炭酸ガス発生機(CO2発生装置)とは?仕組み・効果・主要メーカー6社の特徴を比較

炭酸ガス発生機(CO2施用機)とは

炭酸ガス発生機(CO2発生機、CO2施用機)は、施設園芸のハウス内に二酸化炭素を補給して光合成を促進し、収量と品質を高めるための設備です。トマト、イチゴ、キュウリ、パプリカといった施設栽培の主要作物で広く利用されており、オランダの大規模温室では標準装備となっています。

大気中のCO2濃度は約420ppm前後ですが、密閉されたハウス内では作物の光合成によって日中に200〜300ppmまで低下することがあります。植物は気孔からCO2を取り込めなくなった瞬間に光合成が制限されるため、密閉度が高いハウスほど積極的な施用が必要になります。

CO2施用の農学的根拠と収量効果

光合成は光・水・CO2を原料とする反応であり、C3植物であるトマトやイチゴでは800〜1,000ppm付近で光合成速度がほぼ飽和することが知られています。MDPI Sustainabilityに掲載された施設園芸のCO2施用レビューでは、450〜1,200ppmの濃度域でトマトの収量が7〜125%増加した試験例が紹介されています。

農研機構が実施した大規模実証では、温度・湿度・CO2濃度の総合的な環境制御によって、トマトの単位面積収量を53t/10a(2017年)から66t/10a(2019年)まで引き上げた事例が報告されています。CO2施用は単独で効くというよりも、補光・温度管理・潅水管理と組み合わせることで最大の効果を発揮します。

収量だけでなく品質面でも、果実中のグルコース・フルクトースなど還元糖の増加が報告されており、トマトの食味改善にも寄与することがPMC掲載の総説で示されています。

CO2発生機の3つの方式

燃焼式(灯油・LPG・天然ガス)

灯油やプロパンガスを燃焼させて発生する二酸化炭素を利用する方式です。本体価格が比較的安く、燃料コストも低いため、国内の中小規模ハウスで最も普及している方式です。一方で、燃焼時に発生する熱がハウス内に放出されるため、夏季や昼間の高温時には使いにくいという制約があります。

液化炭酸ガス式(LCO2)

液化炭酸ガスのボンベやローリーから直接CO2を供給する方式です。熱を発生せず純度の高いCO2を供給できるため、夏季や換気中の窓開け時にも使え、施用の自由度が高いことが特長です。脱炭素の観点からも注目されており、オランダの大規模温室ではこの方式が主流となっています。ランニングコストは燃焼式より高くなる傾向があります。

排ガス利用式

暖房ボイラーの排ガスからCO2を回収・精製してハウスに供給する方式です。暖房と施用を兼ねるためエネルギー効率に優れますが、NOxやSO2など有害ガスの除去設備が必要で、設備規模が大きくなります。オランダのコジェネ温室ではこの方式が標準で、Priva・Hoogendoorn・Ridderなどの環境制御コンピュータと連動して運用されています。

主要メーカーと製品

高圧ガス工業株式会社(炭酸マスター)

大阪に本社を置く産業ガス専門メーカーで、農業用CO2制御装置「炭酸マスター」を展開しています。最大8個のCO2センサと4系統のガス制御を1台で扱えるのが特長で、4棟のハウスを個別制御することも可能です。燃焼式CO2施用機への接点出力にも対応しているため、既存の灯油焚き機を残したまま液化炭酸ガス施用へ段階的に切り替えるロードマップが描けます。スマホ・ブラウザによる遠隔監視と設定変更にも対応しています。

ネポン株式会社(グロウエア/CG4型)

農業用暖房機の老舗メーカーで、灯油焚き・LPG焚きの光合成促進機「グロウエア(CG4型シリーズ)」をラインアップしています。たとえばCG-254S1は炭酸ガス発生量4.29kg/h、灯油消費量1.7L/h、供給面積530〜860m²で、中小規模ハウスでの導入実績が豊富です。燃料単価あたりのCO2発生量が多く、ランニングコストを抑えやすい点が評価されています。

株式会社誠和(真呼吸/プロファインダー)

栃木県を拠点とする施設園芸資材メーカーで、灯油燃焼式ながら冷却して低温CO2を局所施用できるシステム「真呼吸」を提供しています。穴の開いた小径ダクトを作物群落内に通すことで、株元付近でCO2濃度を高め、夏季を含む周年運用を可能にしています。また環境測定器「プロファインダー」で温度・湿度・CO2濃度・日射量を1分間隔でモニタリングし、施用量を最適化する設計です。

東邦商会

農業用ハウス資材を幅広く扱う商社で、燃焼式の炭酸ガス発生器を取り扱っています。中小規模ハウス向けの導入しやすい価格帯が中心で、地域の販売店経由で広く流通しています。

エア・ウォーター

産業ガス大手として、液化炭酸ガスの供給インフラと施用設備の両面で農業分野に参入しています。液化炭酸ガス式は燃焼式と比べて熱負荷がない反面、ガス供給契約とのセットになるため、産業ガスメーカーの安定供給網が大きな価値を持ちます。

Priva/Hoogendoorn/Ridder(オランダ勢)

オランダのPriva、Hoogendoorn、Ridderの3社はいずれも環境制御コンピュータの大手で、CO2施用も統合管理の一機能として扱っています。RidderのCO2 Optimizerは、CO2施用コストと将来の追加収量を勘案して施用量を自動最適化する助言ツールで、PrivaのPlantonomyやHoogendoorn IIVOも強化学習を組み合わせて施用を動的に制御します。日本国内でも大規模温室を中心に導入が進んでいます。

選び方のポイント

方式選定は、ハウス規模・栽培作物・既存設備・脱炭素方針の4つを軸に検討すると整理しやすくなります。

  • 500〜1,000m²の中小規模ハウスで初期投資を抑えたい場合は、灯油・LPG焚きの燃焼式(ネポン グロウエア、誠和 真呼吸など)が現実的な選択肢になります。
  • 夏季や高温期にも周年でCO2施用したい場合は、液化炭酸ガス式または冷却型局所施用システムが適しています。
  • 複数棟をまとめて環境制御したい場合は、高圧ガス工業の炭酸マスターのようなマルチセンサ・マルチ系統制御装置を組み合わせると拡張性が高まります。
  • 1ha超の大規模温室で年間50t/10a以上を狙う場合は、Priva・Hoogendoorn・Ridderの環境制御コンピュータと液化炭酸ガス式・排ガス利用式の組み合わせが定石です。

濃度管理は800〜1,000ppmを目安にしつつ、換気時の漏れを抑えるため、CO2センサと連動した自動制御が必須です。センサなしのタイマー運転だけでは過剰施用や不足が起きやすく、燃料・ガス代を無駄にするだけでなく光合成効率も最大化できません。

導入費用の目安

燃焼式の小型機(灯油・LPG焚き)は本体価格でおおむね30万円〜80万円程度、設置工事を含めて中小規模ハウス1棟あたり50万〜100万円規模が一般的です。液化炭酸ガス式は本体に加えて液化炭酸ガスのボンベまたはバルク貯槽の設置が必要で、初期費用は数百万円規模になることが多く、ガス供給契約のランニングコストも発生します。排ガス利用式は大規模温室向けで、暖房ボイラーや配管込みで数千万円〜のオーダーになります。

費用対効果を判断する際は、収量増加分の売上から燃料費・ガス代・電気代を差し引いた純増益で評価します。トマトで20〜30%の増収が見込める前提では、中規模ハウスでも2〜3年で初期投資を回収する試算が一般的です。

まとめ

CO2施用は、光・温度・水とならぶ施設園芸の基本環境要素であり、適切に運用すれば収量を20〜30%、条件次第ではそれ以上に押し上げることが研究と実証で確認されています。国内では燃焼式が主流ですが、夏季の運用や脱炭素対応を見据えて液化炭酸ガス式・冷却型局所施用への移行が進んでおり、高圧ガス工業の炭酸マスターのように既存設備からスムーズに切り替えられる制御装置も登場しています。自社のハウス規模と栽培作物に応じて、方式・センサ・制御装置を組み合わせて最適化することが、収益性向上への近道です。

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