農業用環境制御システム比較|主要メーカーの機能・価格・特徴まとめ
施設園芸において、温度・湿度・CO2濃度・日射量・灌水などを自動で管理する環境制御システムは、収量アップと省力化の要です。本ページでは、国内外の主要メーカーの環境制御システムを比較し、機能・価格帯・特徴をまとめました。環境制御システムの基本的な仕組みについては「環境制御システムとは?環境制御システムのできることやメーカーを紹介」をご参照ください。
環境制御システムの選び方
環境制御システムを導入する際には、以下のポイントを比較検討することが重要です。
制御対象で選ぶ
環境制御システムによって、制御できる項目は異なります。主な制御対象は以下のとおりです。
- 温度:暖房機・ヒートポンプ・換気窓・循環扇などによるハウス内温度の調整
- 湿度:ミスト装置・換気窓制御・除湿機による湿度管理(飽差管理を含む)
- CO2濃度:CO2発生装置の制御による光合成促進
- 日射・遮光:カーテン・遮光資材の自動開閉
- 灌水・施肥:電磁弁制御による自動灌水、液肥混入の自動化
潅水施肥の自動化のみが必要なのか、ハウス内の気温・湿度・CO2を含む「統合環境制御」が必要なのかによって、選ぶべきシステムは大きく異なります。
対応施設で選ぶ
- パイプハウス(ビニールハウス):小〜中規模の施設。低価格帯のシステムが適しています
- 鉄骨ハウス:中〜大規模の施設。多機能な統合環境制御システムが活かせます
- 植物工場:完全閉鎖型の施設。高精度な制御が必要で、海外製の大規模システムも候補に入ります
価格帯で選ぶ
環境制御システムの価格帯は幅広く、導入費用だけでなくランニングコストも考慮する必要があります。
- 低価格帯(100万円前後〜):ポケットファーム、e-minori plusなど。小規模ハウス向け
- 中価格帯(200〜500万円程度):ネポン MC-6001、プロファインダーNext80、デンソー Profarm Controllerなど。統合環境制御が可能
- 高価格帯(数百万〜数千万円):Priva、Ridder、Hoogendoornなどの海外メーカー製品。大規模施設・植物工場向け
センサー・アクチュエーター連携で選ぶ
既存のハウス設備との連携可能性も重要な選定基準です。特に既にハウスに暖房機やカーテンモーターなどの設備がある場合、それらと接続できるかどうかを確認しましょう。UECS(ユビキタス環境制御システム)などのオープン規格に対応した製品であれば、異なるメーカーの機器同士を連携させることも可能です。
主要メーカー比較表
| メーカー / 製品名 | 国 | 主な制御対象 | 対応施設規模 | 特徴 | 価格帯目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 細野ファーム / ポケットファーム | 日本 | 温度・湿度・CO2・カーテン・窓・ミスト | 小規模(10〜30a) | 農家が開発した低価格モデル。スマホ操作に特化 | 約120万円〜(施工費込み) |
| DPT / e-minori plus | 日本 | 温度・湿度・CO2・日射・土壌・灌水機器 | 小〜中規模 | 設置工事不要。購入・レンタル選択可。IP64対応 | 要見積り(レンタルあり) |
| ネポン / 環境制御盤 MC-6001 + アグリネット アドバンス | 日本 | 温度(8段階)・湿度・CO2・カーテン(4軸4層)・換気窓 | 中〜大規模 | 施設園芸の老舗。暖房機・ヒートポンプとの一体運用 | 中価格帯(要見積り) |
| 誠和 / プロファインダー Next80 | 日本 | 温度・湿度・CO2・日射・灌水(最大12系統+灌水1系統) | 中〜大規模 | 自社農場の栽培知見を反映。きめ細かな温度管理 | 中価格帯(要見積り) |
| デンソー / Profarm Controller | 日本 | 温度・湿度・CO2・光・養水分・風 | 中〜大規模 | 自動車の空調技術を農業に応用。予測制御搭載 | 中価格帯(要見積り) |
| クボタ(ルートレック) / ゼロアグリ Plus | 日本 | 灌水・施肥(AI制御)・天窓・カーテン・CO2・加温機 | 小〜大規模 | AI灌水施肥に環境制御を統合。3モデル展開 | 約120万円〜 + 年間12万円 |
| パナソニック / Smart菜園’s クラウド | 日本 | 温度・湿度・CO2・日射・灌水・カーテン・換気窓 | 中〜大規模 | クラウド型統合制御。最大10システム一括管理 | 中〜高価格帯(要見積り) |
| Priva / Connext | オランダ | 気候・灌水・エネルギー・照明・CO2を統合管理 | 大規模(最大250区画) | 世界最大手。全エネルギーフローを一元管理 | 高価格帯 |
| Ridder / HortiMaX Pro | オランダ | 気候・灌水・エネルギーの統合制御 | 中〜大規模 | オープンアーキテクチャ。HortiMaX Goは低価格モデル | 中〜高価格帯 |
| Hoogendoorn / IIVO | オランダ | 気候・CO2・灌水・エネルギーの統合制御 | 中〜大規模 | 予測制御と自律栽培支援。iSiiの後継機 | 高価格帯 |
| Argus Controls / Axia | カナダ | 気候・灌水・養液・照明の統合制御 | 大規模・研究施設 | 1984年創業。研究機関での導入実績豊富 | 高価格帯 |
各メーカー・製品の詳細
ポケットファーム(細野ファーム)
ポケットファームは、トマト農家である細野ファームの代表が自ら開発した環境制御システムです。10〜30aの中小規模ハウスをターゲットに、「農家が本当に使いやすいシステム」をコンセプトに設計されています。
スマートフォンからの直感的な操作を重視しており、グラフ付きの画面でハウス内環境をリアルタイムに確認できます。カーテン・換気窓・循環扇・ミスト・ヒーター・CO2発生装置などの制御に対応し、時間帯や温度・湿度・CO2濃度を条件として自動運転を設定できます。
最大の特徴は価格の手頃さです。初期費用は1棟(30aまで)で100万円(税別)、施工費は約20万円程度、月額利用料は2,500円と、他の統合環境制御システムと比較して大幅に低い導入コストを実現しています。
e-minori plus(DPT / ディーピーティー)

e-minori plusは、ディーピーティー株式会社が提供するビニールハウス内環境制御システムです。「はかる・ためる・みる・つかう」の4つの機能を軸に設計されています。
ハウス内の温度・湿度・CO2濃度・照度・日射量・飽差・露点温度・絶対湿度、土壌の温度・含水率・EC、ハウス外の温度・湿度・雨量・風向・風速・日射量・紫外線を測定可能です。測定データは自動でクラウドにアップロードされ、PCやスマートフォンから確認できます。
暖房機やCO2発生器、電磁弁などの遠隔操作にも対応しています。設置工事不要で届いたその日から使える手軽さと、IP64相当の耐久構造が特徴です。購入とレンタルの2つの導入方法があります。
- 公式サイト:e-minori plus 公式サイト
環境制御盤 MC-6001 + アグリネット アドバンス(ネポン)

ネポン株式会社は、施設園芸用の暖房機メーカーとして長い歴史を持つ企業です。環境制御盤MC-6001は、同社の統合環境制御の中核製品です。
MC-6001は、8段階の温度管理が可能な換気窓制御、4軸4層のカーテン制御、暖房機とヒートポンプを連動させた冷暖房制御、CO2制御、湿度制御(飽差管理・クイックドロップ対応)を1台で集中管理できます。シンプルタイプから多機能タイプまで、ハウスの規模に合わせて選択可能なラインナップを展開しています。
クラウドサービス「アグリネット アドバンス」と連携することで、スマートフォンやPCからハウス内の環境データを確認し、遠隔で機器を操作できます。複数ハウスの一括管理にも対応しています。自社の暖房機・ヒートポンプ「グリーンパッケージ」との一体運用ができることも強みです。
- 公式サイト:ネポン 環境制御機器
- アグリネット:アグリネット アドバンス
プロファインダー Next80(誠和)

株式会社誠和は、施設園芸の総合メーカーとして知られ、自社農場で得られた栽培知見を製品開発に活かしています。プロファインダーNext80は、同社の統合環境制御システムの最上位モデルです。
ハウス内に設置した通風式温湿度・CO2センサー、日射センサー、培地温センサーなどでリアルタイムにデータを収集し、最大12系統のハウス設備と1系統の灌水を制御できます。ゆるやかな温度管理やカーテンのステップ動作設定など、きめ細かな環境制御が可能です。
プロファインダーシリーズで培ってきた「見やすい・わかりやすい」画面設計を継承しており、オプションの「どこでも80」サービスにより遠隔での監視・操作にも対応しています。
- 公式サイト:誠和 プロファインダーNext80
Profarm Controller(デンソー)
株式会社デンソーは、自動車のエンジンやエアコンで培った空調制御技術を農業に応用し、Profarm Controllerを開発しました。愛知県豊橋市の農業資材販社トヨタネとの共同で展開しています。
ハウス内外のセンサー情報を活用し、光・養水分・CO2・温度・湿度・風の6要素を自動制御します。自動車の空調技術をベースにした予測制御が特徴で、センサー値の変化を先読みして制御することで、急激な環境変化を抑えた安定した栽培環境を実現します。
また、デンソーは換気窓をなくした強制換気型ハウス「Profarm T-Cube」も開発しており、換気ファンによる気流制御でハウス内の温度・湿度ムラを解消するソリューションも提供しています。
- 公式サイト:デンソー Profarm Controller
ゼロアグリ Plus(クボタ / ルートレック・ネットワークス)
ゼロアグリは、イスラエルの点滴灌漑技術をベースにAI(人工知能)で潅水と施肥を自動化するシステムです。開発元の株式会社ルートレック・ネットワークスは、2023年にクボタの連結子会社となりました。全国46都道府県で470台以上の導入実績があります。
ゼロアグリシリーズは3つのモデルで展開されています。
- ゼロアグリ Lite(エントリーモデル):予報日射量に応じたタイミング・量の自動潅水施肥
- ゼロアグリ Standard(スタンダードモデル):土壌水分と予報日射から蒸散量を推定し、より高精度な潅水施肥制御
- ゼロアグリ Plus(ハイエンドモデル):潅水施肥に加え、天窓・側窓・カーテン・循環扇・加温機・CO2施用機の統合環境制御
ゼロアグリ Plusは、既存の環境制御機器との連動が可能で、複数の制御盤を1つの管理画面に統合できるため、最小限のコストで統合環境制御を導入できる点が強みです。
- 公式サイト:ゼロアグリ
- クボタ製品ページ:クボタ ゼロアグリシリーズ
Smart菜園’s クラウド(パナソニック)
Smart菜園’s クラウドは、パナソニック環境エンジニアリング株式会社が提供するクラウド型の統合環境制御システムです。
ハウス内に設置した専用制御盤を通じて、温度・湿度・CO2濃度・日射量などの環境情報を収集し、天窓・カーテン・暖房機・CO2発生装置などの機器を統合的に制御します。全てのセンシングデータを毎分クラウドに記録し、PCやスマートフォンからいつでも確認できます。
最大10システムの一括モニタリングに対応しており、ハウスに設置したネットワークカメラで葉脈レベルまでズームして状況を確認できます。パナソニックのオペレーターによる遠隔サポート体制も整備されており、営農支援団体から遠隔でアドバイスを受けながら栽培ノウハウをアップデートできます。
- 公式サイト:パナソニック Smart菜園’s クラウド
Priva Connext(Priva / オランダ)
Privaは、オランダに本社を置く施設園芸オートメーションの世界最大手企業です。Connextは同社の最上位モデルで、最大250区画のグリーンハウスを1つのシステムで管理できます。
熱・冷熱・電気・光・CO2・水といったすべてのエネルギーフローを一元管理し、インテリジェントなアルゴリズムによりエネルギー消費を予測・最適化します。RTR(Ratio Temperature to Radiation:日射比例温度管理)、PARストラテジー、調光式LED照明制御、電力取引サポートなどの高度な機能を備えています。
Privaはほかにも、中規模施設向けの「Compact CC」(最大27区画)、小規模施設向けの「Compass」(最大20区画)など、規模に応じた製品ラインナップを展開しています。
- 公式サイト:Priva Climate Computers
HortiMaX Pro / HortiMaX Go(Ridder / オランダ)
Ridder(リダー)は、オランダに拠点を置く施設園芸の総合ソリューション企業です。2011年にHortiMaX社を統合し、気候制御コンピューターの分野でも強い存在感を持っています。
HortiMaX Proは、気候・灌水・エネルギーの統合制御を実現するプロフェッショナル向け製品です。オープンアーキテクチャにより、他社のセンサーやシステムとの連携も容易です。モバイルアプリからのリアルタイム監視・操作にも対応しています。
HortiMaX Goは、低コストで導入できるエントリーモデルです。気候制御と灌水制御の2-in-1システムで、家族経営の農家から中規模施設まで対応可能です。シンプル・モジュラー・手頃な価格を特徴としています。
- 公式サイト:Ridder Climate Computers
IIVO(Hoogendoorn / オランダ)
Hoogendoorn Growth Managementは、オランダ発の施設園芸オートメーション企業です。長年主力製品だったiSiiプロセスコンピューターは2026年1月に販売を終了し、現在は次世代機「IIVO」に完全移行しています。
IIVOは「世界で最もスマートな温室制御システム」を標榜し、気候・CO2・灌水・エネルギーを統合的に管理します。センサーデータ、天気予測、過去の学習データを組み合わせた予測制御により、作物が必要とする環境を先回りして整えます。
IIVOは「ツール」「コーチ」「ガイド」の3つの役割を果たすプラットフォームとして設計されており、栽培経験を問わず全ての生産者をサポートします。導入事例では25%の効率改善と運用コスト削減が報告されています。
- 公式サイト:Hoogendoorn IIVO
Argus Axia / TITAN(Argus Controls / カナダ)
Argus Controlsは、1984年の創業以来、グリーンハウスや室内栽培環境の制御システムのパイオニアとして知られるカナダの企業です。大学・政府研究施設・商業園芸施設・植物工場・バイオサイエンス企業など、幅広い分野での導入実績があります。
Argus Axiaは、研究用・商業用グリーンハウス、植物工場、CEA(制御環境農業)向けに設計された最新のハードウェア・ソフトウェアソリューションです。加温・冷房・照明・灌水・湿度・気流など、あらゆるゾーンの細部まで制御できます。
TITANシステムは、温室全体を統合管理するパワフルなソリューションで、リアルタイムフィードバックと詳細なトレンド履歴を備えています。クラウドベースのTITAN Envoyにより、モバイルからの遠隔監視・操作も可能です。24時間365日の技術サポート体制も整備されています。
- 公式サイト:Argus Controls
まとめ
環境制御システムは、小規模ハウス向けの低価格モデルから大規模植物工場向けの統合システムまで、幅広い選択肢があります。選定のポイントは以下のとおりです。
- 小規模ハウスでコストを抑えたい場合は、ポケットファームやe-minori plusのような手頃な価格帯のシステムが適しています
- 中規模以上で本格的な統合環境制御をしたい場合は、ネポンMC-6001、プロファインダーNext80、デンソーProfarm Controller、ゼロアグリ Plusなどの国内メーカー製品が候補になります
- 灌水施肥の自動化から始めたい場合は、ゼロアグリシリーズのように段階的にアップグレードできる製品が便利です
- 大規模施設や植物工場で高度な制御が必要な場合は、Priva、Ridder、Hoogendoorn、Argus Controlsなどの海外メーカーも選択肢に入ります
いずれのシステムも、導入前には自身の栽培環境・作物・規模に合った製品を選ぶことが重要です。各メーカーの公式サイトやデモ環境を活用して、実際の操作感を確かめてみてください。
参考URL
- 環境制御システムとは?環境制御システムのできることやメーカーを紹介 – 先端農業マガジン
- 生産者がつくったものが一番使いやすい。低価格な環境制御システム「ポケットファーム」 – 先端農業マガジン
- e-minori plus 公式サイト – ディーピーティー
- 環境制御機器 – ネポン株式会社
- プロファインダーNext80 – 株式会社誠和
- Profarm Controller – デンソー
- ゼロアグリ – ルートレック・ネットワークス
- ゼロアグリシリーズ – クボタ
- Smart菜園’s クラウド – パナソニック
- Climate and Process Computers – Priva
- Climate Computers – Ridder
- IIVO – Hoogendoorn Growth Management
- Advanced Control Systems – Argus Controls