【スマート土壌診断】IoTセンサーで土の状態をリアルタイムで観測。広大な圃場の土壌診断を変える、Teralytic の技術とは。

栽培結果を左右する土壌診断。定期的な実施が必要ですが、土壌サンプリングの労力が大きく、分析を外注すると時間やコストもかかります。そこで Teralytic は、地面にセンサーを埋め込むことで継続的に土壌の状態を観測できるサービスを提供しています。遠隔地からでも、リアルタイムな土壌診断が可能になるでしょう。さらに、機材を購入するのではなく、定額料金で借りられるサブスクリプション方式。より少ない初期投資で、最先端のスマート土壌診断を導入できます。

Teralytic 基本情報

住所:2120 University Ave., Berkeley, CA, United States, 94704

CEO:Steve Ridder

設立:2016年

従業員数:10〜50人

土壌診断とは?

土の健康状態をモニタリングし、改良する

作物の生育には土壌中の養分、湿度、通気性などが影響します。作物にとって理想的な土の状態を作るために、農地の土壌を採取・分析するのが土壌診断です。

土壌診断の結果をもとに、作物の生育に適した土づくりをするのが土壌改良です。足りない肥料分を補ったり、土が硬すぎる場合は堆肥を加えたりすることで、土壌の化学的・物理的な性質を改良します。

サンプリングと分析の労力が課題

土壌診断は作物の収量・品質を高める大切な作業ですが、継続的に行うには課題もあります。

  • 圃場の複数か所から土壌をサンプリングするのに人手と時間がかかる。
  • 分析機関にサンプルを提出する場合、結果が出るまでに時間がかかる。
  • 値が変動しやすい項目(pH、EC値など)を頻繁に分析すると、コストがかさむ。

このような課題があるため、土壌を頻繁にサンプリングして分析を外注するのは困難です。しかし、こまめに土壌診断をおこなわなければ、養分の欠乏や肥料の過剰投入の原因になります。そこで活躍するのが、本記事で紹介する Teralytic のセンサーです。

土壌診断をIoT化する Teralytic の技術とサービス

センサーを地面に突き刺して継続的に観測

Teralytic が提供してるのは、地面に設置することで継続的に土壌診断できるセンサーです。これにより、土壌のサンプリングや分析にかかる手間と時間が大幅に軽減されます。

センサー本体は長さ約1mのボルトのような形をしており、これを圃場の地面に突き刺して使います。地面に埋め込まれる部分には、地表から15cm、45cm、91cmの3か所にセンサーが設置されており、各深度のデータを取得可能です。

センサーは以下のデータを15分おきに取得します。いずれも作物の生育に影響する指標であり、なおかつ値が変動しやすいため、頻繁な検査が推奨されるものです。

  • 湿度
  • 電気伝導度(EC値)
  • 通気性
  • 土壌呼吸(土壌から発生する二酸化炭素の量)
  • 地温
  • pH
  • 三大栄養素(窒素、リン酸、カリウム)含量

スマートフォンとワイヤレス通信

圃場に設置したセンサーは、無線通信でパソコンやスマートフォンにデータを送信します。専用のアプリケーションをインストールすることで、日々の計測値がいつでも確認可能です。さらに、土壌の状態に異常が見られた場合はアラートが送られるため、早期対応できます。

センサーとの通信には、LoRaWANというワイヤレス通信規格を使います。LoRaWANはIoTに使われる規格で、以下のメリットがあります。

  • 100km以上の長距離通信が可能
  • wifiや3Gに依存せずに通信環境を構築できる
  • 920MHz帯を利用するため、wifiの2.4GHz帯と干渉しにくい。

サブスクリプション方式で初期費用低減

土壌分析用のセンサーや分析機器を保有しようとすると、初期導入にかかる費用が障壁です。そこで Teralytic は、ユーザーの初期費用を低減させるためにサブスクリプション方式を採用しています。一定期間定額料金を払うことで、センサー本体や通信機器をレンタルで使えます。機器を購入するよりも少ない費用で導入できるため、土壌診断がより手軽にIoT化できるでしょう。

Teralytic のセンサー導入に必要なもの

Teralytic のセンサーを導入するには以下の機材が必要です。センサー本体とソフトウェアはサブスクリプション方式で利用できます。

  • センサー本体:長さ約1mのボルトのような形をしており、地面に突き刺して設置します。一台あたりの利用料は1年契約で $1,200、3年契約で$1,500 です。
  • 設置用工具:センサー本体を地面に埋め込むための工具です。価格は $600 です。
  • LoRaWAN ゲートウェイ:センサーとパソコン・スマートフォンの通信を中継する機材です。価格は $2,500 です。
  • 解析用ソフトウェア:センサーから送られてきたデータを閲覧するソフトウェアです。窒素、リン酸、カリウムの含量が地図上に表示されます。利用料は年間 $500 です。

まとめ

作物の収量・品質を上げるためには、良い土壌づくりが欠かせません。しかし、広大な圃場から満遍なく土壌をサンプリングし分析するのは労力がかかるもの。そこで Teralytic は、地面に埋め込むことで継続的に土壌のデータを取得できるセンサーを提供しています。サンプリングが必要なく、15分ごとの土壌データを遠隔地から確認できます。広大な圃場を管理する企業的農家にとって、画期的な土壌診断ツールとなるでしょう。

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