天地人:JAXAの衛星ビッグデータで農業のポテンシャル産地を発見する宇宙ベンチャー

会社基本情報

  • 会社名:株式会社天地人
  • 所在地:東京都中央区日本橋1丁目 三井ビル5F THE E.A.S.T.
  • 設立:2019年5月
  • 代表者:櫻庭康人(代表取締役CEO)
  • 主要メンバー:百束泰俊(CSTO/チーフサテライトオフィサー、元JAXA職員)、西山陽平(執行役員・事業開発統括マネージャー)
  • 公式サイトhttps://tenchijin.co.jp/

天地人はJAXAが認定した宇宙ベンチャーであり、世界で初めてJAXAから出資を受けた企業です。2018年のS-Booster(宇宙ビジネスアイデアコンテスト)で審査員特別賞、ANAホールディングス賞、JAL賞のトリプル受賞を果たしたことがきっかけで設立されました。現在もJAXA職員5名が兼業で在籍しています。

事業概要

天地人は、衛星データとAIを組み合わせた土地評価エンジン「天地人コンパス」を中心に、農業、水道インフラ、再生可能エネルギー、カーボンオフセットなど幅広い分野にサービスを提供しています。

同社が扱うデータは「天・地・人」の3層構造です。

  • :JAXA衛星をはじめとする地球観測衛星からの気象・地形・画像データ(4,000以上のビッグデータ)
  • :国土地理院や自治体が保有する地上データ
  • :農家や専門家のノウハウ・経験値

天地人コンパス

WebGIS型のプラットフォームで、衛星データと地上情報をAIで統合分析します。農業分野では「ポテンシャル産地」の発見、つまり衛星データから特定の作物栽培に最適な土地を特定する機能を提供しています。

宇宙ビッグデータ米

天地人の農業分野での代表的な取り組みが「天地人FARM」ブランドで展開する宇宙ビッグデータ米です。衛星データを使って米作りに最適な栽培地を選定し、実際に栽培したお米で、4年連続で1等米評価を獲得しています。異常気象の年でも高品質を維持できることが実証されています。

天地人コンパス 宇宙水道局

衛星データとAIを活用した水道管の漏水リスク評価サービスです。約100メートル四方のエリアを5段階で評価し、効率的な漏水調査を支援します。20以上の自治体で導入されており、豊田市との内閣府実証事業では点検費用最大65%削減、調査期間最大85%削減を実現しました。

どういう課題をどう解決しているか

農業が抱える課題

気候変動により、従来の「この土地ではこの作物」という経験則が通用しなくなりつつあります。異常気象の頻発、気温上昇による栽培適地の変化、水資源の変動などが、農業の安定的な生産を脅かしています。

天地人のアプローチ

天地人は衛星から得られるマクロデータと地上のミクロデータをAIで融合し、土地のポテンシャルを科学的に評価するアプローチを採用しています。これにより、気候変動に適応した栽培地の選定や、水田からのメタン排出量の推定など、これまで人の経験や勘に頼っていた判断をデータに基づいて行えるようになります。

宇宙ビッグデータ米の事例では、衛星データで選定した栽培地で、異常気象の年でも安定した品質(4年連続1等米)を実現しています。これは、衛星データによる土地評価が実際の農業生産に有効であることの証明です。

ビジネスモデル

天地人はクラウド型SaaSプラットフォーム「天地人コンパス」のサブスクリプションモデルを主要な収益源としています。農業、水道インフラ、再生可能エネルギーなど複数の産業に横展開しています。

資金調達については、2024年1月に日本政策投資銀行(DBJ)をリードとしたSeries A 2億5,000万円の調達を実施しています。JAXAからの出資も受けており、これはJAXA初の出資案件です。

今後の計画

  • 宇宙水道局サービスのヨーロッパ・東南アジアへの海外展開
  • 2027年の自社衛星打ち上げ(地表面温度観測を強化する「Thermo Earth of Loveプロジェクト」)
  • 農業分野でのポテンシャル産地発見サービスの拡充
  • カーボンオフセット・メタン排出推定サービスの展開

コメント

天地人は「宇宙×農業」という切り口で日本発のユニークなポジションを確立しています。海外のアグテック企業が圃場レベルのセンサーデータやロボティクスに注力する中、天地人は衛星からのマクロデータで「どこで何を作るべきか」という根本的な問いに答えようとしている点が独創的です。

4年連続1等米という宇宙ビッグデータ米の実績は、農家にとって分かりやすい成果です。気候変動によって従来の産地が適地でなくなる可能性がある中、衛星データによる新たなポテンシャル産地の発見は、日本の農業にとって戦略的に重要な意味を持ちます。

水道インフラへの横展開で20以上の自治体に導入している点も、収益の多角化として評価できます。2027年の自社衛星打ち上げが実現すれば、データの質と頻度が大幅に向上し、農業分野でのサービス精度もさらに高まるでしょう。JAXAの後ろ盾を持つ日本発の宇宙農業ベンチャーとして、今後の成長に注目です。

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