事業概要
インテグリカルチャー社は、2015年に日本の東京を拠点に設立された細胞培養肉を生産するベンチャー企業です。
コスメから食材まで、様々な利用範囲を持った汎用大規模細胞培養技術CulNet Systemを展開しており、体内に似た環境を構築することで細胞培養コストを大きく低減させることに成功しています。
細胞培養肉の資源効率は35%と、牛肉の3%と比べて非常に高効率で、環境への不可も98%削減できると試算されています。また、インテグリカルチャー社のCulNet Systemでは、肉1kgあたり200円で作れる試算となっており、持続可能かつ安定した経済的な食糧生産の実現を目指しています。
ビジネスモデル
インテグリカルチャー社では「Uni-CulNet(ユニカルネット)」として、CulNet Systemを基本インフラとした細胞培養が国内外に広く普及することを目指す構想を掲げており、「CulNetパイプライン」、「CulNetコンソーシアム」の2つの細胞培養ソリューションを提供しています。
CulNetパイプラインは、CulNet Systemを用いて個別企業に提供する細胞農業商用化ソリューションです。SGDsの達成や多様化する価値感に対応した、新たな動物由来製品の生産方法として個別企業向けにCulNet Systemの提供を行っています。
CulNetコンソーシアムは、2021年の正式発足を目標としており、培養液、培養機器、生産技術、品質管理、製品加工の分野においてCulNet Systemの共同技術開発を行う企業を募集しています。
また2020年5月の資金調達時には、資金の使途として、コスメ事業、培養肉事業、CulNetプラットフォーム事業の3つを掲げています。
テクノロジー:細胞培養の低コスト化に成功したCulNet System
インテグリカルチャー社のCulNet Systemは、動物体内と同様の環境を構築することで、コスメとして利用可能なエキス成分や食肉に用いる細胞成分など、様々な利用範囲を持つ成分を安価で生産できる、細胞培養プラットフォーム技術です。
体内に似た環境を構築することで、高コスト原因であった成長因子の外部添加が不要となり、細胞培養コストを大きく低減させています。細胞にとっての良い環境は身体の中に自然と備わっており、体内では臓器間相互作用が構築されているため、効率よく安価に細胞の成長を促すことができます。
例えば2013年にオランダで作られた培養肉パテには200gあたり3000万円がかかりましたが、CulNet Systemでは、肉1kgあたり200円というコストを実現できる試算です。体内システムと似たシステムを構築することで、一般的な培養法では突破できなかった大幅なコストダウンを可能にしています。
また、インテグリカルチャー社では体内の細胞が作る有用物質と同等のものを作り出し、人間が歳を取ることによって失っていく有用物質を提供することで、美容や健康に対しても解決策を提供できるよう研究開発を進めています。
今後の計画
インテグリカルチャー社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業(旧:研究開発型ベンチャー支援事業)/Product Commercialization Alliance(PCA)」に係る公募において助成対象事業者に選定され、約2.4億円の助成を受けることが決定しています。
この助成金を基に、コンソーシアムとの開発によって自動化や品質管理技術を組み込むことでCulNet Systemを大規模化し、生産拠点として整備します。培養フォアグラや培養肉製品を2021年から2023年にかけて順次上市する予定です。
コメント
日本においてもSDGs(持続可能な開発目標)に注目が集まり多くの企業が取り組む中、環境に与える影響が少ない肉やコスメ製品の新しい生産方法としてインテグリカルチャー社によるCulNet Systemの培養生産技術は今後さらに注目されることが期待されます。
参考URL
- インテグリカルチャー https://integriculture.jp/
- 時事ドットコムニュース | 細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー、2020年度NEDO-PCAに採択され、約2.4億円の助成対象事業者に決定 https://www.jiji.com/jc/article?k=000000014.000034252&g=prt
- BRIDGE | 低コスト細胞培養技術「CulNet System」のインテグリカルチャー、シリーズAで8億円を調達 https://thebridge.jp/2020/06/integriculture-series-a-8m-fundraised