書籍紹介「図解でよくわかる植物工場のきほん」

千葉大学名誉教授・農学博士、NPO法人植物工場研究会理事長である古在豊樹氏監修の植物工場本を読んだので紹介します。植物工場の設備から経営までを網羅しながら、実践的なポイントも抑えた優れた本です。”きほん”を抑えたい人にはぴったりの本でしょう。

こんな人におすすめ

  • 植物工場に興味を持ったばかり
  • 水耕栽培から高度な工場との違いが知りたくなった人
  • 近年採算が取れ始めた植物工場の事例が知りたい

目次

町にとけ込む植物工場
植物工場とはどういうものか
人工光型植物工場とは
太陽光型植物工場とは
植物生理の基本を知る
植物工場の環境制御(光(照明)
CO2/空調管理
培養液の管理)
植物工場の魅力と可能性
植物工場ビジネスの先進例
都市型農業への新展開
植物工場は定着するか

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私は家庭で水耕栽培をやっており、溶液栽培については多少の知識があるつもりで本書を手に取りました。植物工場といえば温度管理ができること、ピンクのLEDが光っているというようなイメージがあり、逆にいえばそれぐらいの物だとと思っていました。しかし閉鎖環境での栽培がそれほど単純なはずはなく、本書では想像を遥かに進んだ環境制御や課題や取り組みを知ることができました。

例えば気流管理です。植物は光合成をする際に葉で二酸化炭素を取り込む必要がありますが、気流がないと葉の周りの二酸化炭素が足りなくなるため生育が悪くなります。そのためある程度の気流を意図的に発生させる必要があります。

しかし、闇雲に送風すればいいかというとそうではないところが難しいところで、過剰な送風は植物を乾燥させてしまったり、乾燥の危険を感じた植物が光合成を減らす(気孔が閉じてしまう)といったことを招きます。

他にも植物を育成のための照明は一斉に点灯・消灯しない方がいいという話も面白かったです。素朴に考えたら夜電気を全部消して、朝電気を全部つけると言うことをしてしまいそうでがこれは効率が悪いのです。理由は2つあって、1つは、最大電力の問題です。昼も夜もない閉鎖型の植物工場の場合は半分つけて半分消しておけば最大電力は半分ですみます。もう1つは湿度の問題です。照明を消すと照明からの発熱がなくなり、冷房を弱めることになります。これにより冷房が除湿していた分がなくなり、湿度が過剰に上がってしまい植物の生育によくないのです。

本書は2014年の書籍ですので事例については多少古いですが様々なバリエーションでバランスよく紹介されています。国内の植物工場は、効率化が進んだり、小さい葉物が好まれるようになったりするなど消費者の嗜好の変化もあって採算が取れるようになってきているようで、最近もカレーでおなじみの壱番屋が植物工場を買収したり、農業生産法人のアグテコ(滋賀県野洲市)が国内最大の日産4万株の工場を設立するなど盛り上がってきています。

植物工場は今後ますます増えるであろうと思われます。本書は全体をざっくり知るのにとてもおすすめの1冊です。