二酸化炭素を土壌有機物として固定する。菌類を利用して地力を守る、Soil Carbonの技術を紹介

土壌に含まれる有機物は、土の物理性を改善したり保肥力・保水力を高めたりするうえで重要です。しかし広大な圃場で毎年堆肥を施用するのはコストがかかり、アメリカの粗放的な農地では地力低下が問題になることもあります。そこで Soil Carbon が目をつけたのが、菌類を使った土壌への炭素固定。堆肥コストを軽減するだけでなく、二酸化炭素の排出を抑える効果まで期待できるのです。

Soil Carbon 基本情報

住所:Building 1120, Charles Sturt University, Leeds Parade, Orange, NSW 2800, AU
CEO:Guy Hudson
設立年:2019年
従業員数:11〜50人

Soil Carbon の技術

空気中の二酸化炭素を土の中へ

土壌の物理性・化学性を改善するため、堆肥の施用や緑肥植物の鋤きこみが行われます。しかし、そのようにして土壌に加えられた有機物も、雨で流亡したり微生物に分解されたりして減少してゆきます。

そこで Soil Carbon は、空気中に存在する二酸化炭素を土に取り込み、有機物としてチャージする方法を開発しました。そうすれば毎年の堆肥施用コストを下げ、空気中の二酸化炭素濃度まで下げられます。

植物と共生する菌類、「エンドファイト」

Soil Carbon が着目したのは、「エンドファイト」と総称される、植物と共生する菌類。エンドファイトは植物の根に菌糸を潜り込ませて、植物が光合成でつくった有機物を分けてもらう代わりに、土から無機養分を吸収するのを手伝います。植物と菌類、両方にメリットのある共生関係です。

このエンドファイトを作物と一緒に圃場へ接種すれば、以下の仕組みで空気中の二酸化炭素を土壌有機物に変換できます。

  • 作物が光合成をおこない、空気中の二酸化炭素を吸収して糖類を合成します。
  • 光合成で作られた糖類をエンドファイトが取り込み、より安定な形の有機物に変換して貯蔵します。
  • エンドファイトが増殖するにつれて、貯蔵される有機物も増えます。

エンドファイトに取り込まれた有機物は、植物体内の有機物よりも分解されにくい状態になります。そのため作物が枯れた後も土壌中に残り、翌年の地力向上につながります。

導入のメリット

Soil Carbon の技術を導入するメリットをまとめます。

堆肥の施用量が減らせる

空気中から有機物がチャージされるため、堆肥の投入量が減りコスト削減になる可能性があります。ただし、エンドファイトの増殖状況などにより有機物がチャージされる量は変わります。土壌診断をしたうえで、不足分は堆肥で補う必要があるでしょう。

作物の生育が改善する

エンドファイトは、植物が土から無機栄養を吸収するのを助けてくれます。そのため肥料分の利用効率が上がり、作物の生育が改善する可能性があります。

地力低下の予防

エンドファイトを使い続けることで土壌中の有機物の蓄積が進みます。これらの有機物は分解・流亡しにくいため、地力が低下する速度を緩めることができるでしょう。

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