生態系を維持するアクアポニックス農法で魚と野菜を同時に育てるUpward Farm社について解説

事業概要:サステイナブルに安全な魚と野菜を供給する

Upward Farm社は、2013年にニューヨーク州ブルックリンを拠点に設立された、野菜と魚を同時に育てるアクアポニックス技術を開発する農業スタートアップです。

地球環境に配慮しながらも誰もが自分や家族に十分な栄養を与えることができるよう、高い品質基準で野菜や魚を育て、地球環境や生態系を壊さない食品供給システムを構築しています。

テクノロジー:化学物質を使わずに、生態系の働きによって魚と野菜を育てるアクアポニックス農法

Upward Farm社の農法は、アクアポニックスと呼ばれる古代の農法と現代の垂直農法を融合させた技術です。アクアポニックスでは、生態系を維持しながらも作物を肥やすために魚が使われます。元来からアクアポニックス農法では、魚が植物の真下を泳ぐことで土壌がより肥沃になり、植物がより良く育ちます。

Upward Farm社では、動物、微生物、植物の3つの観点からアクアポニックス農法の技術を開発しています。

Upward Farm社の施設で育つ作物
育てられたマイクログリーン

動物として、水銀、抗生物質、ホルモン物質を含まない安全に食すことのできるシマスズキを育成しており、モントレーベイ水族館より倫理的でサステイナブルな魚の育成方法の「ベストチョイス」として認定されています。

また植物は農薬、抗生物質、合成肥料を使うことなく安全に栽培が可能で、大腸菌やその他病原菌も除去されます。遺伝子組み替えでない種子から育てられた野菜は無農薬であり、非常に安全に食べることができます。魚から栄養素を吸収し、成長につれて水をろ過する作用があるため結果的に水の使用量を95%削減することができます。

Upward Farm社の農法では、化学物質を利用するときの100,000倍にあたる10億の微生物が1グラムの土に含まれ、その微生物が栄養、成長、免疫、害虫駆除に役立っています。また微生物によって化学物質を使うよりも肥沃で生産性に優れた土壌が実現されます。

ビジネスモデル

Upward Farm社では、当社のアクロポリス農法によって栽培されたミックス野菜とシマスズキを商品化しています。現状ではブロッコリー、ケール、キャベツがミックスされたMighty Microgreens Mix、マスタード、キャベツ、大根がミックスされたSpicy Microgreens Mix、そして抗生物質や水銀を利用せずに育てられたシマスズキが商品化されており、ニューヨーク全域への販売を予定しています。

今後の計画

2020年7月には1500万ドルを調達し、ニューヨーク・ブルックリンの本社農場を新たに建設することを発表しています。今後生産量を20倍以上に増やし、2021年までにニューヨーク地域の人々に当農場で育てられたの食品を供給できるようにする計画です。

一つの施設内で果菜類と魚を同時に育てます(https://drive.google.com/file/d/1i1GsLrYwdzyFq9FSxTeNjZRJFilYQrsa/view)

アクアポニックス農法による生産量を増やすことで、より手頃な価格の食品をより多くの人に利用してもらうことを目指しています。

コメント

昨今のパンデミックにより健康的かつ栄養価の高い食事への意識が高まり、有機的でサステイナブルな食品の需要が高まっています。今後Upward Farm社のように生態系を維持しながら効率的かつ安全に食品を供給できる技術が普及していくことが期待されます。

参考サイト