生殖不能のオスを放飼することで、環境に優しく害虫を駆除するゲノムエンジニアリング企業、Agragene社について解説

Agragene社の事業概要

Agragene社は作物を害虫から保護するサステイナブルな農業技術を開発する農業スタートアップ企業として2017年に設立されました。アメリカ合衆国西部のカリフォルニアを拠点としており、従業員数は約10名です。昆虫の生殖機能を排除することで害虫を減らすことのできる技術により、環境汚染がなく安全な作物害虫駆除方法を提供しています。

環境に悪影響を与える化学物質の使用を減らすことで、ハチやテントウムシといった有益な昆虫にとって安全な環境を実現し、より自然な生態系バランスの維持が可能です。また、Agragene社の害虫駆除技術を使用することで、害虫が持つ殺虫剤耐性が低下し、総合的に害虫管理の効果が高まります。

テクノロジー:精密誘導の不妊虫放飼技術(Precision-Guided Sterile Insect Technology™:pgSIT)

Agragene社の精密誘導の不妊虫放飼技術(Precision-Guided Sterile Insect Technology™)によって、害虫の駆除と蚊媒介性の病気を撲滅することができます。

Agragene社の当技術はゲノムエンジニアリングによってメスの胚致死およびオスの不妊をコード化したもので、Agragene社独自の昆虫系統を繁殖させることにより、生殖不能の害虫のオスのみを生産します。生産された生殖不能のオスの昆虫がフィールドに放たれ、このオスが野生の害虫のメスを見つけて交尾します。オスは生殖不能なため受精されず、害虫の卵はできません。

遺伝子操作されたオスと交尾して生まれた卵は孵化しません(公式動画より)

Youtube動画:https://youtu.be/AkVfcrj0zkI

この方法は作物害虫を根絶するわけではありませんが、全ての季節を通じて地域の害虫を費用対効果高く制御することができます。そのため作物の生産者は化学殺虫剤の使用を減らすことができます。

Agragene社のpgSIT製品は、従来の化学殺虫剤よりも手頃な価格で入手でき、ハチや鳥、労働者にとって安全な点がメリットです。

今後の計画:フィールド試験と商業化の拡大

Agragene社は最初の製品として、世界的な作物害虫である羽に斑点のあるショウジョウバエを対象とした製品の開発に取り組んでいます。

Agragene社は、2020年3月に、Ospraie Ag Science社より120万ドルを調達しました。この資金調達により、フィールド試験と商業化の拡大を目指しています。また、アメリカでの商用製品の発売と、世界中での積極的なライセンス戦略を推進しています。

コメント

農薬市場は190億ドル規模と言われており、Agragene社の画期的かつサステイナブルな技術によって農薬市場が大きく変化していく可能性があります。環境汚染が問題とされる中、Agragene社のような環境に優しく効果的な技術が今後普及していくことが期待されます。

参考サイト