Seascape Aquatech:ロボティクスでカキ養殖の全工程を自動化する米国スタートアップ

会社基本情報

  • 会社名:Seascape Aquatech Inc.
  • 所在地:米国ニューヨーク州イーストハンプトン
  • 設立:2024年
  • 代表者:John Nicholas(President)、Mitchell London(CEO)
  • 従業員数:11〜50名
  • 公式サイトhttps://www.seascapeaqua.com/

John Nicholas氏はウォール街で20年以上の投資・経営マネジメント経験を持つ起業家であり、Sunset Cove Marinaのオーナー兼East Hampton Oyster Co.の創業者でもあります。カキ養殖の現場を知り尽くした人物が、ロボティクスで業界を変えようとしています。

事業概要

Seascape Aquatechは、カキ養殖の全工程を自動化するロボティクス・システムを開発しています。対象は稚貝の育成(ナーサリー)から養殖・収穫・選別・加工・出荷まで、一連の工程すべてです。

同社が開発・再設計しているのは以下の設備です。

  • ドック用フローティングアップウェラー(稚貝育成装置)
  • 養殖用フロート・ベッド
  • 自律型ロボットボート(ケージの点検・洗浄・反転・冬季管理)
  • タンブラー(カキの転がし装置)
  • 選別テーブル・洗浄機
  • 加工・袋詰め・デジタルトラッキングシステム

どういう課題をどう解決しているか

カキ養殖が抱える課題

サケやエビの養殖では自動化が進んでいるのに対し、カキ養殖は依然として手作業に大きく依存しています。カキ養殖で最も重要なのは水流の維持です。メッシュバッグに藻が付着すると水流が妨げられ、カキの生育に悪影響が出ます。そのため、養殖業者はバッグやカキを定期的に洗浄する必要がありますが、これが極めて労働集約的な作業です。

Seascape Aquatechのアプローチ

同社は24時間365日稼働可能な機械式システムで、この課題を解決しようとしています。人手では水深12〜18インチ(約30〜45cm)程度しか作業できませんが、機械化により36インチ(約90cm)の深さまで対応でき、同じ面積から生産量を2倍にすることが可能です。

既存のカキ養殖自動化技術としては、ニュージーランドのFlipFarm Systemsがバッグ反転の半自動化システムを開発し、世界12カ国・70以上の養殖場で導入されています。しかし、FlipFarmはバッグの反転工程に特化しているのに対し、Seascape Aquatechはナーサリーから出荷までのフルサイクル自動化を目指している点が大きな違いです。

ビジネスモデル

Seascape Aquatechは、自社技術を利益の源泉かつM&A(企業買収)のテコとして活用する戦略を掲げています。3段階のフェーズで事業を拡大する計画です。

  • フェーズ1:250万ドルを調達し、イーストハンプトンの自社農場で技術を実証する
  • フェーズ2:250万〜500万ドルを追加調達し、農場の拡張と機械の製造を加速させる
  • フェーズ3:2,000万ドル規模のロールアップファンド(主にデット・ファイナンス)を組成し、米国内の約3,000あるカキ養殖場のうち6〜8カ所を買収する

投資家はR&Dに資金を提供する一方、将来の生産拠点の所有権を得るという仕組みになっています。2025年12月には250万ドルのInitialラウンドで資金調達を行っています。

今後の計画

現在、コア機械は陸上での稼働テストを完了しており、海水環境でのオープンウォーター・テスト段階に入っています。塩水による腐食対策が当面の技術課題です。

また、同社は2025年にBlue InstituteのBLUE Excelerator Program(BX5 2025コホート)に選出されており、アクアカルチャー分野でのアクセラレーション支援を受けています。

技術の実証が完了した後は、フェーズ2・3に移行し、複数のカキ養殖場への技術展開と買収による急速なスケールアップを目指しています。

コメント

カキ養殖の自動化は、サケやエビといった他の養殖分野と比べて明らかに遅れている領域です。FlipFarm Systemsがバッグ反転という単一工程の自動化で成功を収めている一方、Seascape Aquatechはフルサイクルの自動化を狙っています。

注目すべきはビジネスモデルの設計です。単なるテクノロジー企業ではなく、自社技術で武装した養殖事業者として農場を買収・統合していくロールアップ戦略は、テクノロジーの収益化をより確実にする可能性があります。CEOのJohn Nicholas氏がウォール街出身であることを考えると、金融的なアプローチでの事業構築は同氏の強みを活かした戦略と言えるでしょう。

一方で、海水環境でのロボット稼働という技術的ハードルや、250万ドルという初期資金で技術実証とファームオペレーションを両立させる点は、今後の注視ポイントです。

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