タイ発RegenSoil、微生物活性化バイオチャーで土壌を100%代替する培地を開発

培地として広く使われるココピートやロックウールは、定期的な交換や廃棄処理が運用コストの一因となってきました。タイ発のスタートアップ「RegenSoil」は、微生物を活性化させたバイオチャー(生物炭)だけで土壌を100%代替できると主張する培地ソリューションを開発し、養液栽培や施設園芸の現場に新しい選択肢を提示しています。本記事では、その技術と事業の概要を整理します。

会社基本情報

RegenSoilはタイを拠点とするアグリテックスタートアップです。創業者のジェニファー・イネス=テイラー(Jennifer Innes-Taylor)氏自身が農家であり、家族はタイ北東部で長年にわたり有機農業を営んできました。同氏の家族は約30年にわたって土壌が劣化していく様子を目の当たりにし、およそ10年前から再生型農業(リジェネラティブ農業)へと取り組みを移しています。土壌をより早く再生する方法を模索する中で、イネス=テイラー氏が開発したのが、機能を強化したバイオチャー培地です。

事業概要

RegenSoilの中核製品は、微生物を接種して生物学的に活性化させたバイオチャーです。バイオチャー(生物炭)は炭素を多く含む多孔質の素材で、農業資材として古くから知られていますが、同社はそのままでは培地として不十分だと考えています。同社の製品は、以下のような工程を経て製造されます。

  • 微生物の接種:自社で培養した微生物をバイオチャーに接種する
  • pH調整:バイオチャーのpHを下げる処理を施す
  • ミネラル添加:リン酸カルシウムなどのミネラルを加え、養分の利用性を高める
  • 堆肥化:処理したバイオチャーを堆肥化し、生物学的な活性を引き出す

イネス=テイラー氏は、この一連の処理によってバイオチャーの中でまず細菌が増え、続いて原生動物や線虫が定着し、養分を放出・保持する微生物の生態系が形づくられると説明しています。同氏は「バイオチャーだけでは不十分です。微生物を接種すると、はるかにうまく機能することが分かりました。そのとき初めて養分が放出され、保持されるのです」と述べています。

課題と解決策

従来、バイオチャーは培地全体の10〜20%程度の割合で混ぜて使うのが一般的でした。RegenSoilは配合比率を50%、75%と段階的に高めて検証を重ね、最終的にバイオチャーだけで栽培を成立させる100%の無土壌培地としての配合を実現したと主張しています。イネス=テイラー氏は「鍵となるのは処理の工程です。バイオチャーが適切に接種されていなければ、かえって植物から養分を奪ってしまうこともあります」と、処理工程の重要性を強調します。

同社は、レタス・トウガラシ・バナナ、さらに各種の室内向け植物でこの培地を試験してきました。レタスのような生育の早い作物では、1〜2週間で効果が確認できるとしています。

耐用性も同社が訴求するポイントです。バイオチャーは急速には劣化しないため、交換頻度を抑えた手間の少ない培地になり得ます。イネス=テイラー氏は「それはもう劣化しません。純粋な炭素です。潜在的には500年から1,000年は持つ可能性があります」と述べています。長期間にわたり繰り返し使えれば、培地の交換・廃棄にかかる手間とコストの削減につながると位置づけています。

一方で、普及には課題も残ります。同社は、市場に出回る未処理のバイオチャーで一貫した結果が得られないケースがあることから、農家や生産者の多くが懐疑的であると認めています。実際に試してもらわなければ利点を伝えにくい、という点が普及上のハードルになっているとしています。

ビジネスモデル

RegenSoilは現在、ECチャネルを通じて製品を販売しており、事業の拡大に向けて準備を進めています。今後の成長領域として、同社は次の方向性を挙げています。

  • 小規模農家:土壌劣化が大きな制約となっている層への展開
  • 都市農業:屋上菜園や農場直送型レストランなど、労力や投入資材の削減を求める用途
  • 環境制御型農業:温室やハイテク型の都市農業システムなど、制御された環境での栽培

今後の計画

RegenSoilは、廃棄物を炭素ネガティブな製品へと転換する同じくタイのスタートアップ「Enable Earth」と連携しています。バイオチャーの原料となるバイオマスの供給や製造規模の拡大を見据えた協業と位置づけられており、同社は小規模農家から都市農業、環境制御型農業まで顧客層を広げていく方針です。

コメント

日本の養液栽培や施設園芸の現場では、ココピートやロックウールといった培地の交換・廃棄が運用上の負担となっています。RegenSoilが主張する「微生物で活性化したバイオチャーによる100%無土壌栽培」と長期の耐用性が、再現性をもって実証されれば、培地コストの構造そのものを見直す切り口になり得ます。ただし「100%代替」「500〜1,000年の耐用年数」といった主張はいずれも同社自身によるものであり、作物や栽培環境を変えても安定して成り立つかは、第三者による検証や日本の気候・栽培体系での試験を経て見極めていく必要があります。培地の選択肢を広げる動きの一つとして、今後の実証データに注目したいところです。

参考URL

  • Soilless solution: RegenSoil claims breakthrough biochar growing medium that replaces soil 100% リンク
  • A 3-in-1 solution: Enable Earth envisions circular model to turn Thailand’s farm waste into revenue リンク