フランスのスタートアップAmatera(アマテラ)は、植物の細胞を培養する段階で有望な系統を選び、品種開発にかかる年数と費用を減らそうとしています。同社は2026年3月に600万ユーロのシード資金を調達しました。最初の対象はコーヒーとワイン用ブドウで、今後は一年生の畑作物や野菜にも広げる計画です。
会社基本情報
- 社名:Amatera(Amatera Biosciences)
- 設立:2022年
- 本社:フランス・パリ
- 創業者:Omar Dekkiche(CEO)、Lucie Kriegshauser博士(CTO)
- 資金調達:2023年10月に150万ユーロ(PINCが主導)、2026年3月に600万ユーロのシードラウンド
- 公式サイト:amatera.bio
2023年の調達はフィンランドの食品企業Pauligの投資部門PINCが主導し、Exceptional Ventures、Mudcake、Joyance Partners、AgFunderなどが参加しました。2026年のシードラウンドはDemea Sustainable InvestmentとOyster Bay Venture Capitalが共同で主導し、既存株主のPINC、Mudcake、Exceptional Venturesも出資しています。AgFunderNewsによると、同社は2026年6月にEUのEIC Acceleratorプログラムにも採択されました。
事業概要
Amateraは「CellTera」という独自技術で育種を進めています。CellTeraは細胞培養、ハイスループットの自動化、機械学習を組み合わせた技術です。同社は物理的・化学的な処理で細胞に遺伝的変異を起こし、遺伝子組換えに当たらない細胞系統のライブラリーを作ります。そのうえで各系統の塩基配列を読み、目的の形質を持つ系統を選びます。
同社は単一の細胞を分離して小さな培養単位で育てる工程で特許を取得済みです。植物体まで再生させるのは、選抜で残った系統だけです。再生した植物は育苗施設と圃場で試験します。CellTeraはゲノム編集した系統や倍加半数体系統の作出にも使えると公式サイトは説明しています。
現在の開発品目は次のとおりです。
- コーヒー「Robustica」:ロブスタ種の強さとアラビカ種に近い味を両立させる品種。育苗段階にある
- カフェインを自然に含まないアラビカ種。育苗段階にある
- べと病とうどんこ病に強いワイン用ブドウ。公式サイトではメルローを対象としている
課題と解決策
CEOのDekkiche氏は、コーヒーやワイン用ブドウの新品種を作るには20年以上と数百万ユーロがかかると話しています。従来の育種では、多数の個体を植物体まで育ててから形質を調べます。この選抜作業に時間と圃場の面積が必要でした。
Amateraは選抜を細胞の段階に移しました。Dekkiche氏はAgFunderNewsの取材で、すべての細胞を植物に再生してから選ぶ方法をやめ、選抜の滞りを取り除いたと説明しています。公式サイトは業界標準より費用を10分の1、期間を半分にできるとしています。2026年10月の記事でDekkiche氏は、費用で少なくとも5倍、期間で2倍の削減を見込むと述べ、検証データは現在ラボで集めている最中です。
細胞段階で選べる形質には制約もあります。現在は、カフェイン生成のように遺伝マーカーが分かっている形質を対象にしています。乾燥耐性や収量を細胞段階で調べる手法は、まだ提供していません。
ビジネスモデル
Amateraは作物の種類によって2つの方式を使い分けています。コーヒーやブドウのような永年作物では、自社で品種を開発・試験し、その品種をライセンス供与する予定です。一年生作物では、種苗会社が自社の育種工程にCellTeraを組み込めるよう、技術基盤として提供します。
ワイン用ブドウでは提携契約をすでに結んでいます。2026年3月の時点で、同社は一年生作物でも複数の提携を年内に結ぶ予定だと話していました。提携先の社名は公表されていません。
今後の計画
- Robusticaで新たに特定した品質関連遺伝子を検証する
- カフェインを含まないコーヒーで見つけた遺伝子を検証する
- シード資金とEICの支援を使い、ロボットとAIを使う選抜基盤を量産体制に移す
- 一年生の畑作物と野菜に対象を広げ、種苗会社と提携する
- エンジニアと研究者の採用を増やす
CTOのKriegshauser博士は、今回の資金でコーヒーとブドウから主食作物へ技術を広げると述べています。同社は細胞生物学、ロボット、機械学習を1つのシステムにまとめ、植物細胞の再生を自動で行う開発も進めています。
コメント
日本の農家にとって関係が深いのは、Amateraが一年生の畑作物と野菜に進出する計画です。国内の種苗会社や公的研究機関がこうした技術を使えば、耐病性品種を短い期間で作れる可能性があります。
ただし、CellTeraが現在選べるのは遺伝マーカーが分かっている形質に限られます。高温や乾燥への強さのように多くの遺伝子が関わる形質は、細胞段階ではまだ調べられません。費用と期間の削減幅も、同社はラボで検証している段階です。同社が一年生作物でどの種苗会社と組むかは、今後の発表で確認できます。
参考URL
- Amatera tackles plant breeding bottleneck with high-throughput cell screening platform(AgFunderNews) リンク
- Amatera raises $7m to accelerate climate smart crop development by tackling screening bottleneck(AgFunderNews) リンク
- Amatera banks €6M to turbo-charge AI-powered crop breeding(AgNavigator) リンク
- Paulig invests in Amatera, a biotech startup and game changer for coffee cultivation(Paulig プレスリリース) リンク
- Amatera 公式サイト リンク