農家で作られた作物は、小売店や飲食店を通して最終消費者の手に渡ることで、初めて収益になります。本記事で紹介する Waycool は、農家から農産物を買い付けて小売店や飲食店に供給している、インドの専門商社です。高品質で鮮度の高い農産物を届けるため、充実した調達網と供給網、AIや機械学習を用いた在庫管理体制、高い品質管理体制を備えています。
Waycool 基本情報
住所:IN 600017 Tamil Nadu Chennai T. Nagar New #6, Old #38, Bhagirathi Ammal St
代表:Karthik Jayaraman
設立:2015年
従業員数:1001〜5000人
農産物を扱うインドの専門商社
Waycool はインドで活動する農産物専門商社です。5万件以上の農家から幅広い農産物を買い付け、18900件の小売店や飲食店に販売しています。
インドでも、高品質な食材への需要やトレーサビリティ確保への要求が高まりつつあり、品質管理体制の整ったサプライチェーンが求められています。また、小売店・飲食店は、原材料の発注管理を合理化・単純化することで、管理コストを削減し収益性を高める方法を模索しています。それらの課題を解決するため、幅広い調達網と供給網、先端技術を用いた在庫管理体制、高い品質管理体制を提供している企業が、Waycoolです。
Waycool の強みと顧客企業のベネフィット
【調達網】5万件以上の農家から買い付け
Waycool は5万件以上の農家から買い付けを行っており、様々な農産物を取り扱い可能です。小売店や飲食店の需要に応えられるよう、果物、野菜、乳製品、主食となる穀物や豆など、幅広いカテゴリーを調達できる体制を備えています。
取り扱い品目が幅広いため、小売店や飲食店は農産物の発注先を Waycool に一本化できます。これにより発注業務がシンプルになり、管理コストが削減されて収益性向上が期待できるでしょう。
【供給網】アウトレットから零細小売店まで対応可能
Waycool は自社の配送センターを持っており、1日あたり350tの農産物を小売店や飲食店に供給しています。2021年現在、約18900件の店舗に農産物を納入しており、大規模なアウトレットから小規模な個人商店(特に、Kiranaというインドの伝統的な零細小売店)まで配送可能です。
さらに、Waycool への発注管理は、専用のモバイルアプリケーションで完結します。個人店でも気軽に利用登録でき、発注管理のスマート化を進められるでしょう。
【在庫管理】AIと機械学習を用いて充足率95%を達成
Waycool では在庫管理にAIと機械学習を導入しています。毎日の農産物供給量をAIと機械学習で予測することで、高精度な需要計画を策定し、欠品を予防しています。Waycool は充足率95%以上(顧客である小売店・飲食店からの需要量に対し、欠品の割合が5%以下)を維持しており、迅速な供給が可能です。
小売店・飲食店にとっては、必要なものを必要な時に購入できるメリットがあります。これにより、店頭での欠品や原料不足による稼動率低下を防いだり、過剰な在庫を持たないことで管理コストを低減し、収益性を改善したりする効果が期待できるでしょう。
【品質管理】20以上の検査項目で品質担保
Waycool は、農産物を仕入れてから顧客へ納品するまでの間に、20以上の品質検査項目を設けています。これにより、高品質で鮮度の良い農産物を供給でき、小売店や飲食店だけでなく最終消費者の安心感や満足度も高められるでしょう。
Waycool は品質検査技術への投資にも積極的です。2021年現在、情報技術の産業利用を推進するインドの公的機関(Indian Institute of Information Technology, Design and Manufacturing; IIITDM)と提携し、農産物の鮮度を光学技術によって調べる技術を開発しています。この技術が導入されれば、作物を切ったり触れたりせずに、熟し具合や腐敗の有無を検査できるようになります。より素早く正確な検査技術の導入が進めば、Waycool を利用する小売店・飲食店の増加にも寄与するでしょう。
自社ブランド開発で事業を広げる
充実した供給網を活かして、Waycool では自社ブランドの開発も進めています。農業や食品加工業との連携、インド国外への輸出などにより、Waycool の知名度や社会的影響力を高める要因になるかもしれません。
Waycool のブランドの一部を、以下で紹介します。
- KitchenJi:ココナッツオイルやゴマ油、ピーナッツオイルなど、食用油のブランドです。高品質志向、健康志向に対応しています。
- Dhaanyaa:インドで伝統的に用いられている、スープやカレーの材料である「ダール」(豆を挽き割りして作る粉末)のブランドです。厳選した栽培農家のみから豆を仕入れて加工しています。
- L’exotique:生鮮果実のブランドです。インドで栽培されたマンゴーやザクロ、国外から輸入されたリンゴ、オレンジ、キウイフルーツなどを取り扱っています。
まとめ
農家で作られた作物は、小売店や飲食店を通して最終消費者の手に渡ることで、初めて収益になります。 Waycool は農家から最終消費者までを繋ぐ「サプライチェーン」の間に入り、充実した調達網と供給網、先端技術を用いた在庫管理と品質管理体制によって農家、小売店、飲食店の収益性向上に役立っています。
Waycool のような流通に関わる企業の働きは、最終消費者の目からは見えにくいものです。しかし、高品質で鮮度の高い農産物を大規模店舗から個人商店まで行き渡らせることで、最終消費者の満足度の向上にも寄与している、重要な働きを担っています。
URL
- Waycool https://www.waycool.in/about/management-team/
- WayCool Foods | Linkedin https://www.linkedin.com/company/waycoolfoods/
- WayCool Foods bets big on technology | IndianRetailer.com (2021年6月2日) https://www.indianretailer.com/news/waycool-foods-bets-big-on-technology.n10892/
- インドの零細商店をデジタル化する3つの方法 | 日本経済新聞(2020年11月2日)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65565920Y0A021C2000000/