航空機やドローンからの観測データをもとに作物の生育・収量を知る。NASA向けのシステム開発実績も持つGeovisual を紹介します。

リモートセンシングで得たデータを解析するには、計算のためのアルゴリズム開発、人工知能による機械学習などの技術が求められます。それらの技術開発に多くのベンチャー企業が参入していますが、その中でも Geovisual Analytics は比較的歴史が長い企業であり、NASA向けにシステム開発した実績もあります。本記事では、Geovisual の技術がもたらす農業へのメリットを解説します。

Geovisual Analytics 基本情報

住所:US 80031 Colorado Westminster

CEO:Andrew McGregor

設立:2010年

従業員数:2〜10人

解析技術で圃場の状態を知る

Geovisual は、航空画像などのデータ解析および機械学習に強みを持つ、システム開発企業です。上空から撮影された画像をもとに、作物の生育状況を分析し、収量を予測して栽培管理方法を提案するプラットフォームを農家に提供しています。

作物の生育状況を解析する技術は、もともとNASA向けに開発されたものでした。そのノウハウを活かし、他のベンチャー企業との協業で一般農家にもサービスを広げています。

同様の技術を持つベンチャー企業は近年数多く誕生しており、競争が激化しています。そのような中で、Geovisual は2010年設立という比較的歴史の長い企業です。NASA向けのシステム開発、リモートセンシング企業との協業などの実績があり、業界内での先行者優位を築いてきました。

航空撮影技術との組み合わせ

航空機・ドローンによる継続的観測

2017年にGeovisual は、上空からのリモートセンシング技術を持つベンチャー企業・Aeroptic との協業を始めました。Aeroptic は航空機やドローンによる圃場の観測を得意としており、そこで得られたデータをGeovisual が解析して農家が活用しやすくするというものです。

獲得したデータは、Geovisual が開発した独自のアルゴリズムで解析され、作物の生育状態、健康状態をモニタリングし、収量を予測できます。栽培する作物の品目によってカスタマイズ可能なので、農家ごとに必要な情報が得られます。

施肥管理と収穫タイミングの決定に活用

得られた解析結果をもとに、農家は作物の施肥管理を合理化できます。肥料などの資材を投入した量が、予想収量にどの程度影響したかが分かるので、過剰な投入を防いだり、収量が落ちやすい圃場へピンポイントに肥料を施したりできます。

また、作物の生育状況をもとに収量の予測もできるため、収量が最大化できるようなタイミングで収穫をおこなうよう作業計画が立てられます。

食品廃棄の削減への期待

適切な施肥管理と収穫タイミングで廃棄を予防

Geovisual は、産業の持続可能性に関する企業理念として「Zero Waste Farming」(廃棄の生じない農業)を掲げています。

米国では、生産された食糧の40%が廃棄されており、世界全体で集計した値(30%)を上回ります。金額ベースでは年間 $2千億以上もの食糧が廃棄されており、加工・消費段階だけでなく農地での生産段階でも廃棄が発生しています。

農地で作物が廃棄される大きな原因は、収穫タイミングにおける生育のバラツキです。同一圃場でも場所によって環境が異なるため、圃場全体で同じ施肥管理をすると、生育状況にムラが出る場合があります。その結果、収穫時点で既に育ちすぎていたり、まだ未熟であったりする作物が発生し、廃棄されてしまいます。

Geoviual は、データに基づいた栽培管理によって生育のバラツキを減らし、適切な収穫タイミングを予測することで、農地での廃棄削減を目指しています。

NASAからも出資

農作業の合理化と廃棄削減に貢献すること、解析技術の研究開発力の高さなどが評価され、Geovisual には様々な機関やベンチャーキャピタルが出資しています。Geovisual は2017年時点で$127万の資金調達に成功しており、その中にはNASAからの出資も含まれています。

調達した資金は、データ解析に用いる人工知能の研究開発などに投資されています。

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