データは「量」より「連携」が大切。農業のサプライチェーンマネジメントを支援する centricity のシステムを紹介します。

製品が消費者に届くまでの、モノ・お金・情報の流れを一元管理する活動が「サプライチェーンマネジメント」です。農業においても、経営改善やトレーサビリティ確保のために実施されています。

サプライチェーンマネジメントでは、他業者とのデータ連携が必要です。そのため、膨大なデータを蓄えるだけではなく、データの一貫性を保ちながら共有するシステムが欠かせません。そこで本記事で紹介する centricity は、農家から小売業者までの情報共有を支援するシステムを提供し、2万件の農場で採用されています。サプライチェーンマネジメントについて概観し、centricity のシステムを導入するベネフィットを見てみましょう。

centricity 基本情報

住所:US 98801 Washington Wenatchee 819 N Miller St

CEO:Drew Zabrocki

設立:2012年

従業員数:11〜50人

サプライチェーンマネジメントとは

生産から消費までのモノ・お金・情報の流れを管理

サプライチェーンマネジメントとは、製品が生産、流通、小売を経て消費者へ届くまでの、モノ・お金・情報の流れを一元管理する活動のことです。つまり、ある製品の在庫がどれだけあり、どの業者にいくらで卸され、どのような流通経路をたどり、どのような管理基準で扱われたのか、といった履歴を管理します。

サプライチェーンマネジメントを導入することで、生産者には以下のメリットがあります。

  • 適正な在庫量を維持できる。
  • 生産計画をデータにもとづいて策定できる。
  • 商品のトレーサビリティを保証しやすいため、販路開拓で有利になる。
  • 販売チャネルごとの収益への貢献度が分かる。
  • 需要動向を把握して、品目転換や設備投資などの判断材料にできる。

業者間の情報共有に伴う課題

サプライチェーンマネジメントでは、生産から小売までに携わる業者どうしで情報共有する必要があります。つまり、ただ膨大なデータを蓄えているだけでは意味がなく、データを連携させなければなりません。そのためには、以下の課題を解消してくれるソフトウェアが必要です。

  • データインテグリティ:商品や収益に関する情報に一貫性があり、業者間で矛盾しておらず、内容が正確である必要があります。
  • データの互換性:異なるソフトウェアを採用している業者どうしでもデータを連携できるように、データをやり取りする窓口(Application Programming Interface; API)が必要です。
  • セキュリティとの両立:顧客情報や技術情報が漏れないように、必要最小限のデータだけでサプライチェーンマネジメントの仕組みを構築しなければなりません。

centricity のサプライチェーンマネジメントシステム

大切なのはデータの「量」ではなく「連携」

centricity では、農業の情報化における課題はデータの「量」ではなく「連携」だと考えています。たとえば圃場にセンサーを設置して膨大なデータを収集しても、卸売業者や小売業者と共有できなければ、品質と安全性の裏付けになりません。

特に農家と小売業者の間での情報断絶を解消することを、centricity は重視しています。サプライチェーンマネジメントは主に製造業で取り入れられているため、食品加工業者と物流・卸売業者の間では情報共有が盛んです。しかし、食品加工よりさらに上流に位置する農家は、小売店に並ぶ最終製品と紐付けられていないケースがあります。農家が最終製品の需要動向を把握し、小売業者が農作物のトレーサビリティを保証するには、農家から小売業者までを繋ぐシステムが必要です。

農業から小売までを繋ぐシステムを構築

そこで centricity は、農家から小売業者までの情報共有をサポートするため、以下のアプリケーションを提供しています。

  • Apraces:在庫管理や作業統制をサポートします。パソコンやタブレットで操作できるため、紙ベースの管理を減らせます。
  • Binder:圃場データを収集し分析します。AIが自動でレポート出力してくれるので、必要な時に素早く報告書を作成できます。
  • Liberty:異なるソフトウェア間でデータを共有するインターフェース(API)です。業者間での情報共有とデータインテグリティの確保に欠かせません。

各業者の視点で見たベネフィット

centricity のシステムでサプライチェーンマネジメントをおこなうと、農家以外の業者にも恩恵があります。各業者の視点で見たベネフィットの例を以下に挙げます。

  • 農家:需要動向を把握し、農業経営の改善に繋げられます。
  • 卸売業者:農作物の生産動向と需要動向を把握し、より効率的に買い付けられます。
  • 食品加工業者:農作物の品質や安全基準に関する情報が得られ、自社製品の品質管理・保証に活用できます。
  • 小売業者:農作物のトレーサビリティ情報を消費者に提供し、顧客の獲得や維持に繋げられます。

農家から小売業者までを繋げる機能が評価され、centricity のシステムは約2万件の農場約4500件の組織(農業団体、出荷組合など)に採用されています。

まとめ

企業の生産活動を効率化するうえで重要な、サプライチェーンマネジメント。農業においても、収益性向上やトレーサビリティ確保のために導入が進んでいます。centricity のシステムは、農家から小売業者までのモノ・お金・情報の流れを繋ぐことで、事業者の経営改善と消費者の安心を両立してくれるでしょう。

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