農業用遮光・遮熱剤の比較・選び方完全ガイド
遮光・遮熱剤とは
農業用の遮光・遮熱剤とは、温室(ガラスハウス・ビニールハウス)の外面や作物の葉面・果実面に施用することで、過剰な太陽光や熱から作物を保護する資材です。
夏季の強日射・高温環境では、以下のような問題が発生します。
- 温室内温度の過度な上昇による作物の熱ストレス
- 果実・葉面の日焼け(サンスカルド)
- 蒸散量の増加による水ストレス
- 光合成阻害と収量低下
- 品質劣化(着色不良・裂果・縮果など)
- ハウス用遮光剤散布 | ドローンワークゼロナイン
- 遮光剤×ドローン散布サービス | Inflight
- ファインシェードスカイ | アキレス株式会社
遮光・遮熱剤を適切に使用することで、温室内気温を最大5℃程度低下させ、作物の生育環境を改善することが可能です。散布・塗布はドローンや動力噴霧機で行うことができ、大規模施設でも効率的に施工できます。
種類の分類
塗布型(コーティング剤)
ガラスやプラスチックフィルムなどの温室被覆材の外面に直接塗布するタイプです。シーズン終了後は専用洗浄剤で除去可能な製品が主流となっています。希釈倍率を変えることで遮光率を調整できるため、季節や作物の光要求量に合わせた使い分けが可能です。
散布型(粒子状剤)
カオリン(白色粘土鉱物)などの無機粒子を水に分散させて葉面・果実面に散布するタイプです。主に露地栽培の果樹や野菜に使用します。太陽光を反射して植物体温度を下げるとともに、害虫忌避効果も持ちます。
シート型(遮光ネット・遮光フィルム)
物理的なネットやフィルムを温室の外側または内側に展張するタイプです。遮光率が固定されているものが多く、部分的な調整は難しいですが、耐久性に優れています。
製品比較表
| 製品名 | タイプ | 主な用途 | 特徴 | 製造元 |
|---|---|---|---|---|
| ReduSol | 塗布型(全スペクトル遮光) | ガラス・プラスチック温室 | 最大5℃の気温低下、耐雨・耐霜性、可視光・熱線ともに遮光 | ReduSystems(オランダ) |
| ReduHeat | 塗布型(熱線選択遮断) | ガラス・プラスチック温室 | 赤外線(780〜3000nm)を反射しながらPAR(光合成有効放射)を高透過 | ReduSystems(オランダ) |
| ReduFuse | 塗布型(拡散光) | 高光量要求作物の温室 | 光を拡散して冠部・中間葉まで均一に到達させ光合成量を向上 | ReduSystems(オランダ) |
| ReduFuse IR | 塗布型(拡散光+熱線遮断) | 高温・高光量地域の温室 | 拡散光効果と赤外線反射効果を兼ね備えたハイブリッド製品 | ReduSystems(オランダ) |
| SprayChalk | 塗布型(一時的補助) | 温室(夏季追加施用) | 極端な高温時に他の遮光剤に重ね塗りして遮光率を追加 | ReduSystems(オランダ) |
| Surround WP | 散布型(カオリン系) | 露地果樹・野菜 | 有効成分95%カオリン、植物体を最大8.3℃冷却、日焼け被害を最大50%低減、OMRI有機認定 | Tessenderlo Group(ベルギー) |
各製品の詳細
ReduSol(ReduSystems)
ReduSolは、オランダのReduSystems社が開発した代表的な温室用塗布型遮光剤です。可視光・赤外線を含む全スペクトルの太陽光を均等に遮断します。
- 遮光効果:塗布濃度(希釈倍率)によって遮光率を調整可能。春は薄め、夏は濃いめに塗布することで通年の作物管理に対応
- 気温低下:温室内平均気温を最大5℃低下させることが実証されています
- 耐候性:耐雨・耐霜性があり、降雨中は遮光率が一時的に低下して自然光を透過、晴れると再び遮光効果を発揮
- 対応被覆材:ガラス、アクリル、ポリカーボネート、プラスチックフィルム
- 除去:専用洗浄剤「ReduClean」で容易に除去可能(希釈液250リットル/ha以上)
- 施用量:手動散布で1,700〜2,000リットル/ha、機械散布で1,000〜1,500リットル/ha

ReduHeat(ReduSystems)
ReduHeatは、赤外線(熱線)を選択的に反射しながら光合成有効放射(PAR:400〜700nm)の透過率を高水準に維持する遮熱コーティングです。
- 選択的遮熱:赤外線(780〜3,000nm)を反射し、作物の光合成に必要なPAR光を高透過
- 光合成への配慮:熱ストレスを受けながらも光を活かして生産量を維持したい作物(トマト・パプリカ等)に最適
- 気候安定:換気必要量が減少し、温室内気候が安定する
- 耐候性:高い耐摩耗性を持ち、ReduCleanで容易に除去可能
ReduFuse・ReduFuse IR(ReduSystems)
ReduFuseは遮光よりも「光の拡散」を主目的とした製品です。直射光を拡散光に変換することで、温室上部だけでなく中間層・下葉まで均一な光が届き、キャノピー全体の光合成量が向上します。
- ReduFuse:拡散効果(ヘーズ)約72%(22バケツ/ha使用時)。光合成量の向上と熱ストレス軽減を両立
- ReduFuse IR:拡散効果に加えて赤外線遮断機能を追加。高温・高日射地域でも光合成を最大化
- 適用作物:ガーベラ、バラ、トマト、パプリカなど光依存度の高い花卉・野菜
Surround WP(Tessenderlo Group)
Surround WPは、有効成分95%のカオリン粘土を水に分散させた散布型の遮熱・作物保護剤です。主に露地の果樹・野菜の日焼け防止と害虫忌避に使用します。
- 有効成分:カオリン(白色粘土鉱物)95%。粒子径1.4ミクロンの特殊製法で高均一性を実現
- 冷却効果:植物体温度を最大8.3℃(15°F)低下させる効果が実証されています
- 日焼け防止:果実・葉面の日焼け(サンスカルド)被害を最大50%低減
- 有機農業対応:OMRI(有機資材審査機構)認定。有機農業でも使用可能
- 害虫忌避:白色粒子の物理的バリアで各種害虫の産卵・吸汁を妨害
- 適用作物:リンゴ・ナシ・ブドウなどの落葉果樹、柑橘類、ナッツ類、トマト、メロン等
- 施用量:初回施用は約23kg/100〜200ガロン/エーカー。以降は7〜21日間隔で継続散布
査読論文でも、カオリン散布が光合成・気孔コンダクタンスを改善しつつ葉温・蒸散量を低下させることが確認されています(Springer Nature, Frontiers in Plant Science等)。
選び方のポイント
施設タイプで選ぶ
- ガラス温室・ポリカーボネート温室:塗布型コーティング剤(ReduSol、ReduHeat等)が適しています。専用洗浄剤で残留なく除去できるため、冬季の採光量確保が容易です
- ビニールハウス(PE・PO):塗布型コーティング剤はフィルムにも使用可能ですが、表面の劣化状態を確認してから使用することを推奨します
- 露地・樹園地:散布型のカオリン系製品(Surround WP)が最適。作物への直接散布で果実・葉を保護します
遮光率・作物の光要求量で選ぶ
- 強光条件の抑制が優先(高遮光率):ReduSolを濃め(低希釈倍率)で塗布。全スペクトルを均等遮光するため汎用性が高い
- 光合成を維持しつつ熱だけを除きたい:ReduHeatまたはReduFuse IRを選択。赤外線を反射しながらPAR光を多く通すため、光合成を犠牲にしない
- 光の均一化も求める場合:ReduFuseまたはReduFuse IRを選択。拡散光効果で温室内の光分布が均一になり、下葉の光合成量が向上
散布方法で選ぶ
- 大規模温室(数ha以上):ヘリコプター・ドローンによる散布が効率的。ReduSystemsはドローン散布にも対応しており、均一な塗膜形成が可能
- 小〜中規模施設:動力噴霧機による機械散布または手動散布。手動散布の場合、液量が多く必要なため均一性に注意が必要
除去のしやすさ
秋以降に採光量を確保したい場合、専用洗浄剤(ReduClean等)で容易に除去できる製品を選ぶことが重要です。ReduSystems製品は全品ReduCleanで除去可能であることが公式に確認されています。
有機農業・認証対応
有機JASや海外有機認証(USDA Organic等)に対応する生産では、OMRI認定のSurround WPが有力な選択肢となります。ただし国内での農薬登録状況や使用基準は事前に確認が必要です。
ドローンで遮光剤を散布してくれる業者
遮光剤のドローン散布は、大型温室や工場・畜舎の屋根など、人が登って作業するリスクがある箇所や、広大な面積を短時間でカバーしたい場合に特に有効です。国内でも専業業者が増えており、以下のような選択肢があります。
ドローンワークゼロナイン
拠点:岡山県笠岡市
対応内容:農業用ビニールハウスへの遮光剤散布(遮光率20〜30%)。作物の葉焼け・しおれを軽減します。資材の手配も対応。
料金:0.5反(500㎡)あたり22,000円〜(税込、資材代込み)
使用機体:FLIGHTS-AG(タンク容量10L)
注意:除去作業は対応外。晴天・被覆資材の乾燥時に散布が必要。
連絡先:Tel 070-8371-1205(平日9:00〜17:00)
株式会社Inflight
拠点:愛知県豊橋市
対応内容:工場・畜舎・農業施設の屋根への遮光剤散布。屋根裏温度をおおよそ4〜7℃低減できると報告されており、空調コスト削減や家畜の熱ストレス軽減に活用されています。事前に散布エリアを撮影し、自動航行によって均一な散布を実現しています。
連絡先:Tel 090-4792-0320
ReduSystemsのドローン散布対応製品
ReduSystemsはドローン散布に対応した遮光剤の販売に加え、オランダ・ヨーロッパを中心にドローン散布の施工ネットワークを整備しています。日本国内での代理店・施工業者については、ReduSystems公式へ直接問い合わせることを推奨します。ReduSol・ReduHeat・ReduFuse・ReduFuse IRのいずれもドローン散布に対応しています。
ドローン散布専用製品:アキレス ファインシェードスカイ
国内メーカーのアキレス株式会社は、ドローン散布専用に開発した遮光剤「ファインシェードスカイ」を販売しています。希釈不要でそのままドローンのタンクに移して使用可能です。施工業者は別途手配が必要ですが、汎用農薬散布ドローン業者との組み合わせが可能です。
参考URL
- ReduSol製品ページ | ReduSystems
- ReduHeat製品ページ | ReduSystems
- ReduFuse IR製品ページ | ReduSystems
- ドローンによる遮光剤施用 | ReduSystems
- Palliative Effects of Kaolin on Citrus Plants Under Controlled Stress Conditions | Journal of Plant Growth Regulation, Springer Nature
- Kaolin Film Increases Gas Exchange Parameters of Coffee Seedlings | Frontiers in Plant Science
- Effects of Kaolin Application on Light Absorption, Radiation Use Efficiency and Photosynthesis | PMC
- Kaolin, an emerging tool to alleviate the effects of abiotic stresses on crop performance | Scientia Horticulturae, ScienceDirect
- Surround WP Crop Protectant ラベル | US EPA
- Clarity about the shading percentage of coatings | ReduSystems
- ハウス用遮光剤散布 | ドローンワークゼロナイン
- 遮光剤×ドローン散布サービス | Inflight
- ファインシェードスカイ | アキレス株式会社