3台のドローンによる同時散布と、その運用実務
要約: 米国ウィスコンシン州の農場で、XAG P100 Pro、DJI T50、T40の3機を同時運用し、トウモロコシの除草剤散布を実施。雨後の湿った圃場でもコンパクション(圧迫)を避け、迅速に防除が可能であることを実証。各機種のタンク容量や噴射方式の違い、そして8日後の雑草枯死状況から、ドローン散布の経済性と実用性を検証した事例を解説します。
今回はウィスコンシン州の農場で撮影された動画です。ライアン・アレン氏が、農家であるアンドリュー・タッカー氏とともに、XAG P100 Pro、DJI T50、T40という3台の散布用ドローンを同時に運用する様子を記録しています。午後の風向変化に備えて午前中に作業を完了させ、圃場の圧迫を避けるという実務的な狙いがあります。
なるほど、複数機を同時に飛ばすとは驚きです。特に印象に残った操作面での違いはありましたか?
XAG P100 Proの制御方式が興味深い点でした。DJIのようにリモコンにモニターが付いておらず、Android端末を接続して自律飛行を管理します。マニュアル操縦での事故が多いことから、自律モードでの運用を強く推奨している設計思想が読み取れます。
端末依存ですね。現場での通信環境や端末の故障リスクはどう考えているんでしょうか。
動画では、ウィスコンシン州での合法飛行にはFAAの許可に加え、視覚監視員を配置する必要があると説明されています。3台同時運用には合計6名以上の人員が必要となり、労務コストは無視できません。
6名ですか。ドローン自体のコストだけでなく、運用時の人件費が相当かかりますね。採算が取れるのは大規模圃場に限られそうです。
はい。動画内では、雨続きで地面が湿っている時期に、トラクターによる圧迫を避けて防除を行えるメリットが強調されています。また、XAG機は13.5ガロンのタンク容量を持ち、DJI T40の10.12ガロンより大容量です。
タンク容量の違いは稼働効率に直結しますね。1回あたりの散布面積が広いほうが、結局のところ総コストを抑えやすいのでしょうか。
一概には言えませんが、動画では除草剤と葉面散布剤を混合し、1エーカーあたり4ガロンで散布していました。雑草が繁茂していたため、通常より希釈濃度を濃くして対応したとのことです。
現場の雑草状況に合わせて調整するとは、柔軟性がありますね。ただ、化学農薬の使用量が増えること自体はコストと環境負荷の観点で気になる点です。
その通りです。動画の結論として、ドローンスプレーヤーは従来の航空防除や地上散布より迅速で、圃場への負担が少ないため、今後は導入が進むだろうと述べられています。
既存の防除手段を置き換えるというより、特殊な条件での選択肢が増えるという捉え方が妥当ですね。
ええ。規制や人員確保、天候などの制約はありますが、湿った圃場での早期防除というニーズには有効な選択肢になり得ます。
導入には地域や規模で判断が分かれそうです。メリットと課題のバランスを見極めることが重要ですね。
雨後の圃場で3機同時散布を実現した背景
米国ウィスコンシン州の農場では、播種後の降雨により圃場が湿潤状態となり、大型の自走式散布機が進入できない状況が発生しました。この課題に対し、XAG P100 Pro、DJI T50、T40の3機を投入し、午前8時から正午までのFAA承認時間内で散布を完了させました。ドローン散布の最大の利点は、土壌の圧迫(コンパクション)を回避できる点です。大型機が進入できない湿った圃場でも、ドローンであれば早期の防除が可能となり、雑草の発生を抑えられます。また、シーズン後半の殺菌剤散布時にも、端行での旋回による作物への物理的損傷を最小限に抑えられることが確認されました。
XAG P100 Proの特徴と自動飛行の優位性
今回テストされたXAG P100 Proは、13.5ガロン(約51リットル)の大型タンクを搭載しており、業界でもトップクラスの容量を誇ります。同機はARCコントローラーを使用し、画面がないため、Android端末を接続して自律飛行を管理します。動画では、手動操縦よりも自律飛行モードでの安定性が高いことが強調されました。実際、手動介入時にクラッシュ事例が多いのに対し、自律モードでは障害物回避や噴射制御が正確に行われます。22エーカー(約8.9ヘクタール)の圃場に対し、雑草圧力が高いことから1エーカーあたり4ガロンの希釈液で散布設定を行い、残留除草剤と葉面散布肥料を混用しました。
DJI T50とT40の性能差と運用上の違い
DJIの主力機であるT40と新型T50には、明確な性能差があります。T40は10.12ガロン(約38リットル)のタンクと2つのロータリーアトマイザーノズルを備え、時速22マイル(約35キロメートル)で飛行します。一方、T50はプロペラが白く、前方の全方位レーダーがT40の2〜3倍のサイズに拡大されました。これにより障害物回避性能が向上し、後方の着陸脚下部にもレーダーを追加して地形追従能力を強化しています。さらにポンプ出力が高いため、高希釈率での散布時でもT40よりも高速で作業可能です。T40はすでに数百万エーカーで実績があり、信頼性の高い機種として知られています。
法規制遵守と安全運用のための体制
合法的なドローン散布には、厳格な安全体制が不可欠です。今回の運用では、3名のPart 107ライセンス保持者とPart 137(農薬散布用航空機)ライセンス取得者が操縦を担当しました。FAAへのNOTM(航空管制通知)提出に加え、各パイロットには視覚観察員を配置し、無線チャンネル13で連携を取りました。風速8ノット、視程10マイルという好条件のもと、各機の着陸ゾーンを明確に分け、互いの空域に侵入しないよう位置調整を行いました。日本でも同様に、航空法や農薬取締法に基づく届出と、安全確保のための観察員配置が義務付けられています。
散布8日後の効果と導入への示唆
散布から8日後、対象圃場の雑草は枯死状態に達し、効果の高さが確認されました。さらに重要なのは、ドローン散布により大型機が進入可能になるまでの7日間を有効活用できた点です。動画の製作者は当初、殺菌剤散布のみを想定していましたが、除草剤散布でも高い有用性があることを実感し、自社導入を検討しています。日本においても、労働力不足や大型機の進入困難な圃場での活用が期待されます。海外では専門業者によるトレーニングや導入支援が充実していますが、日本では農林水産省の補助金制度やJA等の支援を活用し、初期投資と運用コストのバランスを検討することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. XAG P100 Proのタンク容量はどのくらいですか?
XAG P100 Proは13.5ガロン(約51リットル)のタンクを搭載しています。これは農業用散布ドローンの中でも最大級の容量であり、1回の飛行で広い面積を処理可能です。動画では、この大容量により、22エーカーの圃場での散布効率が高まることが示唆されています。
Q. DJI T50はT40と比べて何が向上していますか?
DJI T50はT40と比較して、前方の全方位レーダーサイズが2〜3倍に拡大し、障害物回避性能が向上しました。また、後方の着陸脚下部にもレーダーを追加し、地形追従能力を強化しています。さらにポンプ出力が高いため、高希釈率での散布時にT40よりも高速で作業可能です。
Q. ドローン散布で雑草が枯れるまで何日かかりましたか?
動画の事例では、散布から8日後に雑草が枯死状態に達しました。この期間中に大型機が圃場に進入できる状態になり、残りの作物への散布が可能になりました。ドローン散布により、大型機が待機する7日間を有効活用し、防除のタイミングを逃さずに済んだことが成果として挙げられています。
Q. ドローン散布の飛行速度はどのくらいですか?
DJI T40の一般的な飛行速度は時速22マイル(約35キロメートル)です。散布高さは作物から10〜13フィート(約3〜4メートル)、散布幅は約30フィート(約9メートル)です。T50はポンプ出力が高いため、同じ希釈率でもT40よりも高速での飛行が可能とされています。
Q. ドローン散布で使用する希釈液の量はどのくらいですか?
動画の事例では、雑草圧力が高い圃場に対して1エーカーあたり4ガロン(約3.8リットル)の希釈液を使用しました。通常は3ガロンでも対応可能ですが、確実な被覆率を確保するために1ガロン追加して散布しています。作物や雑草の状態に応じて、適切な希釈率を設定することが重要です。