サツマイモ基腐病に強い品種は?46品種の抵抗性・用途・作付シェア一覧【Excel無料】

サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)に対する46品種の強さを調べた農研機構の論文(Breeding Science、2025年)をもとに、品種ごとの用途・作付シェア・抵抗性を1枚の表にまとめました。作付シェアの大きいべにはるか・コガネセンガン・べにあずま・高系14号は、圃場での評価が「弱」〜「やや弱」です。一方で、べにひなた・ベニハヤト・オキコガネ・たまあかねは「強」と評価されています。46品種の一覧はExcelで無料ダウンロードできます。

サツマイモ46品種の基腐病抵抗性一覧(Excel)をダウンロード

サツマイモ基腐病とは

基腐病は、糸状菌(かび)の一種 Diaporthe destruens によって、株元の茎が黒く変色して枯れたり、イモがなり首側から腐ったりする病気です。論文によると、日本では2018年に鹿児島・宮崎・沖縄で初めて確認され、南九州のかんしょ産地で大きな減収をもたらしました。

病気は、感染した苗や種イモを植えることで広がり、発病した株の胞子が風雨や湛水で周りの株に移ります。農林水産省は、発生していない圃場で採った健全な種イモと苗を使うこと、伏せ込み前の種イモと苗床の消毒、採苗時の苗とハサミの消毒などを「まん延防止」の取り組みとして示し、疑わしい株を見つけたら都道府県の病害虫防除所に相談するよう呼びかけています。こうした耕種的な対策に加えて、根本的な対策として期待されているのが抵抗性品種です。

論文の概要:46品種のイモの腐りやすさを室内で比べた

農研機構九州沖縄農業研究センターの田淵宏朗氏らは、主要品種を含む46品種について、貯蔵したイモの輪切りに基腐病菌を接種し、25℃で10〜11日おいたあとの腐敗部分の大きさを「腐敗指数(RAI)」として測りました。RAIは2.8〜10.6の範囲で、品種間に統計的な差がありました。

  • RAIが最も小さかった(腐りにくかった)のは、サツマヒカリ(2.8)、ムラサキマサリ(3.0)、ベニハヤト・アヤムラサキ(3.2)
  • RAIが最も大きかった(腐りやすかった)のは、パープルスイートロード(10.6)、農林2号(10.1)、95K1(10.0)
  • アヤムラサキ・こなほまれ・ちゅら恋紅・みちしずくは、貯蔵期間が長いほどRAIが大きくなりました。逆に、すずほっくり・むらさきほまれ・紅乙女・アヤコマチは小さくなりました

ただし、室内試験のRAIと圃場での抵抗性評価は、両方がそろう21品種では有意な相関がありませんでした。論文は、圃場で「ひどく腐ったイモの割合」とは一部の年で相関があったとして、室内試験を育種の初期選抜に使う方法として位置づけています。品種選びでは、圃場での評価を優先して見るのが安全です。

主要品種の基腐病抵抗性(圃場評価がある21品種)

論文の表から、圃場での抵抗性評価(農研機構九州沖縄農業研究センター、2023年)がある21品種を抜き出しました。作付シェアは、論文が引用している農林水産省の2024年のデータです。

品種 用途 作付シェア(%) 圃場での評価 室内RAI
べにはるか 青果用 21.9 弱〜やや弱 6.6
コガネセンガン 原料用 20.5 やや弱 6.7
べにあずま 青果用 9.2 弱(原表記Sv) 6.1
高系14号 青果用 8.2 やや弱 7.3
こないしん 原料用 5.1 やや強 6.6
シロユタカ 原料用 4.9 中〜やや弱 8.9
べにまさり 青果用 4.4 やや強 3.7
ムラサキマサリ 加工用 0.6 中 3.0
アヤムラサキ 加工用 0.2 中 3.2
タマユタカ 加工用 0.2 中 7.9
紅乙女 青果用 0.1未満 中 5.2
大地のゆめ 原料用 0.1未満 弱 7.2
こなほまれ 原料用 0.1未満 弱 7.5
たまあかね 加工用 0.1未満 強 9.0
べにひなた 青果用 — 強 4.7
ベニハヤト 加工用 — 強 3.2
オキコガネ 加工用 — 強 4.0
すずほっくり 青果用 — やや強 3.6
みちしずく 原料用 — やや強 9.2
サツママサリ 原料用 — 中 8.7
こなみずき 原料用 — 弱 6.1

圃場での評価は、強>やや強>中>やや弱>弱の5段階です。—は農林水産省のシェアデータがない品種です。RAIは小さいほど室内試験で腐りにくかったことを示します。

表から読み取れること

主力品種ほど弱い

作付シェア上位4品種(べにはるか・コガネセンガン・べにあずま・高系14号)は、合計で全体の約6割を占めます。この4品種は、圃場での評価がいずれも「弱」〜「やや弱」です。主力品種を作り続ける産地では、品種を替えるだけでは解決できず、健全な種イモの確保や圃場衛生など耕種的な対策を続けることが前提になります。

用途ごとに「強い」選択肢がある

  • 青果用:べにひなた(強)、べにまさり・すずほっくり(やや強)。べにひなたは、農研機構が基腐病に強い青果用品種として2023年に発表した品種です
  • 原料用(でん粉・焼酎など):こないしん・みちしずく(やや強)
  • 加工用:ベニハヤト・オキコガネ・たまあかね(強)

室内の数値と圃場の評価は食い違うことがある

たまあかね(RAI 9.0)とみちしずく(9.2)は、室内試験ではイモが腐りやすい部類でしたが、圃場での評価は「強」「やや強」です。逆に、ムラサキマサリ(3.0)は室内では最も腐りにくい部類でしたが、圃場では「中」でした。圃場の評価は茎から枯れる被害も含めたものなので、イモの切片だけを見る室内試験とは一致しないことがあります。

Excelの使い方

ダウンロードできるExcelには、次の3つのシートがあります。

  • 品種一覧:46品種すべての用途・作付シェア・RAI(標準誤差・反復数つき)・圃場評価・貯蔵期間との関係。フィルターで用途や評価を絞り込めます
  • 自分の園の比較メモ:試作した品種の植付日・収穫日・収量・基腐病の発生株率・貯蔵中の腐敗を記録する表
  • 出典・ライセンス:元の論文と、CC BY 4.0にもとづく変更点

品種を替える前に、県の奨励品種や防除の指導、種苗が手に入るかどうかもあわせて確認してください。試作した結果は、ほかの病害虫の記録と同じ表にまとめておくと翌年の判断に使えます。見回りの記録の付け方は病害虫の見回り記録の書き方で解説しています。

出典とライセンス

この記事の表とExcelは、次の論文の表1・表2を和訳・結合・並べ替えたものです。論文はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際(CC BY 4.0)で公開されています。和名・解説はトクイテンが追加したもので、論文の著者・日本育種学会・農研機構が作成したものではありません。

Tabuchi H, Kobayashi A, Kawata Y, Sakaigaichi T, Suematsu K, Kobayashi YO (2025) Resistance of storage roots of 46 sweetpotato cultivars to foot rot disease caused by Diaporthe destruens was evaluated using a laboratory test. Breeding Science 75(4): 315-324.

参考URL