constellr:熱赤外線衛星で作物の水分ストレスを宇宙から早期検出するドイツ発スタートアップ

会社基本情報

  • 会社名:constellr GmbH
  • 所在地:ドイツ・フライブルク
  • 設立:2020年
  • 創業者:Max Gulde(CEO)、Christian Mittermaier、Christian Williges
  • 累計調達額:7,500万ユーロ(約120億円)
  • 公式サイトhttps://www.constellr.com/

constellrはフラウンホーファー研究所から生まれたスピンオフ企業で、欧州宇宙機関(ESA)のInCubedプログラムやEIC Fundからの支援を受けています。2025年1月に最初の衛星を打ち上げ、2026年2月にSeries Aで3,700万ユーロを調達し、急成長しています。

事業概要

constellrは、熱赤外線(サーマル)衛星コンステレーション「HiVE」を構築し、地球の地表面温度データを高精度で提供する宇宙データ企業です。主な用途は農業における作物の水分モニタリングと、防衛分野でのサーマルインテリジェンスです。

HiVE(High-precision Versatile Ecosphere)コンステレーション

HiVEは地表面温度を宇宙から高精度で計測する衛星群です。植物が蒸散する水分量をモニタリングすることで、作物の水分含有量と全体的な健康状態を追跡します。将来的にはサブ5メートル解像度を目指しており、これは従来の衛星熱画像を大幅に上回る精度です。

どういう課題をどう解決しているか

農業における水管理の課題

世界の農業は水資源の確保が最大の課題の一つです。干ばつは作物に深刻なダメージを与えますが、地上から目視で確認できるようになった時点ではすでに手遅れであることが多いです。既存の衛星画像は可視光や近赤外線が中心で、水分ストレスの早期検出には限界がありました。

constellrのアプローチ

constellrは熱赤外線による地表面温度モニタリングという独自のアプローチで、この課題に取り組んでいます。地表面温度は作物の水分蒸散量と密接に関連しており、温度の変化を宇宙から検出することで、目に見える症状が出る前に干ばつや栄養欠乏を早期発見できます。

従来の衛星では解像度や再訪頻度が不十分でしたが、HiVEコンステレーションはグローバルにスケーラブルな作物水分モニタリングシステムとして、高頻度・高解像度のデータを提供します。

また、2024年には欧州委員会とESAからCopernicus Contributing Mission(CCM)としての契約を獲得し、EUのCopernicus地球観測プログラムへの熱データ提供も行っています。

ビジネスモデル

constellrは衛星データの販売・サービス提供を収益源としています。農業分野では作物水分モニタリングデータを農家・アグリビジネス企業に提供し、防衛分野ではサーマルインテリジェンスを国家安全保障機関に提供しています。

資金調達の経緯は以下の通りです。

  • 2021年:Pre-seed 100万ユーロ(FTTF主導、OHB Venture Capital、L-Bank参加)
  • 2022年11月:Seed 1,000万ドル(Lakestar、VSquared共同リード)
  • 2023年7月:Extended Seed 1,700万ユーロ(Karista主導)
  • 2026年2月:Series A 3,700万ユーロ(Alpine Space Ventures主導、Lakestar共同リード)

Series Aにはさらに、Semapa Next、Bayern Kapital、Cardumen Capital、Cooperative Ventures、Kineo Financeが参加し、既存投資家のVsquared、CosmiCapital、Fraunhofer Technologie-Transfer Fonds、EIC Fundも引き続き支援しています。ラウンドは大幅なオーバーサブスクライブとなりました。

今後の計画

  • HiVE衛星コンステレーションの拡大(グローバルカバレッジの拡充)
  • サブ5メートル解像度を実現する次世代プラットフォームの開発
  • 北米市場への本格展開
  • 防衛分野でのサーマルインテリジェンス事業の拡大
  • EU Copernicus CCMとしてのデータ提供の拡充

コメント

constellrの強みは、衛星からの熱赤外線データという他社が提供しにくいユニークなデータソースを持っている点です。農業分野では、可視光による画像解析を提供する企業は多いですが、地表面温度から作物の水分ストレスを検出するアプローチは希少であり、既存サービスとの差別化が明確です。

農業と防衛という2つの市場をターゲットとしている点は、収益の安定化と技術の二重利用(デュアルユース)の観点から戦略的です。EU CopernicusのCCM認定は、公的機関からの技術評価と安定した需要の両方を意味します。

ESA、フラウンホーファー研究所、EICといった欧州の主要な科学・産業インフラからの支援体制は、技術的な信頼性の裏付けとなっています。累計7,500万ユーロの調達と、Series Aのオーバーサブスクライブは、投資家からの高い期待を示しています。

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