粗飼料80%・濃厚飼料13%という大きな差
飼料自給率を中身で分けると、構造がより鮮明になります。TDN(可消化養分総量)換算で、粗飼料の自給率は80%と高い一方、濃厚飼料の自給率は13%にとどまります。

粗飼料は牧草や稲わらなど、国内の農地・草地で確保しやすい飼料です。これに対し濃厚飼料は、エネルギー源となるとうもろこしなどの穀物が中心で、その大半を輸入に頼っています。畜産物のなかでも、配合飼料を多く使う養豚・養鶏・酪農・肥育牛ほど、この濃厚飼料13%という低さの影響を強く受けます。「国産畜産物」であっても、コスト構造の根幹は国際穀物市場とつながっているのです。
飼料用とうもろこし輸入1,210万トンが意味するもの
濃厚飼料の輸入依存を象徴するのが、飼料用とうもろこしの輸入量です。年間で約1,210万トンに達します。これだけの量を毎年安定して海外から調達し続けることが、国内畜産の前提になっています。
この構造は、農家経営に二つのリスクをもたらします。第一に価格リスクです。為替や国際穀物相場が変動すれば、配合飼料価格に直結し、生産コストを押し上げます。第二に供給リスクです。輸出国の不作、物流の混乱、輸出規制といった要因が重なれば、量そのものの確保が揺らぎます。畜産は飼料が止まれば成り立たない産業であるため、調達先の偏りはそのまま経営の脆弱性になります。
農家・農業法人にとっての含意は明確です。飼料コストを「外部から与えられる前提」とせず、国産飼料の活用余地、自家産粗飼料の比率向上、地域での飼料生産連携といった選択肢を、経営戦略の中に位置づける必要があります。担い手が減り続けるなかで(参考: 日本の農業従事者数)、限られた人手でいかに飼料基盤を確保するかは、畜産経営の持続性を左右する論点です。自給率26%という数字は、危機を煽るための数字ではなく、自らの経営のどこが外部に握られているかを点検するための出発点として読むべきものです。
データの引用について
本記事で用いた数値は、農林水産省が公表する「飼料をめぐる情勢」および「食料需給表」に基づく公的統計です。これらの統計データは、出典を明記すれば自由に引用・利用が可能です(CC BY 4.0)。本記事のグラフを利用する際は、出典として農林水産省および本記事のURLを併記してください。