トマトの糖度選別とは
トマトの糖度選別とは、果実を切ったり壊したりせずに内部の糖度(甘さ)を測定し、その数値に基づいて等級分けする仕組みのことです。外観や重さが同じトマトでも、中身の甘さには差があります。糖度選別を使えば「見た目は同じでも中身の甘さで分ける」ことができ、高糖度トマトのような付加価値の高い区分を安定して出荷できます。
本記事は トマト選果機とは の解説のうち、糖度の非破壊選別にしぼって掘り下げるものです。
近赤外分光による非破壊計測の原理
糖度選別の核になる技術が、近赤外分光法(NIR)です。近赤外光を果実に照射すると、光は果実の内部を通り抜ける過程で、糖などの成分によって特定の波長が吸収されます。透過または反射してきた光のスペクトル(波長ごとの強さの分布)を分析することで、果実を切らずに内部の糖度・酸度・水分などを推定できます。
スペクトルから糖度の数値を導くには、化学計量学的なモデルが使われます。代表的なのが部分最小二乗回帰(PLS回帰)で、Savitzky-Golay平滑化やSNV(標準正規変量変換)といった前処理と組み合わせて予測モデルを構築します。研究では、トマトの糖度(可溶性固形分)を相関係数0.9前後、誤差0.1〜0.6%Brix程度の精度で予測した報告があり、非破壊計測でも実用十分な精度に達しつつあることがわかります。
透過型と反射型、そしてハイパースペクトル
近赤外計測には、果実を光が通り抜ける成分を測る「透過型」と、表面付近で跳ね返る光を測る「反射型」があります。透過型は果実全体の内部情報を捉えやすく、糖度選別ではしばしば用いられます。トマトのように果肉に水分が多い果実では、可視・近赤外(Vis-NIR)の全透過光を用いて可溶性固形分を検出する手法も研究されています。
さらに進んだアプローチが、波長ごとの画像を取得するハイパースペクトルイメージングです。インタクト(無傷)なトマトに対し、ハイパースペクトル画像から水分・pH・可溶性固形分を同時に推定する研究も行われており、点ではなく面で内部品質を可視化する方向へ発展しています。
糖度選別を実用化する際の注意点
非破壊の糖度予測モデルは万能ではありません。たとえば、トマトの貯蔵期間によってスペクトルと糖度の関係が変化し、ある時期に作ったモデルが別の時期の果実でそのまま使えるとは限らないことが報告されています。品種・栽培環境・収穫後の経過時間などの条件が変われば、モデルの再校正が必要になります。栽培段階で糖度そのものを高める工夫(水分管理や バイオスティミュラントの活用 など)と、出口での糖度選別を両輪で考えることが重要です。
糖度選別がもたらす価値
糖度選別の最大の価値は、内部品質という「見えない価値」を数値で証明し、それを価格に反映できることです。高糖度トマトをブランドとして安定出荷できれば、同じ畑から採れたトマトでも収益性を高められます。外観選別 や 重量選別 が「規格を揃える」技術だとすれば、糖度選別は「価値を見つけて引き上げる」技術だといえます。栽培から ポストハーベスト までを一貫して最適化するうえで、糖度の非破壊計測はこれからの選果機の中心的な機能になっていくでしょう。
参考URL
- Detection of soluble solids content in tomatoes using full transmission Vis-NIR spectroscopy and combinatorial algorithms(NCBI PMC) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11586169/
- Nondestructive Estimation of Moisture Content, pH and Soluble Solid Contents in Intact Tomatoes Using Hyperspectral Imaging(ResearchGate) https://www.researchgate.net/publication/312584192
- Automated and non-destructive estimation of soluble solid content of tomatoes on the plant under variable light conditions(ScienceDirect) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1537511024000813
- Influence of tomato storage period on the generalization of a near-infrared spectroscopy-based brix prediction model(ScienceDirect) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0889157525006441